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Ep.698 量子チップ、300mm時代へ──IBMがAlbanyで“量産志向”に舵(2025年11月20日配信)


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IBMが、自社の量子プロセッサ「Loon」と「Nighthawk」、そして今後のロードマップ上の全チップについて、ニューヨーク州のAlbany NanoTech Complexで“300mmウエハー”による先端半導体プロセスで製造していることを明らかにしました。Albany側の24時間稼働ラインで試作サイクルを短縮しつつ、ヨークタウンの200mmラインで一部カスタム工程を重ねる“300mm×200mmハイブリッド”の流れで歩留まりと開発速度を引き上げるのが狙いです。物理学者と半導体プロセスエンジニアが現場横断で設計・製造・評価を回す体制が整い、量子チップを“量産品質の半導体”として扱う段階に入った、という位置づけです。


同時にIBMは、Nighthawkで「従来比30%複雑な回路」を実行できる見通しや、Loonでフォールトトレラントに必要なハード要素の実証が進んだことを発表。目標時点としては2026年に量子優位性の実例、2029年にフォールトトレラント到達を掲げています。さらに300mm移行により開発スピードを2倍、物理的に10倍複雑な量子チップ設計を可能にする、と同社は述べています。Nighthawkは2025年末に一般利用可能になる計画で、Loonと合わせて“優位性の実証から誤り訂正本格化へ”という二正面作戦が見えてきました。


舞台となるAlbany NanoTechは、IBMや東京エレクトロン、ニューヨーク州が2000年代初頭から育ててきた官民連携の半導体R&D拠点で、いまや先端露光や先端パッケージの集積地です。施設拡張ではEUV(極端紫外)関連の国家拠点整備も進み、さらなる高NA露光装置導入やインフラ強化が計画されています。量子チップの300mm化は、こうした“先端装置と人材の密度”を生かして試作から改良までの打席数を増やし、誤り訂正や配線・3D集積の難題に実験的に挑むスピードを上げるものです。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki