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弊社の韓国・台湾担当チーフエコノミストが、韓国の人口動態に迫る危機を克服するために必要な改革についてお話します。
このエピソードを英語で聴く。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回は、モルガン・スタンレーの韓国・台湾担当チーフエコノミストのキャサリン・オー(Kathleen Oh)が、韓国の高齢化危機を克服するために何が必要かをお話します。
このエピソードは10月15日 に香港にて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
韓国は人口動態に関して最も大きな問題を抱える国々の1つです。公式データによれば、来年は65歳以上の国民が人口の20%を超える超高齢化社会となる見通しです。その意味するものは極めて大きく、韓国政府は最近、人口緊急事態を宣言しました。これは誇張ではないと弊社は考えています。
最大の原因は韓国の低い出生率にあります。2023年には世界で最も低い水準に落ち込み、現在は0.72となっています。参考までに、一般に、人口を一定に維持するために必要な合計特殊出生率は2.1と言われています。来年までに韓国の人口は減少し始め、向こう40年間で生産年齢人口が2分の1に減少し、総人口は現在より3分の1少なくなると予想されています。韓国中央銀行は、このペースで人口が減少すると、潜在成長率が2024年~2025年の2%から減少し、2040年までにマイナスになる可能性があると予想しています。
それでは、なぜ韓国の出生率はこうした記録的な低水準になったのでしょうか?短期的には主として2つの原因があります。第一はコロナ禍の時期に、結婚する人が減少し、出生数が急速に減少しました。韓国では婚外子はタブーとされています。2022年に結婚が再開し、出生数が若干回復しましたが、不十分な水準です。
第2に、過去10年間に住宅価格が80%上昇し、若いカップルが家族を持つ意欲に水を差しています。子供が1人いる家庭は、第2子を持つには金銭的な負担が大きいと感じています。短期的な要因以外に構造要因もあります。韓国は短期間に急速な経済成長を遂げた結果、雇用情勢と住宅市場の見通しが不透明になっています。
韓国の政策担当者は過去20年間、低い出生率の問題に取り組んできました。政府はこれまでに3,200億ドル以上を人口動態の課題解決に投じています。こうした努力によって、たしかに問題の認知度は高まりましたが、危機を克服するには至っていません。 なぜでしょうか。それは、所得の不確実性や、育児と教育にかかる高いコストという根本的な原因に対処して来なかったからです。
構造改革が必要であることは明らかです。確かに韓国は現在、問題の克服に向けて根本的な問題について重要な施策を講じています。政策担当者は15年ぶりに年金制度改革に取り組んでいます。仕事と生活のバランス改善、男女の賃金格差縮小、働く親たちへの支援拡大などの措置が焦点となっています。また、移民に対する規制緩和も検討されており、人材不足の緩和につながるとみられます。さらに民間教育にかかるコストを低減する努力もなされています。そして、政府は資本市場のインフラ改善も重視しています。韓国政府は海外からの投資を惹きつけることを目指すとともに、家計の資産蓄積手段の確保や、国内企業の借入れコスト低減を助けようとしています。
もちろん、減少傾向を急に反転することはできませんし、ポジティブな変化には数年を要するでしょう。むしろ数十年かかる可能性もあります。韓国政府は、出生率を2030年までに1.0に回復させることを中期目標に設定しており、達成すれば生産年齢人口の減少が5年先送りされると見られます。さらに、出生率が2.1に到達した場合は、生産年齢人口の減少を20年遅らせることができます。反対に、出生率が現在の0.72にとどまった場合、2065年までに人口は半減し、2040年から経済が縮小し始めます。これは、政府が回避すると決意した最悪ケースのシナリオです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社の韓国・台湾担当チーフエコノミストが、韓国の人口動態に迫る危機を克服するために必要な改革についてお話します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回は、モルガン・スタンレーの韓国・台湾担当チーフエコノミストのキャサリン・オー(Kathleen Oh)が、韓国の高齢化危機を克服するために何が必要かをお話します。
このエピソードは10月15日 に香港にて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
韓国は人口動態に関して最も大きな問題を抱える国々の1つです。公式データによれば、来年は65歳以上の国民が人口の20%を超える超高齢化社会となる見通しです。その意味するものは極めて大きく、韓国政府は最近、人口緊急事態を宣言しました。これは誇張ではないと弊社は考えています。
最大の原因は韓国の低い出生率にあります。2023年には世界で最も低い水準に落ち込み、現在は0.72となっています。参考までに、一般に、人口を一定に維持するために必要な合計特殊出生率は2.1と言われています。来年までに韓国の人口は減少し始め、向こう40年間で生産年齢人口が2分の1に減少し、総人口は現在より3分の1少なくなると予想されています。韓国中央銀行は、このペースで人口が減少すると、潜在成長率が2024年~2025年の2%から減少し、2040年までにマイナスになる可能性があると予想しています。
それでは、なぜ韓国の出生率はこうした記録的な低水準になったのでしょうか?短期的には主として2つの原因があります。第一はコロナ禍の時期に、結婚する人が減少し、出生数が急速に減少しました。韓国では婚外子はタブーとされています。2022年に結婚が再開し、出生数が若干回復しましたが、不十分な水準です。
第2に、過去10年間に住宅価格が80%上昇し、若いカップルが家族を持つ意欲に水を差しています。子供が1人いる家庭は、第2子を持つには金銭的な負担が大きいと感じています。短期的な要因以外に構造要因もあります。韓国は短期間に急速な経済成長を遂げた結果、雇用情勢と住宅市場の見通しが不透明になっています。
韓国の政策担当者は過去20年間、低い出生率の問題に取り組んできました。政府はこれまでに3,200億ドル以上を人口動態の課題解決に投じています。こうした努力によって、たしかに問題の認知度は高まりましたが、危機を克服するには至っていません。 なぜでしょうか。それは、所得の不確実性や、育児と教育にかかる高いコストという根本的な原因に対処して来なかったからです。
構造改革が必要であることは明らかです。確かに韓国は現在、問題の克服に向けて根本的な問題について重要な施策を講じています。政策担当者は15年ぶりに年金制度改革に取り組んでいます。仕事と生活のバランス改善、男女の賃金格差縮小、働く親たちへの支援拡大などの措置が焦点となっています。また、移民に対する規制緩和も検討されており、人材不足の緩和につながるとみられます。さらに民間教育にかかるコストを低減する努力もなされています。そして、政府は資本市場のインフラ改善も重視しています。韓国政府は海外からの投資を惹きつけることを目指すとともに、家計の資産蓄積手段の確保や、国内企業の借入れコスト低減を助けようとしています。
もちろん、減少傾向を急に反転することはできませんし、ポジティブな変化には数年を要するでしょう。むしろ数十年かかる可能性もあります。韓国政府は、出生率を2030年までに1.0に回復させることを中期目標に設定しており、達成すれば生産年齢人口の減少が5年先送りされると見られます。さらに、出生率が2.1に到達した場合は、生産年齢人口の減少を20年遅らせることができます。反対に、出生率が現在の0.72にとどまった場合、2065年までに人口は半減し、2040年から経済が縮小し始めます。これは、政府が回避すると決意した最悪ケースのシナリオです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。