
Sign up to save your podcasts
Or
不安定なマクロ経済の中でもクレジット市場が堅調さを維持してきた理由と、堅調なクレジット市場を支える土台を損ない得る要因やシナリオについて、チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターがお話しします。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパター.
本日の話し手は、チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターです。ほかの資産市場が不安定に推移する中でもクレジット市場が堅調さを維持している理由と、クレジット市場の先行きに関する自身の見解についてお話しします。
このエピソードは3月18日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
政策を巡る不確実性が今なお高まっていることに 、また、パッとしないソフトデータが相次いで発表される中、市場センチメントは大統領選挙後の高揚感とアニマルスピリットに溢れたユーフォリア状態から急速に冷め、今では米国経済のダウンサイドリスクに対する懸念が広がっています。しかし、異なる資産市場が発信するシグナルは一様ではありません。
例えば、わずか数週間前に史上最高値を更新したS&P 500は現在、大統領選挙後の上昇分をすべて失っただけでなく、選挙前を下回る水準へと落ち込んでいます。また、米国債市場も激しく変動し、セルオフで40bp【ベーシスポイント】上昇した利回りは、その後のラリーで60bp以上低下しました。しかし、株式および金利市場のボラティリティが著しく高まったのに対し、クレジット市場はほとんど動きませんでした。言い換えるなら、クレジットは現在のところ、低ベータ資産であると見做すことができます。
マクロ変動性に対するクレジット市場のこうした耐性は、確たる裏付けに支えられており、私たちがクレジットに対して長らく持ち続ける前向きな見解を後押しするものです。私たちは、2024年のクレジット市場を支えた要因、例えば、クレジット市場の堅調なファンダメンタル要因や、スプレッド水準ではなく、全般的に高い利回り水準に牽引された投資家のクレジット需要などといった要因の多くは、これからも引き続くと予想して来ました。また、私たちは、2025年の米国経済成長率が大凡 約2%へといくばくか減速すると予想していますが、これがクレジット投資家の強気スタンスを維持するのに十分な水準であると考えております。実際、私たちが予想した通り、こうした要因は最近までクレジット市場を支え続けていました。しかし、堅調なクレジット市場を支えてきたこうした要因のいくつかが、最近になって変化し始めました。こうした中、クレジット市場に対する私たちの前向きなスタンスに変わりはないにせよ、クレジットの低ベータ特性の持続性にまつわる疑問が広がっていることも事実です。
私たちは以前、2025年の経済および市場を牽引する主なドライバーは、政策が実施される順番と、政策が経済におよぼす影響の度合になると考えていました。その考えに今も変わりはありませんが、抑制的な政策、特に関税政策が私たちの予想より遥かに急速かつ広範囲に実施されていることも確かです。こうした中、政策動向が発信する様々なシグナルを総合し、米国エコノミスト・チームは2025年と2026年の実質GDP成長率予想をそれぞれ1.5%、1.2%へと引き下げました。
クレジット市場の観点から見ると、エコノミスト・チームのGDP予想はリセッションを想定していないと私たちは考えます。チームの予想通りなら、米国経済は私たちが考えるクレジット市場のコンフォート・ゾーンの下限に向かって悪化しながらも、クレジット・フレンドリーな領域にとどまると考えることができるからです。一方、チームの経済成長予想引き下げがもたらすプラス面を見ると、成長減速はアニマルスピリットを抑え、社債供給量を引き続き制約するなど、クレジット市場にとって追い風となるテクニカル要因を支えます。また、米国債利回りは上昇しましたが、全般的な利回りは、利回りを動機にクレジットを購入するバイヤーの需要を支える水準に依然としてあります。
とは言え、成長懸念が私たちの予想を上回るレベルへと高まった場合、ソフトデータの軟調さがハードデータでも目立つようになると共に、市場は平均を上回る確率でリセッション入りする可能性を見込むようになると考えます。そうなれば、これまで見られたクレジットの低ベータ性は損なわれ、リスク資産市場のさらなる落ち込みと共にクレジットのベータ特性は高まる可能性があります。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェア
不安定なマクロ経済の中でもクレジット市場が堅調さを維持してきた理由と、堅調なクレジット市場を支える土台を損ない得る要因やシナリオについて、チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターがお話しします。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパター.
本日の話し手は、チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターです。ほかの資産市場が不安定に推移する中でもクレジット市場が堅調さを維持している理由と、クレジット市場の先行きに関する自身の見解についてお話しします。
このエピソードは3月18日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
政策を巡る不確実性が今なお高まっていることに 、また、パッとしないソフトデータが相次いで発表される中、市場センチメントは大統領選挙後の高揚感とアニマルスピリットに溢れたユーフォリア状態から急速に冷め、今では米国経済のダウンサイドリスクに対する懸念が広がっています。しかし、異なる資産市場が発信するシグナルは一様ではありません。
例えば、わずか数週間前に史上最高値を更新したS&P 500は現在、大統領選挙後の上昇分をすべて失っただけでなく、選挙前を下回る水準へと落ち込んでいます。また、米国債市場も激しく変動し、セルオフで40bp【ベーシスポイント】上昇した利回りは、その後のラリーで60bp以上低下しました。しかし、株式および金利市場のボラティリティが著しく高まったのに対し、クレジット市場はほとんど動きませんでした。言い換えるなら、クレジットは現在のところ、低ベータ資産であると見做すことができます。
マクロ変動性に対するクレジット市場のこうした耐性は、確たる裏付けに支えられており、私たちがクレジットに対して長らく持ち続ける前向きな見解を後押しするものです。私たちは、2024年のクレジット市場を支えた要因、例えば、クレジット市場の堅調なファンダメンタル要因や、スプレッド水準ではなく、全般的に高い利回り水準に牽引された投資家のクレジット需要などといった要因の多くは、これからも引き続くと予想して来ました。また、私たちは、2025年の米国経済成長率が大凡 約2%へといくばくか減速すると予想していますが、これがクレジット投資家の強気スタンスを維持するのに十分な水準であると考えております。実際、私たちが予想した通り、こうした要因は最近までクレジット市場を支え続けていました。しかし、堅調なクレジット市場を支えてきたこうした要因のいくつかが、最近になって変化し始めました。こうした中、クレジット市場に対する私たちの前向きなスタンスに変わりはないにせよ、クレジットの低ベータ特性の持続性にまつわる疑問が広がっていることも事実です。
私たちは以前、2025年の経済および市場を牽引する主なドライバーは、政策が実施される順番と、政策が経済におよぼす影響の度合になると考えていました。その考えに今も変わりはありませんが、抑制的な政策、特に関税政策が私たちの予想より遥かに急速かつ広範囲に実施されていることも確かです。こうした中、政策動向が発信する様々なシグナルを総合し、米国エコノミスト・チームは2025年と2026年の実質GDP成長率予想をそれぞれ1.5%、1.2%へと引き下げました。
クレジット市場の観点から見ると、エコノミスト・チームのGDP予想はリセッションを想定していないと私たちは考えます。チームの予想通りなら、米国経済は私たちが考えるクレジット市場のコンフォート・ゾーンの下限に向かって悪化しながらも、クレジット・フレンドリーな領域にとどまると考えることができるからです。一方、チームの経済成長予想引き下げがもたらすプラス面を見ると、成長減速はアニマルスピリットを抑え、社債供給量を引き続き制約するなど、クレジット市場にとって追い風となるテクニカル要因を支えます。また、米国債利回りは上昇しましたが、全般的な利回りは、利回りを動機にクレジットを購入するバイヤーの需要を支える水準に依然としてあります。
とは言え、成長懸念が私たちの予想を上回るレベルへと高まった場合、ソフトデータの軟調さがハードデータでも目立つようになると共に、市場は平均を上回る確率でリセッション入りする可能性を見込むようになると考えます。そうなれば、これまで見られたクレジットの低ベータ性は損なわれ、リスク資産市場のさらなる落ち込みと共にクレジットのベータ特性は高まる可能性があります。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェア