センスの哲学 (千葉 雅也)
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#センス #哲学 #自己表現 #社会性 #美意識 #偶然性 #模倣 #判断力 #センスの哲学
これはこの本の要点です。
まず最初に, センスの定義とその根源性, 千葉雅也氏はまず、センスとは何かを問い直します。一般的にはファッションや美術、ライフスタイルの「趣味がいい」「オシャレ」「感覚が冴えている」といった意味合いで用いられますが、本書ではセンスを、それだけに限定されない広い現象であると捉えます。つまり、的確な状況判断や人間関係、人生のあらゆる選択、さらにはどのように生きるかという根源的な問いにもセンスが関わってくると論じます。著者はこの領域横断的なセンスという概念を、現象学やポスト構造主義の知見を援用しながら解説し、私たちが無自覚に行っているセンス的な判断=「良し悪し」「合う合わない」が、いかに重要かを明らかにします。センスは単なる個人的な趣味ではなく、時代背景、コミュニケーション、社会制度との関係性の中で養われ、より良い選択や創造に繋がる根源的な力なのです。
次に, 個性と模倣の関係, オリジナリティと模倣。この二つは対立しがちなテーマですが、本書ではセンスの領域で両者は密接に関わるものとされています。人は誰しも完全な独自性を持つものではなく、模倣を通じて自身のセンスを育てていくプロセスがあります。ファッションや言語、価値観においても、まず「モデル」が存在し、それを真似ることから自分流へと発展していくのです。重要なのは無自覚な模倣ではなく「どう模倣するか」の主体的な選択。また、その中で「らしさ」や独特さ=オリジナリティが際立っていくこともあります。本書は、個性至上主義に陥ることなく、模倣と主体性のダイナミズムを肯定的に捉え直し、一人一人が「自分らしいセンス」を育む意義を論じています。
さらに, 偶然性・必然性とセンス, 人生は計画どおりに進むとは限らず、多くの偶然や想定外の出来事に左右されます。本書はそんな「偶然」を受容することがセンスの成熟に重要だと説きます。完璧な計画や必然性にこだわるのではなく、時に「偶然性」に身を委ね、そこで起きる予想外の出会いや発見、ズレや違和感を楽しむ余裕こそ、豊かなセンスを育む土壌であると説明します。偶然を拒絶せず、むしろ自分の感覚や価値観を揺るがしてくれる「ノイズ」として受け止めることにより、新たな自分の可能性や世界の広がりを実感できるのです。生活や人間関係、創造活動にも通じるこの考え方は、予測不能な現代社会を生き抜くヒントとなるでしょう。
そして, センスと社会性・倫理観, センスの良し悪しというのは、個人的な好みに還元されるものだけではありません。千葉氏は、センスが社会的な規範や倫理とも結びつくことを強調します。つまり、センス良く振る舞うとは、単に自分が好きなものを選ぶだけでなく、他者との関係性や時代の空気、状況に応じた柔軟さや配慮を持っているということです。その上で、「よいセンス」は社会に調和とクリエイティビティをもたらし、集団や組織の中で適切な距離感や信頼関係を築く鍵ともなります。社会の中で他者と共により良く生きるためには、センスがしばしば倫理的判断や公共性と不可分であることが本書の大きな特色です。
最後に, センスの鍛え方と実践, 本書のクライマックスは、いかにしてセンスを鍛え、日常に活かすかという実践的な問いにまで踏み込む点です。センスは、生まれつき決まったものではなく、意識的に磨かれていくものだと著者は説きます。例えば、多様な価値観や美意識に触れる経験、自分と異なる趣味やライフスタイルを持つ人との交流、日々の小さな選択を「なんとなく」ではなく少し立ち止まって考えてみる姿勢などが重要になります。また、間違いを恐れずに歩みを進める柔軟性や失敗から学ぶ姿勢も、センスを一層深めてくれるポイントです。自分自身と向き合い、世界を見つめ直すことで、より豊かなセンスが育まれていくとまとめられています。