666666RADIO

S3#13-密会の回-


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放送開始の赤いランプが点いたとき、スタジオにはいつもの三人分の空気がなかった。


「……静かすぎない?」ミキサーのノイズに紛れて、タカシがぼそっと言う。


「アイツがいないと、こんなもんだろ」ケンジはヘッドホンを少しずらしながら笑った。「あいつ、声デカいからな。存在がノイズみたいなもんだし」


本来なら三人で回しているこのラジオ。だが今日は一人が来れない。理由は「ちょっとした事情」とだけ共有されているが、詳細は誰も知らない。知らない、というより、聞かないようにしている。


「久しぶりだな、二人きりって」タカシが言う。


「高校の帰り道以来じゃない?」ケンジが軽く返す。「あの頃はもっとバカだったよな。今は…まあ、方向性が違うだけでバカだけど」


軽く笑いが起きる。でも、その笑いはどこか薄い。


沈黙が一瞬だけ流れる。ラジオ的には“事故”に近い長さだ。


「で、さ」タカシがマイクに少し近づく。「あいつ、何で来れないんだっけ?」


「“来れない”って言い方、便利だよな」ケンジが肩をすくめる。「死んでも来れないし、寝坊しても来れないし」


「いや縁起でもないこと言うなよ」


「でもさ、もし本当に死んでたらどうする?」ケンジは妙に落ち着いた声で続ける。「俺ら、普通に番組続けるのかな。“えー、今日は一人欠席です”って。理由は“永遠の欠席”です、って」


タカシは少し笑う。「それブラックすぎるだろ」


「ブラックっていうか、現実ってだいたいそうじゃん。誰かがいなくなっても、番組は続くし、電車も来るし、コンビニも開いてる」


「まあな…」


また少し沈黙。


今度はケンジが先に口を開いた。


「正直さ、ちょっと楽しんでるだろ?」「何を?」「二人きり。あいついないと、話しやすいって思ってるだろ」


タカシは一瞬言葉に詰まる。「……まあ、ちょっとは」


「俺も」ケンジはあっさり言う。「三人だとさ、誰か一人は“余り”になる瞬間あるじゃん。今日はそれがない」


「最低だな、お前」


「だろ?でも人間ってそんなもんだよ」ケンジは笑う。「だから安心しろ。あいつも今いない場所で、同じこと思ってるかもしれない。“あいつらいなくて楽だな”って」


「それもう、友情として終わってるだろ」


「いや逆だよ。そういうこと言える関係が一番長く続く」少し間を置いて、ケンジは付け足す。「多分な。実験したことないけど」


赤いランプはまだ点いている。


二人は顔を見合わせて、同時に小さく笑った。


「とりあえずさ」タカシがまとめに入る。「今日は二人でやるしかないし、適当にやるか」


「だな。最悪、あいつの悪口だけで30分いけるし」


「それ、本人来たらどうすんの?」


「その時は“生存確認おめでとうございます”って言うよ」


少しだけ、本当に楽しそうな笑い声がスタジオに響いた。


三人分の空気はまだ戻らない。でも二人分の空気は、思ったより悪くなかった。


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