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Ep.644 Claudeが職場の“引き出し”とつながる日──Microsoft 365連携とエンタープライズ検索の全体像(2025年10月23日配信)


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発表は2025年10月16日。Anthropicは「ClaudeがMicrosoft 365と直接つながるMCPコネクタ」と「社内の接続ツールを横断するエンタープライズ検索」を公開し、日々の文書・メール・会議情報を会話の文脈にそのまま引き入れられると伝えました。対象はSharePointとOneDrive、Outlook、Teams。利用開始はClaudeのTeam/Enterpriseプランで、管理者が有効化すれば組織のメンバーが認証して使えます。


仕組みの勘所はMCP――AIが必要になったときだけ最小限の権限でデータを取りに行く“オンデマンド連携”です。Anthropicのヘルプでは、Team/Enterpriseで管理者がEntra ID上で事前同意を与え、Microsoft Graph経由でSharePointやOutlook、Teamsに読取権限でアクセスする手順が具体的に示されています。権限はユーザーの既存権限を継承する委任型で、読み取り専用。いつでも取り消し可能で、接続後は「Q4計画書をSharePointから探して」「ローンチに関するメールの要点をまとめて」といった自然言語の指示で横断取得と要約が走る設計です。


同時に、社内知識を“ひとつの窓”で探せるエンタープライズ検索も提供されます。管理者が社名入りの共有プロジェクトを用意し、主要ツールを接続しておくと、従業員は「在宅勤務ポリシーは?」と尋ねるだけで、SharePointの規程、Outlookのやり取り、Teamsの合意事項が統合された回答として返る――そんな運用像が示されました。新入社員のオンボーディングや、顧客フィードバックの横断分析、社内の“誰に聞くべきか”の把握にも向くとしています。


この一連の発表は、Microsoft側の動きとも呼応します。Microsoftは9月下旬、365 CopilotやCopilot StudioでAnthropicのClaude系モデルを選択肢に加えると明らかにしており、エコシステムとして「モデルの多様化」と「接続標準の整備」が並走している格好です。ユーザーの手元では、Copilotでのモデル選択肢拡大と、Claude側のMCPコネクタによる“自社データの文脈化”が相互補完的に進む、と捉えると分かりやすいでしょう。


現場目線での効能は、情報収集の“面倒”が消えることに尽きます。プロジェクト計画書を探し直し、メールを遡り、Teamsの議事を読み返す――そんな作業の往復を、会話の中でまとめて代行してくれる。しかも、管理面ではEntraの事前同意とGraphの委任権限という既存のガバナンスに沿うため、監査やアクセス制御の考え方を変えずに導入できる。業務AIを本番運用に乗せるうえで、「精度」だけでなく「配備しやすさ」と「統制のしやすさ」を同時に押し上げるアップデートと言えます。


最後に、導入の一歩はシンプルです。組織管理者がコネクタを有効化し、ユーザーが自身のMicrosoft 365アカウントで認証するだけで準備完了。以降は、会議前の情報収集、顧客対応の下調べ、部門横断の意思決定支援など、日々の“意思決定の前処理”をClaudeに任せられるようになります。情報のサイロを会話で跨ぐ――そんな使い心地が、いよいよ現実味を帯びてきました。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki