エフエムたちかわ「おうちde医療in立川」第66回は、2026年9月4日(金)16時30分から17時に放送された回です。
今回のテーマは、
「人生後半の宝探し―過去を振り返ると、未来が見えてくる」
ゲストには、株式会社BANSOSHAの田和真由美代表をお迎えしました。
人生の後半に差しかかったとき、私たちはどのようなことを考えるでしょうか。
これからの健康、仕事の区切り、親や配偶者の介護、子どもの独立、老後の住まい、お金のこと。そして、自分自身の最期をどのように迎えるか。
年齢を重ねるにつれて、人生の残り時間を意識する機会は増えていきます。一方で、「自分はこれから何をしたいのか」「どのように生きたいのか」と聞かれると、すぐに答えられない方も少なくありません。
仕事や子育て、家事、介護など、誰かのために忙しく過ごしてきた人ほど、自分自身について考える時間を後回しにしてきたのではないでしょうか。
今回の放送では、田和真由美代表との対話を通じて、これまでの人生を振り返り、自分の中に眠っている価値や可能性を見つける「人生後半の宝探し」について考えます。
人生を振り返ると聞くと、「過去を懐かしむこと」「失敗や後悔を思い出すこと」という印象を持つかもしれません。
しかし、過去を振り返る本当の目的は、過去に戻ることではありません。
これまで自分が何を選び、誰と出会い、どのような出来事に心を動かされてきたのかを整理することで、自分が大切にしてきた価値観や、自分らしさを見つけることができます。
それは、これからの未来を考えるための大切な手がかりになります。
番組の重要なキーワードの一つが「自分史」です。
自分史とは、自分が歩んできた人生を文章や写真、年表などにまとめたものです。生まれた場所、家族、学校生活、仕事、結婚、子育て、転機となった出来事などを記録するのが一般的ですが、単なる履歴書や経歴書とは異なります。
自分史で大切なのは、「何が起きたか」だけではなく、そのときに「何を感じたか」「何を選んだか」「誰に支えられたか」を振り返ることです。
たとえば、仕事で大きな失敗をした経験があったとします。
当時はつらく、できれば忘れたい出来事だったかもしれません。しかし、その経験があったからこそ、人の痛みがわかるようになった、新しい仕事に踏み出せた、大切な人と出会えたということもあります。
子育てや家族の介護に追われ、自分のための時間を持てなかった時期も、後から振り返れば、忍耐力や人を支える力、生活を整える力を培った時間だったと気づく場合があります。
一見すると失敗や遠回りに見える出来事の中にも、現在の自分につながる意味があります。
自分史づくりは、過去の経験を成功と失敗に分けて評価する作業ではありません。自分の人生で起きた出来事を一つずつ拾い上げ、その経験が現在の自分に何をもたらしたのかを見つめる作業です。
そこから、自分でも気づいていなかった強みや価値観が見えてきます。
「人と人をつなぐことを、ずっと大切にしてきた」
「困っている人を見ると、放っておけなかった」
「新しいことを始めるときに力を発揮してきた」
「家族が安心して暮らせることを何よりも優先してきた」
人生の中で繰り返してきた行動や選択には、その人らしさが表れています。
これが、人生後半における「自分探し」につながります。
自分探しという言葉には、まだ自分が何者かわからない若者が、自分に合った生き方を探すというイメージがあるかもしれません。しかし、自分探しは若い人だけのものではありません。
人生の後半だからこそ、これまでの経験を材料にして、改めて自分を見つめ直すことができます。
長く続けてきた仕事を離れたとき、子育てが一段落したとき、家族の介護が終わったとき、あるいは病気を経験したとき。これまで自分を支えていた役割が変化すると、「自分はこれから何をすればよいのか」と戸惑うことがあります。
会社員、親、配偶者、介護者などの役割を取り除いたとき、自分には何が残るのか。
その答えを見つけるために、過去を振り返ることが役立ちます。
これまでの人生で楽しかったこと、時間を忘れて取り組んだこと、人から感謝されたこと、心が大きく動いたことを書き出していくと、自分が本当に大切にしているものが少しずつ見えてきます。
それは、これから挑戦する仕事かもしれません。趣味や地域活動、学び直し、誰かを支える活動かもしれません。あるいは、家族や友人との時間を大切にするという選択かもしれません。
自分史は、過去を記録するためだけでなく、未来の方向を見つけるための地図にもなるのです。
今回のテーマは、「終活」とも深くつながっています。
終活というと、エンディングノートを書くこと、財産や相続を整理すること、葬儀やお墓について決めること、延命治療や介護の希望を家族へ伝えることなどが思い浮かびます。
これらは、家族の負担を減らし、自分の意思を伝えるうえでとても大切な準備です。
しかし、終活は「人生を終えるための活動」だけではありません。
自分がどのような人生を歩んできたのかを確かめ、残された時間をどのように生きるのかを考える活動でもあります。
自分史をつくることで、自分が大切にしてきた人や経験が見えてきます。すると、これから会っておきたい人、伝えておきたい感謝、挑戦してみたいこと、家族に残したい思いなども明確になります。
終活は、死を考えることで、今をよりよく生きるための活動と捉えることができます。
人生の最期を迎えるまでに何を整理するかだけでなく、最期までどのような自分でありたいのか。誰とどのような時間を過ごしたいのか。どのようなことに喜びを感じながら暮らしたいのか。
こうした問いを考えることも、終活の大切な一部です。
また、自分史には、家族との対話を生み出す力があります。
子どもは、親の人生のすべてを知っているわけではありません。親がどのような家庭で育ち、どのような夢を持ち、どんな失敗や苦労を経験し、何を大切にして生きてきたのかを、ほとんど知らないこともあります。
写真や思い出を見ながら人生を語ることで、家族が初めて知る物語が出てくるかもしれません。
「そんな仕事をしていたとは知らなかった」
「その人との出会いが、今の家族につながっているんだね」
「そのときは、そんな気持ちだったんだね」
自分史をきっかけにした会話は、単なる情報の共有ではありません。家族が互いを理解し、これまで言葉にできなかった思いを伝える機会になります。
自分の人生を家族へ伝えることは、財産とは異なる「言葉の遺産」を残すことでもあります。
今回の放送は、定年や子どもの独立など、人生の節目を迎えた方、自分らしい生き方を見つけたい方、自分史づくりに関心のある方、終活を始めたいけれど何から手をつければよいかわからない方に聴いていただきたい内容です。
自分史をつくるために、最初から長い文章を書く必要はありません。
これまで暮らした場所を書き出す。心に残っている人の名前を挙げる。人生の転機になった出来事を年表にする。昔の写真を一枚選び、そのときの思い出を書く。
小さな振り返りから始めるだけでも、自分の人生に新しい意味を見つけることができます。
過去は変えられません。しかし、過去の捉え方や、その経験をこれからどう生かすかは変えることができます。
人生の中で経験した喜びも、失敗も、別れも、遠回りも、すべてが現在の自分をつくっています。その一つひとつを拾い上げていくと、これから進みたい方向が見えてきます。
株式会社BANSOSHAの田和真由美代表との対話を通じて、終活、自分探し、自分史を「人生を閉じるための準備」ではなく、「人生後半を自分らしく生きるための宝探し」として捉え直す30分です。