スキルをもう一度身に着けていく「リスキリング」を国策として推進しているということについてお話ししています。前回は、「リスキリング」が実は地方の企業にこそ求められていて、若手だけではなく、経営者こそ学ぶべきだという内容でした。
今日は、何を学んだらいいのかについて少し深掘りをしていきます。
「リスキリング」という言葉は、デジタル人材をどう育てるか(DX)、ITの社会の中でプログラミングが出来る人をどう育成するかという話から始まっています。その前提にあるのが、いわゆる労働の中身が変化し、これまで人がやっていた仕事がロボットに置き換えられるという危惧です。しかし、それがリスキリングの全てなのかという点には疑問を持つ必要があると思います。今までは何でも学べばいいという話でしたが、今回のリスキリングは産業的な戦略に基づく学び直しの仕組みです。やはり会社、ビジネスがどう変わっていくかというところから逆算的に、どのようなスキルが必要になるかを考えることが大事です。どうしてもテクノロジーの成長に合わせてそれをどうやってプログラミングをしていくのか、DXしていくのか、そういう人材をどう作っていくのかというところにフォーカスしがちですが、AIの進歩も日進月歩で急速に進んでいます。そうすると、「これからプログラミングの能力が必要だ!と学んだことが、AIの進歩によりまたAIに取って代わられる可能性もあるわけです。そうすると、この分野に関してはもうイタチごっこです。今回のリスキリングの議論は、どうしてもそこにフォーカスしがちで、国の政策も地方の政策もそうした人材の育成を推進していますが、その前提にビジネスの力について考える必要があると感じています。これも「リスキリング」なのではないかと思います。
みなさんは、ChatGPTを使ったことがありますか。本当に会話形式で質問をすると瞬時に答えてくれます。「レポート調に書いて」と指示するとレポートで書いてくるし、「詩にして下さい」というと、詩で書いてくれるわけです。まだ精度という点で言えば不十分な点もありますが、どんどん進化しています。精度はもちろんそのAIがどれだけ勉強していくか、どれだけの情報を搭載しているかということではありますが、実は精度を決めるのは人間側なのです。要は、ChatGPT一つとっても、彼らと向き合えるときに僕らがどんな問いを投げかけたかによって変わって来るわけです。私たちが出した問いに対してChatGPTは忠実に答えを見つけ出してくるため、問いが間違っていたら全く意味がありません。つまり、ChatGPTを上手く使いこなせている人というのは、問いの立て方が上手な人です。さらに言うと、その問いの前提にある様々な前提条件や背景、例えばどういう目的で使いたいのかというプロトコルを事前にChatGPTに説明出来ている人です。使う側のスキルが求められているということです。ChatGPTが回答を導き出すために、問いを立て、課題を発見していく力は人間の側にしかないのです。そして、更にはそこから出て来た情報を元に、最終的にリスクを取って決断出来るのは人間の側にしかありません。ということは、テクノロジーの知識を持つこと、或いはその技術を持つことは勿論必要なことですが、それが「リスキリング」の全てではなく、実はその前提にある経営そのものの力、思考そのものの力、物事の課題は何なのか、どうやって解決するのか、どうやって決断するのか、或いはこのAIや人間とどうコミュニケーションしていくのかというビジネスとして当たり前の力が問われているということです。ところが、私たちがこれまで仕事をしてきた中で、社会人生活の中で、この部分を学んだことはあまりないのではないでしょうか。ここが勝ち負けを決める大きい差になる部分ではないかと思います。したがって、テクノロジーの時代が進んできたからこそ、使う側の力が大きな差になり、より求められていきます。
人間にしか出来ないスキルは何かという面も含めて学び直していかない限りは、本当に新しい産業や時代を創っていくために次のビジネス展開に向き合える人材にはなっていきません。テクノロジーがどんどん進化していくことに対しての恐れもあると思います。しかし、それを私達がきちんと学び、スキルを身に付けていくことで恐れも無くなっていきます。私たちはこのコンピュータたちとつきあっていかなければならないという現実に向き合っていくしかありません。従来は、責任感やミスをしないための注意深さ、誠実さが求められてきましたが2050年に向けて、問題発見力、予測する力、革新性、決定力が求められるようになります。テクノロジーを学ぶことは当然スキルとして必要ですが、それ以外にも本来ビジネスとして人間がやるべきことをどうやって耕していくのかがこれからの差になるリスキリングすべきスキルではないかと思います。
では、今日のまとめです。
「リスキリング」はテクノロジーやDXの世界の話だけではありません。やはりそれを使っていく人間がどうやってビジネスをしていくのか、その基礎力を鍛えていかない限りは実現できないと思います。その力を付けるために、やはり我々は逃げることなく自分自身が変わっていく、向き合っていく必要があります。