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米国大型株に対する市場心理が慎重になっていますが、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンは、前向きな見方を保つ余地はまだあるとみています。今回はその理由をご説明します。
このエピソードを英語で聴く。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、弊社が米国大型株について市場コンセンサスよりも前向きなのはなぜか、特にどのセクターについてそうなのかをお話しします。
このエピソードは6月16日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
弊社は米国株に対して、市場コンセンサスよりも前向きな見方を維持しています。今後12ヵ月間の収益環境が大方の見方より良好であることを、弊社が注目している主要指標が示しているのがその主な理由です。第1に、弊社の主要な業績予想モデルは、今後1年間のEPSが1ケタ台後半の成長を遂げると示しています。第2に、リビジョン・インデックスが4月中旬のマイナス25%から現在のマイナス9%へと急改善しています。第3に、弊社は企業のコスト面を考慮する派生的な業績先行指標も導入しているのですが、こちらのモデルは、EPSが2026年上半期までに10%台半ばの成長を遂げると予想しています。もう少し具体的に申し上げれば、コスト効率の向上による利益の増加を示唆しているのです。
興味深いことに、先週開催されたモルガン・スタンレー金融カンファレンスではこのような話を何度も耳にしました。業務合理化の一助としてのAI導入に言及した企業が多かったのです。そして最後に、S&P500指数採用銘柄の利益にとって最も過小評価されている追い風は、米ドル安です。1月の高値から11%も下落しています。そして付け加えますが、弊社の為替ストラテジストは、今後12ヵ月間でドル安がさらに7%進むと予想しています。経済成長率予想が4月半ばに底を打ってからリビジョン・インデックスが改善していること、そしてその改善率も高いことは、多くの大型株にとって強力な追い風です。特に強い影響を受けるのは資本財とソフトウェアのセクターです。
両セクターには強力な構造的成長ドライバーが備わっています。まず資本財セクターについては、世界のインフラ整備支出が改めて注目されています。設備稼働率の変化も2年半ぶりにプラスに転じており、商業・工業向けローンの総額も再び増加して2020年以来の高水準に達しています。テクノロジーの構造的な普及とグローバルなインフラへの注目が多くの国々で進んでおり、より資本集約的な環境につながっています。米国の特別償却(ボーナス減価償却)も追い風になる公算が大きいでしょう。設備投資の増加を促し、資本財メーカーに直接恩恵をもたらすためです。一方、ソフトウェア・セクターは生成AIのソリューションにより、収入と費用の両面からフリーキャッシュフローを増やせる有利な状況にあります。
弊社は大型金融株も選好しています。このセクターでは今年下半期から、規制緩和による大きな利益が計上され始める可能性があります。弊社の比較的前向きな見方を脅かす主(しゅ)たるリスクは、やはり長期金利です。6月11日に発表された消費者物価指数はコンセンサスを下回り、債券利回りの抑制に寄与したものの、6月13日に地政学的な緊張が高まっても金利が低下しなかったのは興味深いことだと弊社では感じています。その結果、10年債利回りは弊社が重視する4.5%の水準に近いところにとどまっています。この4.5%を超えると、金利に対する株価の感応度が高まる公算が大きいのです。また金利のボラティリティが4月の高値に比べてかなり低く、数年ぶりの低水準に近いことも好材料です。
弊社が一般消費財セクターを長らくアンダーウエイトにしている根拠は、関税に関連する逆風、価格決定力の低下、景気循環の後期という相場環境の3点にあります。景気循環の後期には、このセクターはアンダーパフォームに終わるのが普通です。またこのセクターをアンダーウエイトにしておけば、中東の緊張激化を受けて原油価格がさらに上昇することになっても、ナチュラル・ヘッジの効果が得られます。弊社ではこれに加えて、原油高やなかなか動かない金利による打撃が最も大きい小型株も、引き続きアンダーウエイトにしています。小型株は、コスト上昇につながる米ドル安に苦しんでいるうえ、事業のほとんどが米国内で行われるため米ドル安が売上高にもたらす為替差益も限定的です。
最後に、お客様と弊社との対話で最も話題になる懸念材料は、バリュエーションが高いことです。弊社はこれについても、比較的楽観視しています。なぜかというと、バリュエーションについてはその水準よりも変化率の方が重要だからです。弊社の今年の中間見通しでもお話ししましたが、EPS成長率が過去の中央値である7%を上回り、かつフェデラル・ファンド金利が前年同期より低くなっているときには、90%の割合でS&P500指数全体のPERが上昇しています。上昇し始めるときの水準がいくらであるかにかかわらず、です。
事実、そうした条件が満たされているとき、S&Pの予想PERは平均で9%上昇しています。したがって、市場全体のPERが現在の21.5倍の近辺にとどまるという弊社予想は、保守的だとみることもできるでしょう。もし歴史が繰り返し、バリュエーションが10%上昇したら、向こう1年間のS&P500指数に対して強気な弊社の見通しは十分達成可能になるのです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
