
Sign up to save your podcasts
Or
弊社韓国・台湾担当チーフ・エコノミストのキャサリン・オーが、韓国で最近可決された年金改革法案と急速に高齢化が進む韓国社会への影響について解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
韓国・台湾担当チーフ・エコノミストのキャサリン・オー 今回は弊社韓国・台湾担当チーフ・エコノミストのキャサリン・オーが、韓国の「人口非常事態」と、政府が最近の年金改革でこれにどう対処しようとしているかについて再び解説します。
このエピソードは5月1日 に香港にて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
去年 昨年秋のポッドキャストで、危機的レベルに達した韓国の人口問題についてお話したことを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。韓国は2024年末、65歳以上の高齢者の割合が人口の20%を超え、正式に超高齢社会になりました。
急速に高齢化が進み、出生率が過去最低となったことを受け、韓国はようやく断固たる方針を決定しました。国会は先ごろ、国民年金法の改正に向けた画期的な年金改革法案を可決しました。年金法の抜本的な改正は18年ぶりです。年金財政の持続可能性を改善し、今後も加速の一途をたどるとみられる急速な高齢化に備えることが改革の目的です。
法改正では、保険料率を引き上げるほか、所得代替率も43%に引き上げます。年金基金が枯渇する時期は現在、2064年とされていますが、上振れシナリオでは改正によってこれを2071年に先送りすることを目指しています。改革を行わなければ、年金基金はわずか30年後の2055年に資金が枯渇してしまうでしょう。
この改革を行えば、年金基金の枯渇時期を遅らせることができ、金融資産を売却せずにすみます。年金受給者のために将来の年金資産の安定性を確保することにもなります。また、金融市場への投資の幅が拡大し、より高いリターンにつながる可能性があるということも、これまで挙げた点に劣らず重要なことです。
今回の改革は、超高齢社会の現実に対応するための法律改正であり、ひいてはより構造的な改革に向けた第一歩です。また、年金制度、雇用市場、教育制度、資本市場などの抜本的な改革アジェンダの幕開けでもあります。
中道左派の韓国民主党と保守系政党「国民の力」が党派を超えた支持と国民の総意を得て合意に達することができたという点でも、今回の年金改革は注目に値します。ここ最近の揺れ動く国内政治情勢を考えるとなおさらです。
とは言え、年金改革が経済にネガティブな影響をもたらす可能性もあります。保険料率が上がれば世帯の可処分所得が減り、消費と貯蓄の合計額に、弱いながらもさらなる下押し圧力がかかるでしょう。特に年を重ねるにつれて消費が減る傾向にあることを踏まえると、民間消費の構造的減速につながるとも考えられます。
高齢化に伴う課題を抱えているとは言え、我々は、韓国の将来については慎重ながらも楽観的な見方をしています。このところ出生率が持ち直していることが最大の理由です。出生率は2015年から毎年低下していましたが、2024年に0.75へと上昇に転じました。理想的な人口置換水準である2.1をまだはるかに下回っていますが、これは小さいながらもポジティブな兆候です。
この先、出生率が2030年までに1.0以上に大きく持ち直すようにしなければ、労働人口は今後40年で50%減少するとみられています。一方、年金改革法案にさらに修正が加えられることが予想され、経済分野の次の課題である雇用市場改革と共に定年年齢の引き上げについて議論が展開されると弊社ではみています。政府による人口政策アジェンダの執行は今後も続くとみられます。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社韓国・台湾担当チーフ・エコノミストのキャサリン・オーが、韓国で最近可決された年金改革法案と急速に高齢化が進む韓国社会への影響について解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
韓国・台湾担当チーフ・エコノミストのキャサリン・オー 今回は弊社韓国・台湾担当チーフ・エコノミストのキャサリン・オーが、韓国の「人口非常事態」と、政府が最近の年金改革でこれにどう対処しようとしているかについて再び解説します。
このエピソードは5月1日 に香港にて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
去年 昨年秋のポッドキャストで、危機的レベルに達した韓国の人口問題についてお話したことを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。韓国は2024年末、65歳以上の高齢者の割合が人口の20%を超え、正式に超高齢社会になりました。
急速に高齢化が進み、出生率が過去最低となったことを受け、韓国はようやく断固たる方針を決定しました。国会は先ごろ、国民年金法の改正に向けた画期的な年金改革法案を可決しました。年金法の抜本的な改正は18年ぶりです。年金財政の持続可能性を改善し、今後も加速の一途をたどるとみられる急速な高齢化に備えることが改革の目的です。
法改正では、保険料率を引き上げるほか、所得代替率も43%に引き上げます。年金基金が枯渇する時期は現在、2064年とされていますが、上振れシナリオでは改正によってこれを2071年に先送りすることを目指しています。改革を行わなければ、年金基金はわずか30年後の2055年に資金が枯渇してしまうでしょう。
この改革を行えば、年金基金の枯渇時期を遅らせることができ、金融資産を売却せずにすみます。年金受給者のために将来の年金資産の安定性を確保することにもなります。また、金融市場への投資の幅が拡大し、より高いリターンにつながる可能性があるということも、これまで挙げた点に劣らず重要なことです。
今回の改革は、超高齢社会の現実に対応するための法律改正であり、ひいてはより構造的な改革に向けた第一歩です。また、年金制度、雇用市場、教育制度、資本市場などの抜本的な改革アジェンダの幕開けでもあります。
中道左派の韓国民主党と保守系政党「国民の力」が党派を超えた支持と国民の総意を得て合意に達することができたという点でも、今回の年金改革は注目に値します。ここ最近の揺れ動く国内政治情勢を考えるとなおさらです。
とは言え、年金改革が経済にネガティブな影響をもたらす可能性もあります。保険料率が上がれば世帯の可処分所得が減り、消費と貯蓄の合計額に、弱いながらもさらなる下押し圧力がかかるでしょう。特に年を重ねるにつれて消費が減る傾向にあることを踏まえると、民間消費の構造的減速につながるとも考えられます。
高齢化に伴う課題を抱えているとは言え、我々は、韓国の将来については慎重ながらも楽観的な見方をしています。このところ出生率が持ち直していることが最大の理由です。出生率は2015年から毎年低下していましたが、2024年に0.75へと上昇に転じました。理想的な人口置換水準である2.1をまだはるかに下回っていますが、これは小さいながらもポジティブな兆候です。
この先、出生率が2030年までに1.0以上に大きく持ち直すようにしなければ、労働人口は今後40年で50%減少するとみられています。一方、年金改革法案にさらに修正が加えられることが予想され、経済分野の次の課題である雇用市場改革と共に定年年齢の引き上げについて議論が展開されると弊社ではみています。政府による人口政策アジェンダの執行は今後も続くとみられます。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。