2023年7月23日 三位一体後第7主日
聖書:フィリピの信徒への手紙 1:3−11、箴言 10:12、ヨハネによる福音書15:9−12、詩編57
説教題:キリストの日に向かって歩む教会
説教者:稲葉基嗣
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【説教要旨】
信仰者が生きる上で陥りやすい危険のひとつは、今のままで良いと思うことです。たしかに、それは聖書が語るひとつの大切なメッセージのひとつです。ありのままのあなたが素晴らしい。誰もが神の前で尊い存在です。
フィリピに宛てた手紙を書いたパウロ自身も、フィリピの教会の人びとの今現在の姿を喜び、深く感謝していました。でも、パウロはフィリピ教会は今のそのままで良いとは決して考えませんでした。どれだけ今の現状が喜ばしかったとしても、フィリピ教会の人たちはそれ以上により喜ばしい未来へと向かって歩むようにと招かれているからです。
パウロはひとつのことを確信しています。それは、フィリピ教会の人びとの間で神が善い業を始めておられていて、神が始めたその善い業は必ず完成することです(6節)。フィリピ教会の歩みが完成へと向かって歩んでいるならば、ある意味で、この地上においては、常に成長の途上にあるということです。そのため、パウロはフィリピ教会に向かって、そこに集う一人ひとりの成長や、教会の成長を励ます言葉を語りかけました。
パウロはわかりやすい判断基準では成長を測りませんでした。フィリピ教会の成長を願ったパウロは、3つのことを祈りました(9-11節)。
①愛が豊かに溢れることは、この社会で溢れている現実ではありません。また、おそらく多くの人たちにとって愛情とは心の問題だと思います。頭で考えることと愛情を切り離してはいけないとパウロは伝えています。知識が欠ける時、わたしたちはしばしば愛するべき対象を適切に愛せません。だから、愛情が感情だけでなく、知識と結びつき、フィリピ教会の人びとの生き方がますます愛情に溢れるものになっていくようにとパウロは願い続けました。何よりも、神がそれを成し遂げてくださるとパウロは神を信頼して、このように祈り求めました。
また、天の御国に向かって歩む信仰者たちがその信仰の旅路を終えて、キリストと出会うその日に備えてパウロは彼らが②清い者となり、③義の実を結びようにと祈りました。神の前でとがめられることのない存在になるなんて、無理だと思ってしまいます。でもパウロは、神が将来に向かって、信仰者たちを少しずつ清い者へと変えてくれると信じ、神に信頼して祈り求めました。
わたしたちは自分の力では変わることができません。でも、将来のキリストの日に向かう信仰の旅路において、神がわたしたちを整え、変え、愛情を溢れさせてくださいます。どうか、神が成長や変化をみなさんに対して願う時、柔軟な心をもち、神への信頼を抱いて、神の働きかけを受け入れることができますように。