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Ep.750 Meta、メタバース予算を30%削減──「夢」から「実利」への冷徹なピボット(2025年12月11日配信)


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本日は2025年12月6日、土曜日です。今週、テクノロジー業界の歴史に残るかもしれない大きな決断が報じられました。Facebookから社名を変更してまで「メタバース」に賭けてきたMetaが、その夢の建設現場である「Reality Labs」部門に対し、最大30%もの予算削減を計画していることが明らかになりました。


Bloombergなどの報道によると、マーク・ザッカーバーグCEOは2026年の予算編成において、メタバース関連部署に対してかつてない規模のコストカットを指示しました。これまでも定期的な見直しはありましたが、今回は規模が違います。特に影響を受けるのは、仮想空間プラットフォーム「Horizon Worlds」やVRヘッドセット「Quest」の開発チームで、早ければ来年1月にも大規模なレイオフ(人員整理)が行われる可能性があります。


なぜ今、この決断が下されたのでしょうか。理由はシンプルで、投資対効果が見合わなかったからです。2021年以降、この部門は実に700億ドル(日本円にして10兆円以上)もの巨額の損失を出してきました。「皆がゴーグルを被って仮想空間で暮らす未来」は、期待されたほど早くは訪れず、競合他社も追随しませんでした。


しかし、これはMetaがハードウェアを諦めるという意味ではありません。むしろ逆です。ここ数日でお伝えしている通り、Appleからデザインの巨匠アラン・ダイ氏を引き抜くなど、彼らはハードウェアへの野心を燃やし続けています。ただ、その目的が「仮想世界への没入」から、「現実世界をAIで拡張すること」へとシフトしているのです。


投資家はこの「大人になったMeta」を歓迎しています。このニュースが報じられた後、Metaの株価は4%以上急騰しました。「終わりの見えない夢への投資」を止め、今まさに収益を生み出しつつある「生成AI」と、好調な「Ray-Banスマートグラス」のようなAIウェアラブルへ資源を集中させる。この冷徹かつ合理的な判断が、市場に安心感を与えたと言えるでしょう。


かつて「モバイルの次」として掲げられたメタバースの旗は、一度静かに降ろされます。そしてその代わりに、AIという新しい旗が、より現実的な高みへと掲げられようとしています。

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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャストBy ikuo suzuki