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Ep.724 中国DeepSeekと米Harmonicが達成した「数学オリンピック金メダル」──推論能力で並ぶ米中AIの最前線(2025年12月4日配信)


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AIの進化がまた一つ、大きなマイルストーンに到達しました。中国のAI企業DeepSeekが発表した最新モデル「DeepSeekMath-V2」が、なんと国際数学オリンピック(IMO)の今年の課題において、6問中5問を解くという快挙を成し遂げました。これは人間の参加者で言えば「金メダル」に相当する成績であり、AIが高度な論理的推論能力においてトップクラスの人間と肩を並べつつあることを示しています。


これまで数学の難問解決といえば、GoogleのDeepMindやOpenAIといった米国の巨大テック企業がリードしてきました。実際、今年の7月には彼らのモデルも同様に「金メダル級」のスコアを記録しています。しかし、DeepSeekが今回の発表で示したのは、中国のスタートアップがその背中を猛烈な勢いで追いかけ、すでに技術的にはほぼ追いついているという事実です。特にDeepSeekはオープンなモデル開発に積極的であり、この技術が広く公開されることで、業界全体の開発スピードがさらに加速する可能性があります。


また、この「数学」という領域で戦っているのは巨大企業だけではありません。今回のニュースと時を同じくして、米国のスタートアップであるHarmonicも、自社のAIモデル「Aristotle」がIMOで金メダル級の成績を収めたと発表しました。Harmonicは今週、シリーズCラウンドで1億2000万ドル、日本円にして約180億円規模の資金調達を完了し、その企業評価額は14億5000万ドルに達しています。彼らが目指すのは「数学的超知能(MSI)」と呼ばれる領域で、AI特有の嘘や間違い、いわゆるハルシネーションを数学的なアプローチで排除しようとしています。


なぜ今、これほどまでに「数学」が重視されるのでしょうか。それは、AIが単に流暢な文章を作る段階から、複雑な手順を踏んで正解を導き出す「推論」の段階へと進化しているからです。数学の問題を解くには、文脈を読むだけでは不十分で、厳密な論理の積み重ねが求められます。つまり、数学ができるようになったAIは、プログラミングや科学研究、金融分析といった、ミスが許されない実務領域でも真価を発揮するようになるのです。DeepSeekとHarmonicの躍進は、AI開発の主戦場が「言葉」から「論理」へとシフトしたことを象徴する出来事と言えるでしょう。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki