市場の風を読む

米国選挙がクレジット市場の混乱を引き起こす可能性


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選挙結果の不透明感がクレジット投資家に不利益をもたらし得る理由について、弊社のコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のAndrew Sheetsが解説します。


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----- トランスクリプト -----


「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

本日は弊社のコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のAndrew Sheetsが米国選挙とクレジットへの影響について解説します。

このエピソードは10月18日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

モルガン・スタンレーの今年のクレジットに対する前向きな姿勢は単純な理論を拠り所としています。クレジットは極端を嫌う資産クラスであり、企業が破綻すれば損失が発生しますが、企業の利益が2倍、3倍に増えたからと言って特に利益が増えるわけではありません。クレジットは適度を並外れて好む資産クラスだと言えます。

 そして、モルガン・スタンレーでは、大いに適度を予想しています。米国と欧州の適度な成長。適度なインフレ、これは来年にかけて低下し続けます。中央銀行の利下げは適度で、景気後退期によく見られるような急激な利下げではなく、フェデラルファンド金利は来年の中頃には3.5%を若干下回る水準に落ち着くと弊社は見ています。適度な経済と企業の積極性が適度な水準であることは投資家の耳に心地よく響き、平均より高いバリュエーションを支えると弊社は見ています。

では、来たる11月5日の米国選挙はこの無難な状況にどう影響するでしょうか。

政府の扱う問題を誰が指揮するのか、しかも、世界最大かつ最強の経済を誇る国の政府です。この選挙は2人の候補者の違いという点でも注目に値し、この2人の経済、国内政策、対外政策に対する考え方は非常に対照的です。これらを背景に、クレジット投資家が念頭に置くべきことを提案します。

第一に、大きな視点から「クレジットは適度を好む」という概念は弊社にとってぶれない軸です。経済政策を大きく変えるような選挙結果、あるいは政策全般の不透明感が増すような選挙結果はクレジットにとって大きなリスクとなる確率が高いでしょう。

第二に、議論の対象となっている様々な政策の中でも、関税は特に重要だと感じます。なぜなら関税は一般的に議会の承認なく導入でき、したがって実施の確認が非常に容易なためです。関税案によりクレジットの個別銘柄レベルで大きなばらつきが生じる可能性があり、最終商品のかなりの部分を輸入している小売などのセクターにとっては重大なリスクとなります。時間に制約のある投資家に対しては、関税は弊社が大半の時間を充てる政策分野であり、弊社の選挙がらみのクレジットリサーチの多くが重点的に取り上げています。

第三に、注目すべきこととして、株式相場が史上最高値近辺にあり、クレジット・スプレッドが歴史的な低水準にあっても、選挙を控えて株式もクレジットも予想ボラティリティが拡大しています。そこで疑問が生じます。これらのオプション市場は他の市場が知らないことを知っているのではないか?弊社は懐疑的です。歴史的に、市場でボラティリティの拡大と史上最高値が同時に起きている場合、そういうことは滅多にありませんが、短期的には悪くなく、むしろ良い兆候である傾向があります。この説明として考えられるのは、投資家はまだ少し臆病になっており、本来あるべき姿ほど前向きでないのかもしれません。

米国選挙が近づいていますが、結果は読みにくく、将来の政策が選挙にかかっています。現在見られる高いインプライドボラティリティは、弊社の見るところ、何か隠れた要素を反映しているのではなく、既知の未知を織り込んでいるものと思われます。関税政策は議会の承認が不要で実施が容易なため、クレジットの個別銘柄に最も強く関係してくるでしょう。そして大きな視点から、クレジットは適度を好むため、それを達成する可能性がより高い選挙結果がクレジットにとってはベストとなるでしょう。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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市場の風を読むBy Morgan Stanley