市場の風を読む

ソフトランディングを信じ続ける


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クレジットは中庸を好み、利下げの実施は、景気がソフトランディングに向かっているとのFRBの信念を示唆しています。弊社のチーフ債券ストラテジストは、市場はまだ経済指標の発表を注視する必要があると警告しています。

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----- トランスクリプト -----


「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

今回は、FRBが最近行なった50ベーシスポイントの利下げが、コーポレート・クレジット市場に及ぼすと見られる影響について、モルガン・スタンレーのチーフ債券ストラテジストのヴィッシー・ ティルパトゥール(Vishy Tirupattur)がお話します。

このエピソードは9月27日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

クレジット市場にとって、FRBがなぜ利下げを行なっているか理解することが、実は極めて重要です。通常の利下げサイクルと異なり、今回の利下げは、経済成長がまだ減速しているが、落ち込んではいない局面で行われています。通常、利下げは景気が既にリセッション入りしているか、リセッションに差し掛かっている時期に実施されます。今回はそのいずれでもありません。米国の第2四半期のGDPは3%のプラス成長となり、第3四半期は2%を優に超える軌道上にあります。

したがって、今回の利下げは景気を刺激する目的ではなく、インフレが沈静に向かって大きく前進したことを認め、政策を大幅に正常化するためのものです。ある意味でこれは、インフレの道筋に対するFRBの自信の表われでもあります。すなわち、現時点で利下げを行なわなければ、高水準の実質金利を通じて景気をさらに抑制することになります。今回の利下げが真に意味するものは、ソフトランディングの達成に対するFRBの確信の強まりです。また、利下げ幅を25ベーシスポイントではなく、50ベーシスポイントとしたことは、労働市場を初めとする経済指標が悪化した場合に、FRBには思い切った措置をとる意思があることを示しています。

年初から弊社は、バリュエーションがタイト化する中でも、コーポレート・クレジットおよび証券化クレジットを中心とするスプレッド商品全般に対して、かなり前向きなスタンスで臨んで来ました。弊社のスタンスは、たとえ景気が減速しても、大きく落ち込まない限り、クレジットはそれなりに順調なファンダメンタルズを維持するとの見解に基づいています。さらに、利下げによってクレジットのファンダメンタルズは改善すると弊社は考えています。これは、主として金利費用の上昇が企業と家計両方の重石となって、今回のサイクルにおける主なストレスになっているためです。これはクレジット市場がストレスを受けた最近の他の時期と対照的です。例えば、2008年~2009年には金融危機があり、2015年~2016年はエネルギー・セクターが逆風を受けました。そして、2020年は言うまでもなくコロナ禍に見舞われました。

これを最も良く説明できるのは、変動金利商品のレバレッジドローンでしょう。2022年にFRBが金融引き締めを開始すると、レバレッジドローンの借り手のインタレストカバレッジレシオに対する圧力が強まりました。これが、格下げやローンのデフォルトの増加につながりました。利上げが終了すると、インタレストカバレッジレシオは下げ止まり、格下げやデフォルトのペースが減速しました。そして現在は、この先、利下げが行われ、ドット予測は年内と来年に150ベーシスポイントの利下げが行われると示唆していることから、インタレストカバレッジレシオへの圧力は、今後緩和すると見られ、景気がソフトランディングの軌道を維持すれば、さらに緩むでしょう。

これは、現在のスプレッドはタイトですが、利下げによってファンダメンタルズがさらに改善する可能性があることを示唆しています。このため、スプレッドは現在の水準前後にとどまるか、さらに若干タイト化する可能性があると見られます。結局、前回FRBがソフトランディングを実現した1990年代半ばを思い起こすと、投資適格社債のスプレッドは、現在より30ベーシスポイント前後タイトな水準でした。

あくまでも「仮定」ですが、重要な点があります。弊社が予想するソフトランディングが実現しなかった場合、弊社が確信しているスプレッド商品の評価が誤っていたことになります。景気の着陸における課題は常に、実際に着陸するまで見通しに確信を持てない点にあります。それまでは、発表される経済指標を注視し、ソフトランディングとハードランディングのどちらに向かっているのか仮説を立て続けるのです。

こうした背景から、これから発表される経済指標は、今後のクレジットスプレッドの軌道に対する両面のリスクとなります。今後発表されるデータが低調な場合、なかでも雇用統計が弱い場合は特に、ソフトランディングの見込みが後退し、スプレッドが拡大すると見られます。しかし、経済指標が堅調なら、スプレッドは現在のタイトな水準からさらに縮小する可能性があります。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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市場の風を読むBy Morgan Stanley