市場の風を読む

日本の銀行業の新たな地図


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日本の銀行業界は、デジタルインフラ、M&Aサイクルの拡大、そして預金獲得競争の高まりによって姿を変えつつあります。この変化の中で、最も恩恵を受けるのは誰でしょうか。


トランスクリプト


「市場の風を読む(Thoughts on the Market)」へようこそ。モルガン・スタンレーMUFG証券、日本の金融業界リサーチヘッドの長坂美亜です。

本日は、日本の金融業界の構造を変えている3つの重要テーマについてお話しします。デジタル資産、M&A、そして預金獲得競争です。

こちらは東京時間午前10時、

5月22日(金)に収録しています。

 

一見すると、デジタル資産、M&A、預金獲得競争は、それぞれ異なるテーマのように聞こえるかもしれません。暗号資産の話、企業の経営戦略の話、そして預金商品の話です。

しかし日本では、これらはすべて同じ大きな変化を示しています。それは金融が従来の「預金と貸出中心」のモデルを超えて進化しているということです。

これまで数十年にわたり、日本の銀行業は主に「誰が最大のバランスシートを持つか」で競われてきました。

しかし現在では、「顧客関係を誰が握るのか」「取引フローを誰が押さえるのか」「金融プラットフォームを誰が主導するのか」がより重要になっています。

それでは順を追って見ていきます。

 

まずデジタル資産です。暗号資産はこれまで主に投機的な取引として見られてきました。

しかし今、より重要なのは、金融インフラそのものがどのように再設計されるかという点です。

日本では、セキュリティトークン、トークン化預金、デジタル証券決済といった分野で、金融機関とインフラ事業者の連携が進んでいます。

一例がセキュリティトークン化です。これにより、小口投資や分割所有、株主権の付与を一体化した仕組みが実現しやすくなります。

また、証券と資金を同時に移転するブロックチェーンベースのDVP(受渡同時決済)の試行も進んでいます。さらに将来には、T+0、すなわち即日決済の実現も議論されています。

銀行にとってのリスクも明確です。資金移動を担う従来の銀行ネットワーク(いわゆるレール)から、デジタル基盤へ取引が移行すれば、フィンテック企業や機動性の高い銀行が収益機会を取り込む可能性があります。

当社は、2030年までに世界で約210億ドルから820億ドルの銀行収益が影響を受ける可能性があると見ています。

これは単なる暗号資産の話ではなく、次世代の取引インフラを誰が支配するのかという問題です。

 

次にM&Aです。

日本のホールセール金融市場は、金利正常化とコーポレートガバナンス改革によって変化しています。

企業は、低いPBRの是正、株主対応、資本効率の改善など、より高いリターンを求められています。

この圧力が、非公開化、カーブアウト、TOB、事業再編といった動きを加速させています。

2025年の国内M&Aの市場全体のディールアマウントは、過去10年で最高水準に達したと見ています。

同時に、銀行ビジネスも貸出中心からアドバイザリー含むビジネス強化へ移行しています。

融資提供能力だけでなく、再編、事業承継、IPO、M&A、資本政策における助言力が競争力の源泉となっています。さらに、案件完了後のウェルスマネジメントやコーポレートアドバイザリーも重要です。

また、ウェルスマネジメントと企業アドバイザリーの連携も強まっています。

日本では多くのオーナー経営者が個人として多額の金融資産を保有しており、事業承継や売却、IPO、相続といった意思決定において、企業金融と個人資産管理は不可分になっています。

 

預金競争

3つ目は預金獲得競争です。

欧州は良い比較対象です。欧州では政策金利が2~3%を超えてから、預金獲得競争が本格化しました。

日本でも金利正常化が進めば、同様の動きが想定されますが、いくつか重要な違いがあります。

日本では家計預金の比率が高く、現状は普通預金が中心です。そのため、欧州のような急激な預金金利の引き上げ(リプライシング)は起こりにくいでしょう。

むしろ、デジタル銀行や決済プラットフォームなど、日常の金融行動に組み込まれているプレーヤーとの競争が先に強まる可能性があります。

 

これらを総合すると、日本の金融セクターは同時に4つの変化に直面しています。

すなわち、金利正常化、企業再編、資産移転、そしてデジタルインフラの変革です。

その結果、銀行は単なる貸し手から、アドバイザー、ウェルスプラットフォーム、そしてデジタルインフラ提供者へと進化しつつあります。

 

エンディング

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市場の風を読むBy Morgan Stanley