今回はサステナビリティ経営を企業が実践する意義とそのメリットについて話していきます。前回はサステナビリティ経営とは、企業活動が社会・環境・経済に大きな影響を与える事を、これを企業が自覚して、これらの要素が持続可能なように配慮する事によって、企業経営の持続性を向上させる経営と定義しました。実際、このサステナビリティ経営は、2020年代または2010年代の後半から多くの企業で取り組まれ始めていますが、その企業の取り組みについて、近年様々な調査や研究の成果があがっています。これらの事例調査や研究を見る限り、やはりサステナビリティ経営に企業が取り組む事はメリットがあると指摘出来そうです。このメリット、いくつか指摘されていますが、主要なものをあげると次の4つになります。
まず1つは、リスクの削減になります。近年、社会や環境への配慮が不足した企業経営によってもたらさせる不祥事。例えば、生産過程における環境汚染や従業員への人権侵害等は数多く指摘されていると思います。サステナビリティ経営では、経営そのものに社会・環境・経済への配慮というものを組み込むため、リスクを減らす事が出来ます。実際にサステナビリティ経営を実践している企業を調べてみると、これらの企業では、経営戦略やマーケティング戦略を定める時や、企業の従業員の方の人事評価を行う際に社会・環境・経済の課題解決への貢献が評価ポイントとして盛り込まれている場合が多いです。つまり、企業が経済的利益を求める活動や行動と社会・環境・経済の課題解決に向けた行動が同時進行するような仕組みが整えられています。
1つ目はどちらかというと、企業のネガティブな要因を排除するという点でしたが、もう1つの方はむしろ、企業の売り上げにポジティブな影響を与える効果として、サステナビリティ経営に取り組む事が新しい市場や顧客の創造に繋がると言われています。実は、世界的経営の歴史を紐解いてみても、大ヒット商品や歴史的な経営戦略の成功の背景には、その企業がそれまで解決出来ていなかった社会問題を自社の製品やサービスによって解決したためにそれらが生まれたという例が非常に多くあります。例えば、少し古い話になりますが、かつて日本中で大ヒットし、富士重工業、スバルが自動車メーカーとしての地位の基盤を作ったスバル360という自動車があります。この自動車がここまで売れた背景には、実は、それまで一般市民が自分の所得で無理なく買える自動車が日本に存在しなかったという社会課題があり、これを解決出来る製品であったという事があります。つまり、誤解を恐れずに言えば、社会課題というのはひるがえせば高いニーズとも言えます。特に人が解決出来ていない問題であれば問題であるほど、大きな社会課題となっている場合が多いので、それはひるがえせば、誰も手をつけていないニーズとも解釈出来ます。そして、前回話したように、サステナビリティ経営では、世界や社会に対してすべき事をベースとして、企業に社会・環境・経済の持続性に貢献出来る事を探す事を非常に強く求めています。つまり、企業に社会課題の解決を通じた新事業の創出により積極的に取り組む事を促すため、サステナビリティ経営はおのずと新しい市場や顧客の獲得に繋がるということです。
そして3つ目は、組織の活性化というメリットです。この組織の活性化は、大きく分けて2つの方向性からもたらさせると言われています。まず、サステナビリティ経営では、従業員に対する様々な配慮、例えば、多様な従業員の特性に配慮した職場作りや社内コミュニケーションの透明性の確保、人事考課の公平性の担保の実践を企業に求めます。したがって、サステナビリティ経営は従業員の働きやすい職場、そして組織作りに貢献し、いたっては組織の活性化に寄与するという事が指摘されています。次に、自社事業の社会的な意義を向上させるサステナビリティ経営の実践は、社員1人1人の仕事の社会的意義を向上させるという側面をもちます。そして自社事業を通じて、社会課題の貢献に繋がっているという事を社員が知る事は、自分の仕事が社会における良い事の実践に繋がっているという認識を生み出し、仕事に対するモチベーションを上げる効果が指摘されています。つまり、サステナビリティ経営に取り組む事は、自社の組織の活性化にも繋がると言えます。
そして最後の4つ目は、投資家による評価の向上です。近年、サステナビリティ経営に取り組む企業は、一部の投資家からその社会的な意義だけではなくて、社会や環境への配慮不足を起因とした不祥事の発生リスクが低く、社会課題の解決を事業化する事による成長可能性が期待出来るという、まさに実利的な側面から投資対象として高い評価を受け始めています。サステナビリティ経営に取り組む事は、投資における高い評価を受けるという面においても有利となる可能性をもっていると言えます。
今日のまとめです。企業活動が、社会・環境・経済に大きな影響を与える事を自覚し、これらの要素が持続可能なように配慮する事によって企業経営の持続性を向上させるサステナビリティ経営。その実践は、企業のリスク低減や新規顧客の獲得、組織の活性化など様々なメリットをもたらす事が期待出来ます。次回は、その実践における課題についお話していきます。