最近「リスキリング」という言葉をよく耳にするようになりました。
これは、これからの地方、そして日本の国全体にとって非常に大事なことです。しかし、非常に実現が難しいことでもあります。今回はこの「リスキリング」をテーマにお話をします。
「リスキリング」とは、「リ・スキリング」と分解できます。つまり、「リ」とは「再び」と言う意味がありますから、もう一度スキルを付けましょうという意味になります。例えば「リカレント教育」という言葉があるように、社会人になってもう一度学び直すことが一般的になりました。この「リスキリング」も学び直しの1つです。より明確に「スキル」にフォーカスをしている点が特徴です。この「リスキリング」という言葉が聞かれるようになったのは、岸田政権になってからのことです。社会人が学び直すということに対して、この5年間で1兆円を投資するという明確な意思表示があったことに端を発しています。
この「リスキリング」は政権にとって今や肝入りの政策の1つです。では、なぜこれほどまでにリスキリングに政府は力を入れようとしているのでしょうか。
その背後には、社会の構造変化の激しさがあります。激変の時代の中、これまで働いていた人達の仕事がなくなってしまうかもしれない、あるいは今までのビジネスモデルそのものが成り立たなくなるかもしれないという懸念があります。例えば、今までは先輩がやってきた経験をそのまま引き継いでいれば良かった日々の仕事が、この先消えてしまうかもしれません。しかし、生活のためには私たちは働き続けなければなりません。そのためには時代に合わせたスキルを持っている必要があるわけです。最近の言葉で言えば、デジタル・トランス・フォーメーション(DX)の導入やダイバーシティなどもその1つです。
国際競争の中で、今必要とされている人材がどんどん変化しています。先日、経済産業省の会議に出席し、経産省から様々なお話を聞いてきました。この先、「事務従事者」は2050年までに42%減少すると言われています。その他にも、「販売従事者」と言われる方々は、26%減少すると言われています。その一方で、「情報処理」や「通信」、「開発者」は20%ぐらいずつ増えていくと考えられています。
つまり、今までの「事務従事者」や「販売従事者」達が、「情報処理」の分野へ仕事を変えていかないと、今の雇用がカバーできないという状況が目前まで来ているということです。今までは「学びたい人」や「関心のある企業」が社会人として勉強することを推奨していましたが、今回は政府が旗を振って「リスキリング」を奨励するほど国として取り組んで行く必要があると考えられています。つまり、これをやらないと日本の国、あるいは地方の経済が死んでしまうかも知れないという危機感からスタートしているわけです。
ビジネスのベースは、やっぱり人的資源(人材)です。この人材が今後どう変わっていくかがこれからの日本の経済や地方の経済に莫大なインパクトがあります。人材が変わるということとビジネスが変わるということはセットです。今まで会社で一生懸命育てていた人材が育った結果、どこかの会社に雇用として流動していく可能性があることも含め大きな転換期になっているということを、私たちも認識しないといけません。
日本は「終身雇用」と言われていましたが、実は世界と比べると1つの会社に勤め上げたいという意識は極めて低く、実は変わって行きたいという意識を持っているというのが日本です。だからこそ今取り組むべきチャンスではあるのですが、残念ながら世界中と比較をしても人材に対して投資をしている額は、GDP比で言うと日本は0.1%ほどしかありません。他国が約2%~3%ですから、0.1%は他国に比べて圧倒的に低い値です。会社の外で自己啓発を行ってない人の割合が、日本は46%です。シンガポールなどは10%台です。社会人が学ぶということが浸透していないのが今の日本の特徴です。しかし、これではこの先、日本は立たなくなる可能性があります。これが、今の現状です。
実は、東京や大企業では、こうしたリスキリングは既に先進的に進んでいます。しかし、地方においては、少ない従業員で忙しい中で仕事をやってもらっているわけで社外学習に取り組む余裕はないところが多いのが現状です。しかし、国が今お金を投資しているのは、まさにその地方の中小に対してです。これは、変わっていかなければならないというメッセージです。地方こそこうした変化が今求められています。
個人のキャリアで考えても、今人生百年時代です。そうすると人生百年の中の最初の20年で学んだものを残り80年使い続けられるか考えてみてください。実は社会、企業、産業、会社にとっても大事な内容ですが、自分自身にとってもこれから生き抜いていく上では、「リスキリング」が非常に重要なフェーズへ来たということを認識する必要があると思います。
では、今日のまとめです。
「リスキリング」という言葉が非常に注目されています。これは大きな転換期にある日本全体、あるいは地域経済、産業が生き残っていくための最大の国の施策です。私達がそこにどう向き合っていくのかが、非常に大切だと思います。