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S2#16 性癖のパンドラの話


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消えぬ傷跡と最後のダンス


深夜、古びた小さな町の外れにあるダンスホール「エレイン・ホール」は不気味な沈黙に包まれていた。かつてはカップルたちの甘い夜を彩っていたこの場所も、今では13日の金曜日にだけ開かれる、呪われた場所として知られている。


アーニーはその噂を信じなかった。田舎町に移り住んでから退屈な日々を過ごしていた彼は、13日の金曜日の夜にホールを訪れ、何か面白いことでも起きないかと期待していた。


1    血の匂いと美しき出会い

アーニーがホールの扉を開けると、ほこりっぽい空気と古い音楽のメロディが迎えた。中には誰もいないように見えたが、中央のフロアで一人の女性が踊っていた。赤いドレスに身を包み、月明かりに照らされた彼女の姿は、この場違いな場所に天使が舞い降りたようだった。


「君、こんな夜に一人で?」

アーニーが声をかけると、女性は動きを止め、振り返った。その瞳には悲しみと不安が宿っていた。


「ここに来てはいけない…」彼女の声は震えていた。「今すぐ戻って。」


しかし、その言葉が終わる前にホールの扉が激しく閉じ、音楽が止まった。冷たい風が吹き抜け、どこからか笑い声が響いてきた。


2     呪われた夜の真実

彼女の名前はレナ。数十年前、彼女はこのホールで起きた悲劇の唯一の生き残りだったという。恋人との最後のダンスの夜、ホールは血の海に変わり、レナもまた呪いに囚われたのだ。


「私はここを去ることができない。そして、君も今夜は帰れない。」

彼女の言葉にアーニーは凍りついた。ドアは開かず、窓の外は闇しか見えない。


やがて音楽が再び鳴り響き、ホールには幻のダンサーたちが現れ始めた。血塗られた衣装、無表情の顔、彼らは次々とアーニーに近づいてきた。


3    愛と犠牲の選択

アーニーは逃げようとするが、足元から冷たい鎖が伸びてくるような感覚が襲う。その時、レナが彼の手を掴んだ。


「私が彼らを引きつける。君は出口を探して。」


レナの行動は命を懸けたものだった。幻のダンサーたちは彼女を囲むが、その瞬間、彼女の瞳に強い決意が宿る。


「この呪いを終わらせるには、私がダンスを踊りきるしかないの。」


アーニーは彼女を止めようとするが、レナの表情からは揺るぎない覚悟が感じられた。


4    最後のダンス

ホール全体が赤く染まり、レナはダンサーたちと踊り始めた。アーニーは隅でその光景を見守るしかなかった。


ダンスが進むにつれ、レナの体は徐々に透明になり始めた。そして最後のステップで、彼女はアーニーを振り返り、優しく微笑んだ。


「私の傷は癒えないけれど、君に出会えてよかった。」


その言葉と共に、レナは光の中に消えた。ホールの呪いもまた消え去り、静寂が戻った。


5    消えぬ傷跡

アーニーはホールを後にしたが、彼の心にはレナの笑顔が深く刻まれていた。誰にも語れない恐怖と愛の物語。


そして彼は誓った。彼女のように誰かを救うため、もう二度と逃げないと。




終章

翌年の13日の金曜日、ホールには再び一人の男が立っていた。アーニーだった。彼の瞳には決意の光が宿っていた

彼女をもう一度見つけるために。

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