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告白確率|CLEAR #4
CLEARが恋愛予報を始めたとき、最初は笑い話だった。
告白成功率、交際継続率、別れる確率、結婚後の幸福度。ニュースのコメント欄は、「気持ち悪い」「そんなの当たるわけない」「ロマンがない」で埋まった。
宮本もそう思っていた。
しかし、数字を見た瞬間に、笑えなくなった。
説明欄には、会話頻度、返信速度、位置情報の重なり、共有時間帯、気象条件による外出パターンを統合していると書かれていた。感情を読んでいるわけではありません。行動傾向をもとに算出しています。その一文が、かえって宮本には本当らしく見えた。
宮本の告白成功率は、八パーセントだった。
相手は、同じ職場の女性だった。名前を入れる欄はあったが、宮本は職場の部署名だけを登録した。
宮本は最初の一ヶ月、CLEARの改善提案に従った。連絡の頻度を少し増やした。返信は、早すぎず遅すぎない時間を意識した。共通の話題を調べて、昼休みに少しずつ試した。休日に同じ方向へ出かける機会を、さりげなく作った。
数字が動いた。
十四パーセント、二十三パーセント、三十一パーセント。
宮本は毎朝、CLEARを開いた。天気を確認するより先に、告白成功率を確認した。数字が上がっていれば、その日は少し気持ちが軽かった。下がっていれば、前日の何かがまずかったのかと考えた。
四十一パーセントになったのは、秋の終わりだった。
五十パーセントまで来たのは、年が明けてからだった。
そこで止まった。
何をしても、五十パーセントを超えなかった。上がる日もあったが、翌日には戻った。宮本は改善提案を読み返した。すでに実行できることは全部やっていた。
仕方なく、別の数字を見るようにした。
別れる確率と、結婚後の幸福度だった。
別れる確率は、三十七パーセントだった。結婚後の幸福度は、百点満点で四十二点だった。
宮本はその数字を下げること、上げることに取り組み始めた。告白する前に、その先を整えようとした。数字が良くなれば、告白しても後悔しない確率が上がる。そう考えた。
別れる確率が二十九パーセントになった。
幸福度が四十八点になった。
告白成功率は、五十一パーセントになった日があった。翌日、四十九パーセントに戻った。
彼女から話があると言われたのは、春の手前だった。
「結婚することになったの」
別の人から、プロポーズされたのだと言った。以前から知り合いだった人だと言った。宮本は、その人のことを知らなかった。
「おめでとう」と言った。
「ありがとう」と彼女は言った。「宮本さんには、いつも気にかけてもらってたから、ちゃんと言いたくて。」
宮本は笑った。うまく笑えたかどうかはわからなかった。
その夜、CLEARを開いた。
告白成功率の欄は、空白になっていた。対象者との関係が変化したため、予報を停止します、と書いてあった。
宮本はしばらく画面を見ていた。
悔しかった。五十パーセントまで来ていた。あと少しだった。動いていれば、違ったかもしれない。
しかし、別の数字を思い出した。
結婚後の幸福度、四十八点。
最後まで、五十点を超えなかった。
つまり、うまくいかなかっただろう。数字はそう言っていた。だからこれでよかった。自分には合わなかっただけだ。数字が、そう言っていた。
宮本は画面を閉じた。
部屋は静かだった。
これでよかった、と、もう一度思った。
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告白確率|CLEAR #4
CLEARが恋愛予報を始めたとき、最初は笑い話だった。
告白成功率、交際継続率、別れる確率、結婚後の幸福度。ニュースのコメント欄は、「気持ち悪い」「そんなの当たるわけない」「ロマンがない」で埋まった。
宮本もそう思っていた。
しかし、数字を見た瞬間に、笑えなくなった。
説明欄には、会話頻度、返信速度、位置情報の重なり、共有時間帯、気象条件による外出パターンを統合していると書かれていた。感情を読んでいるわけではありません。行動傾向をもとに算出しています。その一文が、かえって宮本には本当らしく見えた。
宮本の告白成功率は、八パーセントだった。
相手は、同じ職場の女性だった。名前を入れる欄はあったが、宮本は職場の部署名だけを登録した。
宮本は最初の一ヶ月、CLEARの改善提案に従った。連絡の頻度を少し増やした。返信は、早すぎず遅すぎない時間を意識した。共通の話題を調べて、昼休みに少しずつ試した。休日に同じ方向へ出かける機会を、さりげなく作った。
数字が動いた。
十四パーセント、二十三パーセント、三十一パーセント。
宮本は毎朝、CLEARを開いた。天気を確認するより先に、告白成功率を確認した。数字が上がっていれば、その日は少し気持ちが軽かった。下がっていれば、前日の何かがまずかったのかと考えた。
四十一パーセントになったのは、秋の終わりだった。
五十パーセントまで来たのは、年が明けてからだった。
そこで止まった。
何をしても、五十パーセントを超えなかった。上がる日もあったが、翌日には戻った。宮本は改善提案を読み返した。すでに実行できることは全部やっていた。
仕方なく、別の数字を見るようにした。
別れる確率と、結婚後の幸福度だった。
別れる確率は、三十七パーセントだった。結婚後の幸福度は、百点満点で四十二点だった。
宮本はその数字を下げること、上げることに取り組み始めた。告白する前に、その先を整えようとした。数字が良くなれば、告白しても後悔しない確率が上がる。そう考えた。
別れる確率が二十九パーセントになった。
幸福度が四十八点になった。
告白成功率は、五十一パーセントになった日があった。翌日、四十九パーセントに戻った。
彼女から話があると言われたのは、春の手前だった。
「結婚することになったの」
別の人から、プロポーズされたのだと言った。以前から知り合いだった人だと言った。宮本は、その人のことを知らなかった。
「おめでとう」と言った。
「ありがとう」と彼女は言った。「宮本さんには、いつも気にかけてもらってたから、ちゃんと言いたくて。」
宮本は笑った。うまく笑えたかどうかはわからなかった。
その夜、CLEARを開いた。
告白成功率の欄は、空白になっていた。対象者との関係が変化したため、予報を停止します、と書いてあった。
宮本はしばらく画面を見ていた。
悔しかった。五十パーセントまで来ていた。あと少しだった。動いていれば、違ったかもしれない。
しかし、別の数字を思い出した。
結婚後の幸福度、四十八点。
最後まで、五十点を超えなかった。
つまり、うまくいかなかっただろう。数字はそう言っていた。だからこれでよかった。自分には合わなかっただけだ。数字が、そう言っていた。
宮本は画面を閉じた。
部屋は静かだった。
これでよかった、と、もう一度思った。