前回から「海外から見た日本」というテーマについてお話しています。
私自身、外国人社員の方々と一緒にお仕事をする機会が非常に多いです。これまでのキャリアの2/3の時間がグローバル企業で、アメリカや海外の会社の部門で働いていました。また、今も日本の会社ではありますが、2/3以上が外国人という環境で働かせていただいています。そのため、よく「外国人社員の皆さんと仕事をするにあたって気を付けることは何ですか?」「外国人社員と働くのは難しくないですか?」と聞かれることがあります。私はそういうふうに言われると、「実は日本人社員の皆さんと働くことと全く変わらないし、時としては外国人社員の皆さんと働く事で助かっていると思う事もありますよ」と、お答えすることがあります。これはなぜなのかについて少しお話します。
もちろん、私の出会ってきた外国人社員の皆さんをステレオタイプで扱ってはいけませんが、私がお付き合いしてきている方々は全て何かの理由で日本を選んで来て下さっています。もしも単なる経済的な価値、収入だけで考えていくとすれば、今や他に魅力的な国はたくさんあります。例えば、最近では一人当たりの平均賃金という観点で、台湾や韓国を選ぶ方も出始めつつあります。そんな中で、逆に日本を選ぶ理由があるわけです。そういった方々は日本に対して興味があったり、関心をお持ちであったり、日本で働く事によって何かを得たいと思っていると捉える方が多いと思います。
私は自分のスタッフの方々とよく一緒にランチに行くのですが、そこで何を聞かれるかというと、外国人の方から「ミシマってどうだ」と。このミシマっていうのは三島由紀夫のことです。「三島由紀夫のこの本について、私達はこう思うのだけれど、日本人のお前はどう思う?」、「三島に対する川端の影響に関しては、作品のどこに影響が出ていると思うか?」「阿部公房の『砂の女』は傑作だと思うが日本人としての考え方は?」などの質問を受けます。
こうした質問から言えることは、こういった方達は、一番多感な頃に日本を深く学んでいて、日本に対する自分自身の接点・繋がりをお持ちで、貴重な時間を日本で働く事を通して日本で何かを得たい、何かを感じたいと思って来てくれているということです。単なる金銭的な理由からだけではなく、"価値"で日本を選んで来てくれているのではないかということです。
最近の若い外国人の方々は、日本の伝統的な文化・文学だけではなくて、アニメやポップカルチャーに対する憧れを持って日本に来ていらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。
今、デザイナーとして私が一緒に仕事をしている方は香港の出身ですが、幼少時代にドラゴンボール、ワンピース、ナルト、進撃の巨人、セーラームーンを見て、日本の漫画で育ち、J-POP、アニソンを聴いて、日本の現代カルチャーに憧れて日本にやって来て、鬼怒川温泉でアルバイトをしていながら日本の人達と交わり、そこで日本でもっと学びたい、日本の自然を自分のデザインに活かしたいと、今日本でデザイナーとして活躍されていらっしゃる方がいらっしゃいます。こういう人達が実は私達以上に日本というものを理解し表現してくれていて、日本というものを海外へ発信してくれているということを私達は知っておいた方がいいのではないかなと思います。
大切なことは、我々がこのような人たちを。「あの人は外国人だから」というような視点で向き合うよりも、日本の文化や色んな物に対して興味を持ってくれている、日本人よりも日本人的な仲間なのであり、彼ら彼女達の目を通して、我々自身が学ぶことがたくさんあるという捉え方を持つことではないかと思います。そして、何よりも日本に対する愛情を持ってくれていること、そういった方々に対しては敬意と感謝の思いを持って向き合うことが大切だと思います。
これから日本の会社は外国人人材を雇っていかなければなりません。この方々を単なる労働者というように見るのか、尊敬すべき将来の仲間というふうに捉えるかでとても大きな差が生まれてくるように思います。
では今日のまとめです。
今回4回に渡り、「ChatGPT」のインパクトや、海外の日本に対する見方ですとか、更には外国人のスタッフがどういった背景で日本にいらっしゃっているのかについてお話をしました。おそらくどのテーマも20年前には触れられなかったテーマではないかと思います。特に「ChatGPT」の前半2回の話は、おそらく去年の今頃でも話の出ていなかったことだと思います。
まさに激動の時代です。ひょっとしたら50年後にあの時がまさに全てが変わるスタートだった、と言えるような時代の分岐点に私達が今いるのかもしれません。そうしたことを頭の隅に置きながら、日々過ごしていくのがいいのではないかと思います。
ご清聴ありがとうございました。