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モルガン・スタンレーでは現在のところソフトランディングを予想していますが、投資家の皆様は方向転換の準備を整えておく必要があります。経済環境の変動の激しさを考慮すると、依然としてクオリティが最も確実なファクターであると弊社のCIO兼チーフ米国株式ストラテジストは述べています。
このエピソードを英語で聴く方はこちら。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回は、モルガン・スタンレーのCIO兼チーフ米国株式ストラテジストであるマイク・ウィルソンが、経済指標の不確実性が続いていること、そしてそれが市場に及ぼす影響について考察していきます。このエピソードは2024年6月10日にニューヨークで収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
過去数ヵ月間で、事前予想を下回る経済指標の発表が相次いでおり、経済成長は予想外に下振れしています。その一方で、インフレ率は上昇する可能性の方が高まってきました。これは、FRBにとって厳しい組み合わせといえます。景気拡大を支えることが合理的な状況であっても、まだ利下げを実施できないからです。
弊社が何ヵ月も論じてきたように、積極的な財政支出によって、主要な経済指標は表面上良好に見えています。しかし、残念ながら、インフレ率がFRBにとって依然として高すぎる水準にあるため、金利政策は多くの市場参加者にとってあまりにも引き締め的な状態が続いています。このような見方に反対する意見もありますが、いまだに大幅な逆イールドとなっているイールドカーブや、金利政策の適切な指標を考慮すれば、議論の余地はないと弊社は考えています。これに多くのモノやサービスの高騰が重なれば、経済活動や消費活動の大部分においてクラウディングアウトが起こることになります。弊社の見立てでは、この状況を最もよく示しているのは、長引いている小型株の低迷です。実際、先週の小型株の相対パフォーマンスは、サイクルの最低を更新しました。
さらに懸念されるのは、小型株が大型株よりも大きな金利感応度を示しており、しかも非対称な状態にあることです。金利上昇は小型株には明らかな逆風となりますが、金利が低下すればそれだけリターンが向上するという考えに対して弊社は懐疑的です。先週の市場はその好例といえます。金利が週前半に上昇し、週後半に下落しましたが、小型株はアンダーパフォームし続けました。
不透明なマクロ経済環境において、弊社がこうした論点をすべて踏まえた上で推奨しているのは、グロース銘柄とシクリカル銘柄の両方をバーベル型で保有しながら、ポートフォリオのクオリティを高く保つことです。そうすれば、ソフトランディングとノーランディングのどちらにも対応できます。また、平均以上の景気後退リスクがまだ残っているため、そのヘッジ手段として、ディフェンシブなエクスポージャーを多少保有することも合理的だと考えます。すでに述べたように、経済データが予想外に下振れする可能性を考慮すると、ポートフォリオのディフェンシブ銘柄をシクリカル銘柄よりも増やすべきだと弊社は考えています。この点に関して、弊社は生活必需品セクターと公益事業セクターを選好します。
予測不能なインフレ指標と雇用統計に対して市場が敏感に反応する状況においては、これらの発表で優位に立つことは非常に難しいといえます。特に、雇用統計に関しては、データ自体が大幅かつ継続的に修正されています。市場参加者の多くが非農業部門雇用者数に注目していますが、このデータは近年まれに見るほどの大幅な修正がありました。それに対し、家計調査は非農業部門雇用者数のデータよりも弱含んでおり、求人数は過去18ヵ月にわたり減少が続いています。弊社の経験に基づけば、このような乖離した労働市場の動きは、典型的な景気サイクル末期の現象です。この点も、ポートフォリオのクオリティを高く保ち、クオリティの低い銘柄にまで投資すべきではない理由の一つです。弊社は、FRBが意味のある利下げを開始するまでは、そのような銘柄にまで投資対象を広げることは持続可能な手法ではないと考えています。なお、意味のある利下げとは、今年についてすでに織り込まれている1回から2回の利下げではなく、数百bpの利下げを指しています。
最後までお聞きいただき、ありがとうございました。今回も「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)、お楽しみいただけたでしょうか。もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
モルガン・スタンレーでは現在のところソフトランディングを予想していますが、投資家の皆様は方向転換の準備を整えておく必要があります。経済環境の変動の激しさを考慮すると、依然としてクオリティが最も確実なファクターであると弊社のCIO兼チーフ米国株式ストラテジストは述べています。
このエピソードを英語で聴く方はこちら。
----- トランスクリプト -----
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回は、モルガン・スタンレーのCIO兼チーフ米国株式ストラテジストであるマイク・ウィルソンが、経済指標の不確実性が続いていること、そしてそれが市場に及ぼす影響について考察していきます。このエピソードは2024年6月10日にニューヨークで収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
過去数ヵ月間で、事前予想を下回る経済指標の発表が相次いでおり、経済成長は予想外に下振れしています。その一方で、インフレ率は上昇する可能性の方が高まってきました。これは、FRBにとって厳しい組み合わせといえます。景気拡大を支えることが合理的な状況であっても、まだ利下げを実施できないからです。
弊社が何ヵ月も論じてきたように、積極的な財政支出によって、主要な経済指標は表面上良好に見えています。しかし、残念ながら、インフレ率がFRBにとって依然として高すぎる水準にあるため、金利政策は多くの市場参加者にとってあまりにも引き締め的な状態が続いています。このような見方に反対する意見もありますが、いまだに大幅な逆イールドとなっているイールドカーブや、金利政策の適切な指標を考慮すれば、議論の余地はないと弊社は考えています。これに多くのモノやサービスの高騰が重なれば、経済活動や消費活動の大部分においてクラウディングアウトが起こることになります。弊社の見立てでは、この状況を最もよく示しているのは、長引いている小型株の低迷です。実際、先週の小型株の相対パフォーマンスは、サイクルの最低を更新しました。
さらに懸念されるのは、小型株が大型株よりも大きな金利感応度を示しており、しかも非対称な状態にあることです。金利上昇は小型株には明らかな逆風となりますが、金利が低下すればそれだけリターンが向上するという考えに対して弊社は懐疑的です。先週の市場はその好例といえます。金利が週前半に上昇し、週後半に下落しましたが、小型株はアンダーパフォームし続けました。
不透明なマクロ経済環境において、弊社がこうした論点をすべて踏まえた上で推奨しているのは、グロース銘柄とシクリカル銘柄の両方をバーベル型で保有しながら、ポートフォリオのクオリティを高く保つことです。そうすれば、ソフトランディングとノーランディングのどちらにも対応できます。また、平均以上の景気後退リスクがまだ残っているため、そのヘッジ手段として、ディフェンシブなエクスポージャーを多少保有することも合理的だと考えます。すでに述べたように、経済データが予想外に下振れする可能性を考慮すると、ポートフォリオのディフェンシブ銘柄をシクリカル銘柄よりも増やすべきだと弊社は考えています。この点に関して、弊社は生活必需品セクターと公益事業セクターを選好します。
予測不能なインフレ指標と雇用統計に対して市場が敏感に反応する状況においては、これらの発表で優位に立つことは非常に難しいといえます。特に、雇用統計に関しては、データ自体が大幅かつ継続的に修正されています。市場参加者の多くが非農業部門雇用者数に注目していますが、このデータは近年まれに見るほどの大幅な修正がありました。それに対し、家計調査は非農業部門雇用者数のデータよりも弱含んでおり、求人数は過去18ヵ月にわたり減少が続いています。弊社の経験に基づけば、このような乖離した労働市場の動きは、典型的な景気サイクル末期の現象です。この点も、ポートフォリオのクオリティを高く保ち、クオリティの低い銘柄にまで投資すべきではない理由の一つです。弊社は、FRBが意味のある利下げを開始するまでは、そのような銘柄にまで投資対象を広げることは持続可能な手法ではないと考えています。なお、意味のある利下げとは、今年についてすでに織り込まれている1回から2回の利下げではなく、数百bpの利下げを指しています。
最後までお聞きいただき、ありがとうございました。今回も「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)、お楽しみいただけたでしょうか。もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。