市場の風を読む

濃厚になった共和党の圧勝を織り込む


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共和党のホワイトハウスへの返り咲きと連邦議会での過半数議席獲得が確定しようとしている現在、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンは、規制緩和、税制改正による追い風、投資意欲の回復に市場が備えようとしていると述べています。

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----- トランスクリプト -----


「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン, 今回のエピソードでは、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、米国大統領・議会選挙の結果と株式市場への影響についてお話しします。

このエピソードは11月11日 にニューヨークにて収録されたものです。

英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

選挙前に弊社が実施した調査では、共和党の圧勝がプラスに寄与すると見込まれていた銘柄で、11月5日までの期間に大幅なアウトパフォームは見られませんでした。つまり、共和党の圧勝が完全には織り込まれていませんでした。その結果、先週は金融株、工業株およびその他のシクリカル株が大幅にアウトパフォームしました。選挙結果が明らかとなり、規制緩和環境、税制政策の追い風、アニマルスピリット復活の可能性といった見通しが強まったため、クオリティの高いシクリカル株にはさらなる上昇の余地が見込めると我々は見ています。こうした展開の背景には、シクリカル株のアウトパフォーマンスへのサポートを既に強めていたマクロ経済環境があります。このため、我々は10月初めにこれらの銘柄のウェイトをオーバーウェイトに引き上げています。ただし、引き続き、関税の影響を受ける消費財株と再生エネルギー株については売りのスタンスを維持します。

10月初めに金融株のウェイトを引き上げたのは、決算発表シーズンを控えて期待が低かった一方、ポジショニングも依然、低かったためです。その後、我々の調査で、選挙にかけての金融株のアウトパフォーマンスの大半は、予測市場においてトランプ候補勝利の確率が上昇したからではなく、業績予想の大幅な上方修正によって説明されることが分かりました。選挙結果が判明した現在は、ファンダメンタルズの改善に加えて、規制緩和に対する期待もパフォーマンスを牽引していると見られます。

2016年のシナリオでは、小型株と、クオリティのより低い株式が、選挙後にアウトパフォームすると示唆されていました。しかし今回は、考慮に価する重要な違いが2つあります。第1に、2016年には金利とポジティブな相関関係があった市場のいくつかの領域が、現在はマイナスの相関関係になっていることです。別の言葉で言うなら、景気サイクルのより終盤に近いところにある現在の環境において、金利上昇に対するこうした銘柄の感応度は、2016年よりもマイナスの度合いが大きくなっています。仮に、選挙後に金利のアップサイドが大きくなるのであれば、小型株とよりクオリティの低いシクリカル株の上値余地が小さくなると思われます。さらに、小型株の相対的な収益予想修正の度合いが現在はネガティブになっていますが、2016年はポジティブでした。最後に、2016年は選挙後にアニマルスピリットが上昇しましたが、小型株の相対パフォーマンスは、選挙からわずか1ヵ月後の12月初めにピークをつけました。米国株式市場のモメンタムは、クオリティの高いシクリカル株を中心に上昇を維持していますが、潜在的なリスクは考慮すべきです。その第1は、ターム・プレミアムの上昇に牽引された金利の大幅な上昇です。これまでのところ、ターム・プレミアムの上昇は50ベーシスポイントと、投資家の懸念にはつながっていません。しかし、財政の持続可能性に関する懸念から、ターム・プレミアムが今後大きく上昇すれば、株式のバリュエーションに逆風になることが見込まれます。第2に、マクロ経済関係者の間でより多く支持されている見解の1つがドル高です。年末までドル高が続いた場合、多国籍企業の2024年と2025年の利益成長に逆風となる可能性があります。

株価のポジティブなモメンタムに対する最後のリスクは、株価それ自体です。過去数ヵ月、S&P 500は、ファンダメンタルズから離れた動きを見せました。より具体的には、S&P 500の前年比の動きと、業績修正の度合いや景況感調査との関係性が現在ほど薄くなることは稀です。しかし、これまでのところ、市場や財界首脳の選挙に対するポジティブな反応を踏まえると、恐らくアニマルスピリットが企業業績予想の上方修正につながる可能性があります。これは、すでに株価に織り込み済みとなっているだけに、現在の株式市場の道筋を維持するためには必要なことです。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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市場の風を読むBy Morgan Stanley