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Ep.714 AI生成物に「著作権」の壁──国内初の摘発事例が示すクリエイター保護の新基準(2025年11月27日配信)


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日本のAI・コンテンツ業界に衝撃が走るニュースが入ってきました。読売新聞などの報道によると、捜査当局は11月20日、生成AIを使用して作成された画像を無断で複製・販売したとして、著作権法違反の疑いで27歳の男を書類送検しました。AIによって生成された画像に対して「著作権がある」と認定し、刑事事件として立件したのは、これが国内初の事例とみられます。


これまで日本の法解釈では、「AIが自律的に生成したコンテンツには著作権が発生しない」というのが通説でした。しかし、今回のケースでは、被害者となったクリエイターが、単にAIに指示を出しただけでなく、膨大な回数の試行錯誤(プロンプトエンジニアリング)や、生成後の修正作業を通じて「創作的な寄与」を行っていた点が重視された模様です。つまり、道具としてAIを使いこなした「人間の作品」であると警察が判断したことになります。


このニュースの背景には、AI生成物の権利保護を求めるクリエイターの声と、法整備の過渡期にある現状との摩擦があります。Web検索で周辺情報を確認すると、欧米ではすでに「人間の著しい関与」があれば著作権を認める判例が出始めていますが、日本では明確な司法判断が待たれていました。今回の摘発は、単なる海賊版対策にとどまらず、「どこまで人間が関与すれば権利が発生するか」という境界線に一つの実務的な基準(ライン)を引いたことになります。


もし今後、起訴され有罪判決が出れば、AIイラストレーターやAIを活用するデザイナーにとって強力な追い風となる一方で、既存の画像を利用するユーザーは、それがAI製かどうかにかかわらず、より慎重な権利確認を迫られることになります。技術の進化にルールが追いつこうとする、まさに象徴的な出来事と言えるでしょう。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki