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Ep.713 Metaに800億円超の支払い命令──スペイン裁判所が認めた「個人データ不正利用による不当競争」(2025年11月27日配信)


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欧州のメディア業界と巨大テック企業の対立において、歴史的な転換点となる判決がスペインで下されました。マドリードの商事裁判所は、FacebookやInstagramを運営するMetaに対し、スペインのメディア各社へ総額約4億7900万ユーロ(日本円で約800億円規模)の損害賠償支払いを命じました。さらに、遅延利息を含めるとその額は5億ユーロを超えると見られています。


この訴訟の原告であるスペイン情報メディア協会(AMI)は、2018年のGDPR施行から2023年までの5年間、Metaがユーザーの明確な同意を得ずに個人データを追跡・利用していたと主張していました。裁判所はこの主張を認め、「Metaは法を守る競合他社(メディア企業)を出し抜き、不正に得たデータを使って広告市場での支配的な地位を築いた」と判断しました。つまり、単なるプライバシー侵害の問題にとどまらず、ルール違反によってビジネス上の「不当な優位性」を得ていたことが断罪されたのです。


この判決が画期的なのは、データ保護の不備を「競争法(独占禁止法)違反」の文脈で明確に損害額として算定した点にあります。AMI側は「メディア企業が法を守って苦戦する中、Metaはルール無視で高精度のターゲティング広告を販売し、市場を独占した」と訴えていました。Meta側は「広告の精度はデータではなくアルゴリズムによるものだ」と反論していましたが、裁判所はこれを退けました。


Metaは直ちに控訴する方針を示していますが、この判決は他のEU諸国にも波及する可能性があります。もし「GDPR違反=競合他社への賠償責任」というロジックが定着すれば、過去数年間の収益モデルそのものが法的リスクにさらされることになり、テック業界全体にとって極めて重い先例となるでしょう。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki