市場の風を読む

嵐の前の静けさか?


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各国中央銀行の動きは2024年末まで予想通りになると見られるにもかかわらず、2025年は波乱が予想される理由を、弊社グローバル・チーフ・エコノミストが御説明します。

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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

本日は、弊社グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターが、年末の各国中央銀行の動向が、驚くほどにかなりの確実性を伴って予想される点についてお話しします。

このエピソードは12月17日 にニューヨークにて収録されたものです。

英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

年初からこれまでの期間とは異なり、各国中央銀行の年内の会合に関する予想は、確実性がはるかに高いようです。恐らく単なる嵐の前の静けさに過ぎないのでしょうが、今のところ、年末年始の休暇まで、穏やかな中央銀行の動向を享受しましょう。先週木曜日に欧州中銀は、弊社予想および市場の予想とぴったり一致する25ベーシスポイントの利下げを実施しました。同じように、経緯は全く異なるとは言え、FRBは今週25ベーシスポイントの利下げを実施すると弊社は予想しており、市場の予想もこれと同じと見られます。

イングランド銀行と日銀は、いわば締め切り済み勘定になっていると弊社は考えています。つまり、新年まで新たな動きはないと見られます。欧州中銀は、利下げのペースを速めるべきか否かが議論される中、先週、25ベーシスポイントの利下げを実施しました。ディスインフレに関する疑いのほとんどが払拭され、意思決定のプロセスでは経済成長の下振れリスクが大きく浮上しました。制限的な金融政策の必要性が一段と薄れるようになり、欧州中銀のラガルド総裁の声明は、理事会で話し合った、政策金利が中立水準に到達するまで金融緩和を続けるとのスタンスを反映している模様です。問題は、次に何が起こるかです。欧州中銀は、中立水準まで利下げを行い、政策金利を1%に引き下げる必要があると判断すると弊社は見ています。

これと好対照をなすのがFRBです。FRBにとって、成長に関して現在も残る懸念はほとんどありませんが、ディスインフレのペースに対する疑問は増大しています。最近の雇用データを例にとると、明らかにリセッションのリスクが小さいことを示唆しています。しかし、一部のFOMCメンバーからは、インフレ指標が実際には下げ渋っており、ディスインフレのプロセスが足踏み状態になっているかも知れないとの懸念の声が上がり始めました。

弊社の視点では、先週のCPIデータおよび最新の他の全てのインフレ指標は、次のPCE指数に明確なディスインフレの持続が表われると示唆しており、FRBが12月に25ベーシスポイントの利下げを行なうとの予想に議論の余地はほとんどありません。実際、弊社が考える通りに低調であれば、1月にも利下げが実施される見込みが強まると弊社は考えています。

それでも、残存季節性によるものであれ、新たに課される関税の転嫁と思われるものであれ、今後発表される指標にディスインフレ傾向の反転が表われた場合には、弊社の基本的な見解である3月と5月の利下げに対する逆風になるでしょう。そして、本当にFRBが利下げに対する慎重姿勢を強めているかを知る上で、来週の記者会見におけるパウエル議長の発言は極めて重要になると見られます。

現時点では、イングランド銀行と日銀のいずれも、年内に新たな措置はとらないと弊社は予想しています。最近の円安を受けて今月にも利上げを行なうとの見方が浮上していますが、弊社は1月に利上げする見込みの方がはるかに大きいとの見解を維持しています。1月の方が、春闘の賃上げ交渉に対する洞察を深めることができる上、それによって将来のインフレも見極めやすくなるためです。

また、最近の日銀高官の発言も弊社見解と一致します。さらに、特に1月23日と24日の金融政策決定会合の1週間前となる1月14日には、氷見野副総裁の懇談会と記者会見が予定されています。これらの条件はすべて1月の利上げを示唆しています。過去2週間の市場は、12月の利上げではなく弊社が予想する1月の利上げを織り込む方向に動いています。

現在市場は、イングランド銀行も年内ではなく来年利下げを実施すると織り込んでいます。弊社は、利下げは1会合おきに行われると予想しています。12月の会合では据え置かれ、2月の会合で利下げを行い、その後は段階的な利下げが実施されるでしょう。現在は、当面イングランド銀行が最も重視しているサービス価格のインフレが、年内は高止まりしていますが、労働市場の弱さを裏付ける証拠が増えており、その結果、賃金の伸びが減速し、弊社が見るに、これを受けてMPCはさらなる利下げに踏み切るでしょう。ただし、英国では最近の財政出動の発表によって、インフレのリスクが僅かながら上昇し始めました。

このように、今年も終わりに近付き、振り返って見れば実にいろいろあった1年でした。米国は言うに及ばす世界各国で選挙が実施され、中央銀行に関する予想が大きく振れました。さらに、日本では構造的なシフトによって、数十年ぶりに名目ベースの景気停滞に終止符が打たれました。そして、現時点で2025年を概観したところでは、目まぐるしく変化する状況はまだ終わっていないようです。それでも、今週は各国中央銀行に関して劇的な事件が起こる可能性は小さいため、とりあえず一息つきましょう。よい休暇をお過ごしください。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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市場の風を読むBy Morgan Stanley