市場の風を読む

人型ロボットには大量の鉱物が必要


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地政学的な不確実性が続く中、需要が供給を大きく上回る人型ロボットは重要鉱物がアキレス腱となりかねないことを弊社オーストラリア素材担当アナリストのラフル・アナンドが解説します。

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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

今回は、弊社オーストラリア素材担当アナリストのラフル・アナンドがロボットの発展に必要不可欠な重要鉱物について掘り下げ、重要鉱物は西側諸国が現在、真っ先に念頭に置くべき重要な存在である理由を解説します。

このエピソードは6月25日にオーストラリアのシドニーにて収録されたものです。

英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

人型ロボットはまもなく、私たちの日常生活に欠かせないものとなるでしょう。モルガン・スタンレー・リサーチでは2050年までに人型ロボット市場が10億台を超える規模に成長し、年間売上高は5兆ドル近くに達するものと予想しています。

この市場について考える際、また、それが重要鉱物の需要にどう影響するかを考えると、重要鉱物の需要は急増する可能性があります。重要鉱物の需要のうち鍵となる領域は、基本的にレアアース、リチウム、グラファイトに絞られるでしょう。

人型ロボットという複雑な機械は1台につきレアアース1キロ、リチウム2キロ、銅6.5キロ、コバルトおよそ200グラムが必要になります。重要な点として、累積量の観点で見た市場規模は2050年までにおよそ8,000億ドルという巨大な規模となる可能性があります。

8,000億ドルという市場規模のほかにも、もう少し深掘りが必要だと考える理由は、これらの市場の現時点での支配状況を考えた場合に、中国という角度からの見方が生じるためです。中国は現在、レアアースの供給の88%、グラファイト供給の93%、精製リチウムの供給の75%を支配しています。中国は先頃、米国が対中関税を発表したことへの対応として、7種類の重レアアースと永久磁石を輸出規制の対象としました。これに関する包括的なディールはまだ実現していません。

非常に重要なこととして、我々は今すぐに多角化について考える必要があります。これは重要鉱物に対する中国の支配力が非常に強いことだけが理由ではありません。それよりも重要なのは、サプライチェーンがどう変化するかを考えたときに、今は新しい鉱山が稼働するまでに18年近くかかるためです。これは過去5年間に稼働した鉱山の実際のデータで、所要期間はこの10年の間に50%近く長くなりました。これは西側諸国の認可プロセスが非常に長いことが根本的な理由ですが、鉱山が操業に至るまで非常に長期にわたる探査活動が必要な場合があることも理由です。

それに加えて、需給バランスを考えると、40年までにネオジム・プラセオジム(NdPr)というレアアースの市場では供給が26%不足する見通しです。リチウムも80%近く不足する可能性があります。つまり、供給確保の問題だけでなく、その鉱山の稼働までに何年かかるかも問題です。さらに、どれだけ大量の供給が実際に必要になるのかも問題です。

2040年は遠い未来のように感じるでしょうが、今すぐ行動する必要性を理解することが大切です。今回の人型ロボットに関するリサーチは、オーストラリアの素材担当チームを中心に世界の素材担当チームが協力して実施し、レアアース、リチウム、レアアース磁石というテーマに沿って世界の34銘柄を選定しました。

また、ロンドンで行われた米中の貿易協議では軍事用レアアース磁石と輸出について合意に至らなかったことを念頭に置くことが非常に大切です。これは今後、米中間の貿易協議で大きな影響力を発揮する重要なポイントとなるためです。

これについては引き続き状況が進展しており、弊社は今後も注意深く見守り、時の経過とともに最新情報をお伝えしていきます。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。




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市場の風を読むBy Morgan Stanley