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S2#23 エンプティーな話


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『ユータ、男になる日』


ユータは、男になりたかった。

いや、生物学的にはすでに男だったが、精神的な意味での「男」というやつには、まだ手が届いていなかった。


「お前、まだ未経験なん?」


ある日の飲み会で、親友のケンジにそう言われた瞬間、ユータの心には鋭い矢が突き刺さった。周囲の男たちが「いや〜、最初は緊張するよな!」とか「俺なんかむっちゃ痛かったわ!」と語り合う中、ユータはただ静かにジョッキのビールを見つめていた。


(まずい…このままでは俺のプライドが…!)


そこでユータは決意した。「俺も、男になるんだ」と。


運命の夜


数日後、ユータは意を決して、ある店の前に立っていた。

派手なネオン、甘く妖しい香り、そして店の前で客を呼び込む貫禄のあるおじさん――。


「お兄さん、初めて?大丈夫、優しくするよ♡」


ユータの心臓は爆発しそうだった。顔を真っ赤にしながら店内へと足を踏み入れる。シャンデリアが輝き、シルクのカーテンが揺れ、奥のソファには、猛者たちがワイングラスを傾けている。


案内された個室で待っていると、ついにその時が来た。


「はじめまして。俺、ゴンザブロウって言います。緊張しなくて大丈夫だよ?」


目の前には、ヒゲ面のゴツい男――ゴンザブロウが微笑んでいた。


(え、なんかめっちゃ…濃いんだけど!?)


ユータは急に自分が場違いな気がしてきた。


「じゃあ、始めようか」


ゴンザブロウが優しく手を伸ばす。


そして、伝説へ


「い、いたたたた!!!」

「ちょっと力抜いて!大丈夫だから!」

「無理無理無理!!絶対無理!!」

「大丈夫、大丈夫、リラックスして…」


ユータの脳内には、爆発音が鳴り響いていた。


(俺は…本当に…男になれるのか!?)


汗だくになりながら必死に耐えるユータ。ゴンザブロウは微笑んで、優しく囁く。


「ほら、もうちょっとだから…ね?」


そして――。


「――ぁあっ!」


その瞬間、ユータは確かに感じた。

世界が変わるのを。

自分の中で何かが弾け飛ぶのを。


こうして、ユータはついに「男」になったのだった。


エピローグ


翌日、ケンジに報告すると、彼は爆笑しながら肩を叩いた。


「お前、初めてがゴンザブロウって、おっさんすぎるやろ!!」


ユータは真っ赤になってビールを飲み干した。


「……もう二度とやらねぇ!!」


その夜、ユータの枕は、涙でしっとり濡れていた――。


(完)

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