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S2#7 3割の話


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「織姫への願い」


七夕の夜、アキラはまたしてもひとりだった。彼は32歳、仕事はなんとかこなしているが、女性との縁は皆無で、友人からは「しゃばい奴」とからかわれていた。しかし、彼は自分に嘘をつかず、いつも純粋で前向きだった。そんなアキラの唯一の楽しみは、毎年七夕の日に織姫へと短冊を捧げることだった。


「織姫さま、今年こそ僕に素敵な出会いをお願いします!」とアキラは心を込めて短冊に書き、街の大きな竹に飾りつけた。


その夜、奇妙な夢を見た。アキラの前に現れたのは、美しい織姫だった。彼女は微笑みながら、言葉をかけてくれた。「アキラさん、あなたの願いはいつも一途で純粋ね。でも、ただ待っているだけでは、星々はあなたに微笑んでくれないわ。」


目が覚めると、アキラはなんだか不思議な気持ちだった。「そうだ、僕も変わらないと…」と、彼は小さな一歩を踏み出す決意をする。


次の日、アキラは街中で偶然に古びた喫茶店を見つけた。興味本位で中に入ると、そこには優しそうな店主と、いつも笑顔を絶やさないウェイトレスの美咲がいた。彼女の笑顔は、どこかで見たような、夢の中の織姫を思い出させた。アキラは話しかける勇気を持とうと決めたが、言葉が出てこない。「しゃばいやつだ…」と自分を責めたが、美咲はただ優しく微笑んだ。


少しずつ、アキラは美咲との距離を縮め、彼女に心を開いていく。二人は何気ない日々の中でお互いを知り、アキラは自分の殻を破っていった。


七夕の日、美咲はそっとアキラに言った。「ねぇ、今年も短冊に願い事を書くの?」


アキラは恥ずかしそうに笑いながら言った。「もう願いは叶ったかもしれないな。」

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