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S2#6 電波の届かない世界の話


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「歯のない愛」


シゲルは、60代後半の独り身の男だった。彼の笑顔から歯は消え、何年も前に生活苦から歯医者に通うのをやめてしまった。そんなシゲルがある日、近所の商店街で偶然出会ったのが、美ちゃんだった。彼女はシゲルよりもずっと若く、明るくて、いつも笑顔で人を迎える小さなカフェを営んでいた。


最初はただの通りすがりだったが、美ちゃんの笑顔とその優しい声がシゲルの心に火を灯した。カフェに通うたびに、シゲルは彼女との会話を楽しみにするようになった。歯がなくても、彼女はシゲルの笑顔に何の違和感も抱かず、心からの親切をいつも示してくれた。次第に、シゲルは自分が美ちゃんに恋をしていることに気づく。


一方、美ちゃんもシゲルの優しさと静かな強さに心惹かれていく。彼女は、外見や年齢差に囚われず、純粋に彼の人間性を愛するようになっていた。カフェの常連たちも、二人の関係を温かく見守り、応援する。


だが、シゲルは自分のコンプレックスと向き合うことに苦しむ。「自分のような年老いた男が、美しい彼女を愛してもいいのだろうか?」と。歯がない自分を笑われることが怖く、素直に気持ちを伝える勇気を持てない。


ある日、シゲルはカフェに行かず、街を歩き続けた。そして、街角で見つけた古い歯医者の看板に立ち止まり、思い切って中に入る決心をする。自分を変えるためではなく、彼女への真剣な想いを伝えるための一歩として。


数週間後、シゲルはついに美ちゃんに告白する。歯のことも、年齢のことも、すべてを正直に話す。美ちゃんは微笑んで、「あなたの笑顔は、私にとって世界一素敵よ」と言って彼を抱きしめる。

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