市場の風を読む

関税の不確実性がクレジット市場の投資機会に


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米国政府の貿易政策が絶えず変わり続けているため、市場に不透明感が広がり、企業や消費者の信頼感に影響が及んでいます。ただ、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツは、このボラティリティーがクレジット投資家にとってプラスに働く可能性もあると考えています。その理由について解説します。

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トランスクリプト 


「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ, 今回はコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、不確実性の高さがクレジットにどのようなかたちで、リスクだけにとどまらず投資機会にもなり得るかについて解説します。

このエピソードは4月16日 にニューヨークにて収録されたものです。

英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。


市場は年明けからずっと米国の貿易政策に関する疑問一色となっています。議論の中心は、この貿易政策の目標はいったい何かという難問です。

 現在、米国政府が達成しようとしていることについては相反する2つの理論があります。1つは、強引な関税措置は交渉術のひとつであり、最終的な取引に向けて引き下げ交渉を進めるための強引な第一手であるというものです。

 そしてもう1つの解釈は、強引な関税措置は新たな産業政策であるというものです。製造拠点を長期的に米国に移すよう企業に促すには、長期にわたる高額な関税を課すことが必要ということです。

 どちらももっともらしい解釈ですし、どちらも米国政府の高官の間で議論されてきました。しかし、この2つは相いれないものでもあります。2つが両立することはありません。

どちらの理論を掲げる陣営が優勢になるかは分かりませんが、この不確実性は今に始まったことではありません。2月初めの相場上昇は、関税措置はどちらかというと最初の交渉ツールだろうという楽観的な見方に関連していたようです。3月と4月に相場が下落したのは、関税がより恒久的なものになる兆候があったからでした。そして、先週は10%近く上昇する日もありましたが、こうした最近の反発は、振り子が再び戻りつつあるという希望から来るものでした。

こうした堂々巡りは不確かなものです。しかしある意味、投資家にとっての評価基準にもなります。関税措置が一段と強引なものになる兆しがあれば、市場にとって厳しさが増すでしょうし、柔軟性が高まる兆しが見えれば、市場にはよりプラスとなるでしょう。しかし、それほど簡単なものでしょうか。関税引き上げの停止がより長期化する兆候が見えれば事は解決するのでしょうか。

重要な疑問は、こうした一連の堂々巡りが企業や消費者の信頼感に長期的なダメージを与えているかどうかだと考えます。全ての関税引き上げ措置が一時停止されたとしても、企業や消費者はこれを信じるでしょうか。最近の相場変動の大きさを踏まえたうえで、この先数四半期にわたり、以前と同じような水準で進んで投資や支出をしようと思うでしょうか。

この疑問は単なる仮定にとどまりません。さまざまな調査において、いわゆるソフトデータ、つまり米国の企業や消費者の信頼感は大きく落ち込んでいます。企業合併のペースは大幅に減速しています。投資家は今後数か月、これらの信頼感指数に特に注目するでしょう。

クレジットにとって、信頼感の悪化はもろ刃の剣です。企業がより保守的になり、債務返済能力が高まるという意味で、ある程度はプラスに働きます。しかし、経済全般が弱まれば、リスクとなります。過去を振り返ると、最近目にするような信頼感調査の悪化は、将来的に成長率が大幅に低下することを示唆しています。全体的なスプレッドがほぼ平均的な水準にある中で、我々はバリュエーションが、完全にポジティブになるほど明らかに魅力的であるとはまだ考えていません。

 しかし、一筋の光明はあるかもしれません。投資適格の長期社債の利回りは現在、6%を超えています。企業の信頼感が悪化し、社債利回りが上昇しているため、企業は長期借り入れコストを高い水準で固定することは魅力的ではないと考えるでしょう。社債の発行額が減り、投資家にとってオールインイールドが魅力的な水準になれば、クレジット市場のアウトパフォームにつながる可能性があると我々は見ています。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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市場の風を読むBy Morgan Stanley