米国大型株に対する市場心理が慎重になっていますが、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンは、前向きな見方を保つ余地はまだあるとみています。今回はその理由をご説明します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、弊社が米国大型株について市場コンセンサスよりも前向きなのはなぜか、特にどのセクターについてそうなのかをお話しします。
このエピソードは6月16日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
弊社は米国株に対して、市場コンセンサスよりも前向きな見方を維持しています。今後12ヵ月間の収益環境が大方の見方より良好であることを、弊社が注目している主要指標が示しているのがその主な理由です。第1に、弊社の主要な業績予想モデルは、今後1年間のEPSが1ケタ台後半の成長を遂げると示しています。第2に、リビジョン・インデックスが4月中旬のマイナス25%から現在のマイナス9%へと急改善しています。第3に、弊社は企業のコスト面を考慮する派生的な業績先行指標も導入しているのですが、こちらのモデルは、EPSが2026年上半期までに10%台半ばの成長を遂げると予想しています。もう少し具体的に申し上げれば、コスト効率の向上による利益の増加を示唆しているのです。
興味深いことに、先週開催されたモルガン・スタンレー金融カンファレンスではこのような話を何度も耳にしました。業務合理化の一助としてのAI導入に言及した企業が多かったのです。そして最後に、S&P500指数採用銘柄の利益にとって最も過小評価されている追い風は、米ドル安です。1月の高値から11%も下落しています。そして付け加えますが、弊社の為替ストラテジストは、今後12ヵ月間でドル安がさらに7%進むと予想しています。経済成長率予想が4月半ばに底を打ってからリビジョン・インデックスが改善していること、そしてその改善率も高いことは、多くの大型株にとって強力な追い風です。特に強い影響を受けるのは資本財とソフトウェアのセクターです。
両セクターには強力な構造的成長ドライバーが備わっています。まず資本財セクターについては、世界のインフラ整備支出が改めて注目されています。設備稼働率の変化も2年半ぶりにプラスに転じており、商業・工業向けローンの総額も再び増加して2020年以来の高水準に達しています。テクノロジーの構造的な普及とグローバルなインフラへの注目が多くの国々で進んでおり、より資本集約的な環境につながっています。米国の特別償却(ボーナス減価償却)も追い風になる公算が大きいでしょう。設備投資の増加を促し、資本財メーカーに直接恩恵をもたらすためです。一方、ソフトウェア・セクターは生成AIのソリューションにより、収入と費用の両面からフリーキャッシュフローを増やせる有利な状況にあります。
弊社は大型金融株も選好しています。このセクターでは今年下半期から、規制緩和による大きな利益が計上され始める可能性があります。弊社の比較的前向きな見方を脅かす主(しゅ)たるリスクは、やはり長期金利です。6月11日に発表された消費者物価指数はコンセンサスを下回り、債券利回りの抑制に寄与したものの、6月13日に地政学的な緊張が高まっても金利が低下しなかったのは興味深いことだと弊社では感じています。その結果、10年債利回りは弊社が重視する4.5%の水準に近いところにとどまっています。この4.5%を超えると、金利に対する株価の感応度が高まる公算が大きいのです。また金利のボラティリティが4月の高値に比べてかなり低く、数年ぶりの低水準に近いことも好材料です。
弊社が一般消費財セクターを長らくアンダーウエイトにしている根拠は、関税に関連する逆風、価格決定力の低下、景気循環の後期という相場環境の3点にあります。景気循環の後期には、このセクターはアンダーパフォームに終わるのが普通です。またこのセクターをアンダーウエイトにしておけば、中東の緊張激化を受けて原油価格がさらに上昇することになっても、ナチュラル・ヘッジの効果が得られます。弊社ではこれに加えて、原油高やなかなか動かない金利による打撃が最も大きい小型株も、引き続きアンダーウエイトにしています。小型株は、コスト上昇につながる米ドル安に苦しんでいるうえ、事業のほとんどが米国内で行われるため米ドル安が売上高にもたらす為替差益も限定的です。
最後に、お客様と弊社との対話で最も話題になる懸念材料は、バリュエーションが高いことです。弊社はこれについても、比較的楽観視しています。なぜかというと、バリュエーションについてはその水準よりも変化率の方が重要だからです。弊社の今年の中間見通しでもお話ししましたが、EPS成長率が過去の中央値である7%を上回り、かつフェデラル・ファンド金利が前年同期より低くなっているときには、90%の割合でS&P500指数全体のPERが上昇しています。上昇し始めるときの水準がいくらであるかにかかわらず、です。
事実、そうした条件が満たされているとき、S&Pの予想PERは平均で9%上昇しています。したがって、市場全体のPERが現在の21.5倍の近辺にとどまるという弊社予想は、保守的だとみることもできるでしょう。もし歴史が繰り返し、バリュエーションが10%上昇したら、向こう1年間のS&P500指数に対して強気な弊社の見通しは十分達成可能になるのです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。