小山ナザレン教会

この都を愛する神(稲葉基嗣) – ヨナ 3:1–10


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2024年7月7日 三位一体後第6主日

説教題:この都を愛する神

聖書:ヨナ書 3:1−10、マルコによる福音書 1:14−15、ヨハネの手紙 一 1:8–10、詩編 103

説教者:稲葉基嗣


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ヨナが行かなければならなかった場所は、アッシリア帝国の都ニネベでした。

アッシリア帝国といえば、古代世界の人びとにとっては、悪や暴力の象徴です。

驚いたことに、ニネベの人びとに語りかけるヨナの言葉は(3:4)、

ヘブライ語でたったの5単語という、とても短いものでした。

もっと語るべきことが他にもあったのではないでしょうか。

ヨナは、ニネベの人びとの心をイスラエルの神に向ける努力をまったくしません。

正直、誰がこの言葉を受け入れるのだろうかと思ってしまうほど、ヨナの言葉は

神の思いを届けるための配慮も、ニネベの人たちに対する愛情もありません。

ヨナにとって、彼がニネベの人びとに語った言葉は、警告ではないのでしょう。

きっと、ヨナはニネベの都に滅びてほしかったのだと思います。

でも、そんなヨナの思いとは裏腹に、ニネベに住む人びとはヨナの言葉を聞くと

すぐさまうろたえ、騒ぎ出し、悪の道を離れて、神に向かって祈り始めました。

何と皮肉に溢れた展開が待っていたことでしょうか。

ヨナ書が読者に伝えたいことは明らかです。

ニネベの人びとの悪名がどれほど世界中に響き渡っていたとしても、

神は彼らを憐れみ、愛しておられるということです。

ヨナ書はニネベの悪の大きさよりも、ニネベが大きい都であったことを何度も、

そして過剰に強調しています(たとえば、3節の直訳は「神にとって大きな都」)。

彼らがどれだけ悪を重ねても、どれだけ暴虐の限りを尽くしたとしても、

それでも、ニネベが神の憐れみを受けるべき都で、そこに住む人たちが

神の愛を受けるべき人たちであることは変わりません。

神はすべての人を憐れみ、この世界を愛する神だからです。

そんな神の思いに気づく時、ヨナの言葉が別の意味をもって響きます。

一見、ヨナがニネベの人びとに語りかけた言葉はニネベの滅びを願っています。

直訳すると、「ニネベはひっくり返る」です(4節)。

でも、「ニネベは向きを変える」とも読める曖昧な表現をしています。

実際にヨナが選んだ言葉は、悪や暴力の道を歩むニネベの人びとが向きを変えて、

悪や暴力の道から離れる可能性があることを伝える言葉でした。

だから、わたしたちはあの日のヨナの声に、声を合わせます。

わたしたちの暮らすこの社会の暴力がひっくり返り、

わたしたちがこの社会でともに生きる人たちと一緒に、

平和を目指す道へと向きを変えていけるように、と。

それが、この世界を、この世界にあるあらゆる町を、

愛しておられる神が願っておられることです。

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