2023年9月10日 三位一体後14主日
説教題:歓迎してください
聖書:フィリピの信徒への手紙 2:19−30、レビ記 19:18、マタイによる福音書 22:37−40、詩編 133
説教者:稲葉基嗣
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【説教要旨】
パウロはふたりの人物を送り出す計画をフィリピ教会の人びとに伝えています。どうかこのふたりをそのように温かく教会の交わりへと迎え入れてほしいと、パウロはフィリピ教会の人たちにお願いしています。
パウロがフィリピ教会の人びとのもとへと送り出そうと考えていた人物のひとりは、パウロの福音宣教の同労者テモテです。テモテのことをフィリピ教会の人びともよく知っていたので、テモテを遣わす計画を立てているというパウロのこの言葉は、フィリピ教会の人たちに受け止められ、歓迎されたことでしょう。
もうひとりの人物はエパフロディトで、パウロは彼をテモテよりも先に送り出しました。エパフロディトは、エフェソで投獄されたパウロを支援するために(4:18)、フィリピ教会を代表してパウロのもとを訪れた人物でした。フィリピ教会の人びとは、パウロに十分な食事を提供することだけでなく、投獄中にパウロが行いたいと願うさまざまなことを実際に助けて欲しいと願って、エパフロディトをフィリピ教会の代表として、パウロのもとに送り出したと思います。エパフロディトを通じて物質的・金銭的な支援があり、彼が来てくれたということは、パウロの投獄中の生活にとって助けとなりました。また、パウロに大きな励ましと慰めを与えたことでしょう。
でも、ひとつトラブルが発生しました。エパフロディトの瀕死の病です。この出来事が原因で、エパフロディトは本人が願っていた通りの働きをパウロのもとですることが出来ませんでした。もちろん、手紙を届け、食料を調達するなどの最低限の助けはできたでしょう。でも、それはフィリピ教会の人びとやエパフロディト本人が望んでいた理想の支援とは違っていました。だからこそ、彼は失敗したと感じ、落胆し、自分に失望しました。そんなエパフロディトを近くで見ていたから、エパフロディトをフィリピへと帰すとき、彼がフィリピ教会で歓迎されることを願って、パウロはこの手紙を書きました。パウロはエパフロディトを通しての支援への感謝をフィリピ教会に伝えています。そして何よりも、失意の中にあるエパフロディトを教会の交わりの中で歓迎し、愛をもって受け止めて、慰めてほしいと教会に伝えています。
再び立ち上がり、歩き出すために、安心して帰れる場所が誰にも必要です。エパフロディトにとって、それはフィリピ教会の交わりでした。パウロはエパフロディトが安心して戻れるように、教会のあるべき姿を改めて思い出して欲しいとフィリピ教会の人たちにお願いしました。「主にある者として大いに歓迎してください」(2:29)と。主キリストに結ばれている者として、主イエスに受け入れられたように、お互いに受け入れ合うことを思い出してください、と。