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S2#31 偏見まみれな話


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『怒りの矛先、間違えてますよ?』



ラッキー君はコンビニ前でストローを噛みながら言った。

「さぁ今日も一日、不細工にぶち壊されたわ」


ドラゴニア君は缶コーヒーを開けると鼻で笑った。

「またブスか?お前の生活、ブスで構成されてるのか?」


「違ぇよ。朝の満員電車で、前に立ってた女の鼻の穴がデカすぎて。俺、それ見て一日テンション死んだんだよ。もう穴に吸われるかと思った」


「お前が見なきゃいいんだろ」


「見たくなくても目に入ってくるのよ。あれもう武器だろ。顔面生物兵器。整形って防災じゃね?」


ドラゴニア君は笑いながらも、顔が引きつっていた。


「俺も今日は地獄だったよ。昼休み、職場の派遣が俺の弁当見て『うわ、男のくせに手作りですかぁ?女子力~』とか言ってきてさ」


「うわ、それは刺すやつだ」


「だろ?で、そいつインスタで“#自炊男子尊い”とかタグつけてイケメンの弁当にはいいね押してんの。つまり俺は尊くないの」


「お前が尊くないのは元からじゃね?」


「お前にだけは言われたくねぇ」


ふたりとも目の下にクマ、口には悪意。

それでも日々を生きていた。


「でもなぁ、最近気づいたんだわ」

ラッキー君が煙草に火をつける。


「結局、可愛い子が笑ってるとイラッとするのは“幸せそうだから”で、ブスが笑ってるとムカつくのは“何か勘違いしてるから”なんだよな」


「人としての感情が腐ってるな。俺でも引くわ」


「お前も毒持ってんだろ、吐いてけよ」


ドラゴニア君はしばらく黙っていたが、やがて小さく呟いた。


「俺、昨日アイドルの推しが結婚して、祝福コメント送ったけど……内心、“こいつも裏でクソして寝てるだけの女か”って思ってた」


ラッキー君は爆笑した。


「お前もだいぶ病んでんな。もう人間やめよっか」


「いいね。全人類ブロック機能が欲しい」


「てか地球ごとミュートにしてぇわ」


笑ってんのか怒ってんのかもわからず、ふたりは残った毒を吐き合いながら、夜の闇に紛れていった。

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