市場の風を読む

生成AIに多額の資金が流入


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弊社欧州テーマリサーチ責任者のエド・スタンレー(Ed Stanley)が、ベンチャーキャピタルは暗号資産のスタートアップに慎重姿勢を取る一方で、生成AI関連への投資は増加の一途であることを説明します。

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----- トランスクリプト -----


「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

今回はプライベートマーケットから分かる画期的技術の実用性と投資可能性について、弊社欧州テーマリサーチ責任者のエド・スタンレー(Ed Stanley)が解説します。

このエピソードは9月3日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

弊社はこの3年間、既存の上場リーダー企業のディスラプトを目指す新興技術や企業の一歩先を行くために、ベンチャーキャピタルの資金調達を追跡してきました。プライベートグロースエクイティ市場は、まさにその定義通り、長期であり、したがって金利サイクルから非常に影響を受けやすいといえます。

資金調達が容易だった2021年と2022年に、ベンチャーキャピタルは1兆2,000億ドル近い資金を調達しました。これはそれ以前の10年間の合計額を上回る金額です。しかし、上がるものは往々にして下がるもので、ベンチャーキャピタルのグロース投資はピーク時から6割以上減少しました。金利が徐々に上昇し、5%を超えたためです。

したがって、弊社エコノミストが予想するように今後12カ月で金利が3.5%に低下すれば、M&AとIPOのボトルネックは解消するでしょう。そして、資本配置と資金調達環境も改善すると思われます。

しかし、現在の資金調達市場と、今後数カ月および数年にわたる回復は、インターネット時代になって以降のどの時期と比べても一段と不均衡であるように見えます。資本コストがかからなかった時代にはクリーンテックや医療イノベーションや電池のスタートアップ企業に数百億、数千億ドルの資金が大河のごとく流れ込みましたが、今ではごく小さな流れに細っています。それとは対照的に、AIのスタートアップにはベンチャーキャピタルが2024年に入って以降これまでに調達した合計資金の半分近くが流れ込んでいます。

AIと暗号資産のスタートアップほど投資優先度で明暗が分かれたものはないでしょう。ベンチャーキャピタルは過去10年間に790億ドルを費やして、非代替性トークン(NFT)からゲームまでに及ぶ暗号資産のキラーアプリ、つまり分散型金融アプリを見つけようとしてきました。わずか3年前には、ブロックチェーンアプリを構築するスタートアップはプロジェクトの資金調達と暗号資産の価格がほぼ1対1の関係でした。それが今では、主要な暗号資産の価格は2021年のピーク時から1割程度しか下がっていないにもかかわらず、ブロックチェーンのスタートアップの資金調達は75%も落ち込んでいます。

ブロックチェーンにはプロダクト・マーケット・フィットとリピートユーザーという問題があります。一方、生成AIにその問題はありません。どちらも消費者と企業の導入レベルは高く、しかも上昇しています。生成AIは弊社が追跡するユーザー指標のすべてで暗号資産をあっという間に追い越しました。そして資本の提供者も相応に対応しています。投資家は一斉にAIのスタートアップに視線を変えており、それが止む理由は見当たりません。

同じことが実物資産や上場企業でも起きています。例えば、同僚のStephen Byrdはここしばらく暗号資産マイナーに対し、手持ちのインフラをAI訓練用に用途変えした方が経済的に理に適いつつあると述べています。上場している暗号資産マイニング企業の多くは同じように考え、同じ結論に達しています。

ただし今は、上場企業にこのAIインフラ投資の投下資本利益率がどれくらいなのかという質問が寄せられているように、プライベートマーケットでも、AIのキラーアプリの発見と資金提供にかつてないほど集中している状態が、資金の有効な使い方なのか、それとも暗号資産ブームの二の舞なのか、難しい質問ですが問う必要があります。3000社あまりの生成AIスタートアップが資金調達を競う中で、どこに最大の価値が集まるのかはまだ不透明です。

ただ、過去を振り返るとアプリケーション階層が勝者となるものと思われます。しかし現時点では、弊社の分析によると、冪乗則(べきじょうそく)に従った3つの候補が予想されます。ひとつは半導体とデータセンターの効率性技術のブレイクスルーです。2つ目は基礎モデル構築企業への資金提供。3つ目は、アプリケーション階層に限定して、ヘルスケアのアプリケーションに最大のチャンスがあると見ています。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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市場の風を読むBy Morgan Stanley