ここまで3回にわたり「リスキリング」をテーマにお話してきました。「学び直し」の中でも、特にスキルに特化した学び直しを指します。時代に合わせて求められる人材も変化していくため、国をあげて「リスキリング」によって必要な人材を育成していくことに力を入れています。特に、地方にこそそうした取り組みが必要であり、どんどん進歩していくテクノロジーを使いこなすためのビジネスの基本となるスキルの学び直しが必要というお話でした。今日は、そうしたスキルをどのように身に着けたらよいのかについてお話しします。
「学ぶ」と言って真っ先に思い浮かべる方法は、本を読んだり、動画を見たりする方法だと思います。ただ、ビジネスのゴールは何かという事を考えると、やはり実際に人を動かしていくことだと思います。つまり、「物を売る」というビジネスでは、相手の人が納得して購入のボタンをポチッと押してもらう必要がありますし、組織の中で考えても、何か自分の部下や上司が理解をして一緒に動いてくれない限りは、ビジネスのゴールには近づきません。
先週も触れましたが、AIについての話も含めて、ChatGPTなど機械(プログラム)を動かしているのは人間です。全てのビジネスには相手がいます。動画や本から学ぶことは当然知識を貯めていくためには重要なことですが、知識だけでは相手を動かすことはできません。そこには様々な機微があるわけです。そのためには、単なる「知識」から実際に相手を動かすことのできる「知恵」に変えていく必要があります。その方法として、実際に人と向き合い、自分以外の誰かと一緒に学ぶ、あるいは自分以外の誰かと激論する必要があります。そうすることで、「わかる」から「出来る」へ、単なる「知識」から「知恵」へと繋がっていきます。これは1人では出来ません。コミュニケーションの中で学んでいくしかありません。その仕組みをどうやって作っていくのかが非常に重要です。
では、これをどこでどうやって学んでいったらいいのでしょうか。従来は、人材育成となると会社の中で研修したり、あるいはOJTと言って仕事をしながら学んでもらったりするというのが一般的でした。しかし、そこにはリスクがあります。いつも仕事をしている人と向き合って勉強して、喧喧諤諤議論をして、関係性が悪くなると仕事がやりづらくなってしまったり、上下関係があると評価を気にして議論ができなかったりします。出来るだけリスクフリーな環境で行うためには、先日触れたデータの中にもあったように、「仕事の外に学ぶ場所を作る」以外では、本当の意味での学びは出来ません。どれだけ外に出られるかが大事ではないかと思います。中で学ぶとなると、どうしても会社の中でしか通用しない常識、前提がたくさんあります。しかし、外と向き合っていると「うちの会社の常識は外では非常識」というような違いに気付くわけです。そのギャップに気付いて初めて違うものをどうやって納得させるのか、動かすのかについて考えだします。まさに「無意識の隠れた前提」に気付くことに繋がると思います。また、今のビジネスはかけ算です。直線上に仕事があるのではなく、外にあるものをどうやってかけ算して新しい価値を生むかが大切なため、周りにどんな情報があるのか、世の中どう変化しているのかを知るためにも、やはり壺の外に出ないと見えてこないことがたくさんあります。したがって、他人のものさしにどれだけ触れられるかがやはり大事な成長の1つの鍵になります。「本を読む」「動画を見る」だけではなく、どれだけ外に出るチャンスを会社、あるいは上司が、あるいは自分自身の意識として作っていけるかが今問われています。もちろん自分で積極的に学びに行くことも大事ですが、会社がそういう機会を与えることも大切です。これは、特に地方の中小企業にとって、仕事外で学ぶように社員に伝えることは、勇気のいることです。仕事がまわらなくなってしまっては困ってしまいます。しかし、そこは腹をくくってやるしかない、そういう時代が来ているということです。なぜならば、企業は個人の集合体です。1人が見えている視野はそれほど大きくはありません。しかし、集合体になった瞬間にいろんな視野が入ってくるわけです。それがまさに企業の底力になってくるため、多様な情報を取り入れていくことが新しいビジネスに繋がるという覚悟と、そのための学ぶ時間を費やすという事に対しての理解が必要だと思います。そうした取り組みは結果的に企業に返ってきます。これがまさに投資です。今、人的資本・人的資源という話がありますが、まさにそこに対してどう投資をしていくのかというのは、お金だけではなく、実はどれだけ時間を提供できるかも非常に問われていることだと思います。こういうリスクフリーな会社の外の場所に社員をどんどん出していくということ、外に触れさせることこそがおそらく今求められている「ワークライフバランス」なのではないかと思います。
では、今日のまとめです。
「学ぶ」ということは、「使えるスキル」、「人を動かせるスキル」であるということがビジネスのゴールに繋がっていくと思います。そのため、リスキリングをしていく中では、「分かる」と「出来る」は違います。「知恵」と「知識」の違いがあります。どんどん外に出ていき、別のものさしに触れることを通じて学ぶことが本物の即戦力、ビジネスを変えていく力に繋がるのではないでしょうか。