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米政権が発表した関税政策に対する当初の反応は治まり、現在市場は落ち着きを見せています。今回は、これが逆風に変わる可能性がまだ残っていることをコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ, 現在、市場は落ち着きを見せていますが、これが逆風に変わる可能性がまだ残っていることをコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。
このエピソードは5月9日 にロンドンにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
市場では先の乱高下が落ち着き、現在は4月2日以降の損失をほぼ取り戻した形です。ではこれで終わりなのでしょうか。発表された関税政策に対する反応とポジション調整は終わったようですが、実体経済に影響が出るのはこれからです。気象で例えれば、今は台風の目の中にいるだけかもしれないと弊社は考えています。
関税に対する当初の反応は終わりかけているかもしれませんが、我々は悪天候となる可能性のある具体的な動きに注目しています。
ひとつはFRBです。弊社エコノミストは、関税によってインフレ率が高止まりすると予想し、年内の利下げはないと引き続き見ています。しかし、市場はより多くの対応を期待しています。クレジット市場が成長鈍化とFRBによる支援の欠如の両方に直面する事態は我々が最も懸念するシナリオのひとつです。
2番目は経済指標です。年明け以来これまでのところ、消費者と企業の期待を測る指標は総じて弱く、その一方で経済活動を示す指標は堅調な傾向です。我々は、期待が先行する傾向があるという証左がこれまでにも多数あったと考えており、それゆえに実際の経済活動が弱まり始めることを懸念しています。関税導入後の期間の経済指標が出始めるためです。
このため弊社は出荷やトラック輸送といった指標を注視しています。これらは実際の影響をより正確に映し出す可能性があるためです。経済指標はこれまで持ち応えているとはいえ、我々が懸念する最大の理由はやはり、関税の影響が現れるまでには一般的に時間がかかることです。弊社エコノミストが述べているように、歴史的に見て、関税が実際に物価を押し上げるまでには2、3カ月、成長率が低下するまでには2、3四半期かかります。つまり、関税の影響という嵐はまだ過ぎ去っていない可能性があります。
インフレに対する弊社の見方もこれと同様です。インフレを楽観し、したがってFRBによる利下げを期待する人々は、直近のコアインフレ率は概して良好だと主張しています。しかし、弊社エコノミストは関税による物価への影響はまだ公式なデータに反映されていないだけだと懸念を強めており、理論的に関税の影響を最も大きく受けるはずの財などのコアインフレ率にほとんど変化がみられないことを強調しています。つまり、我々の見るところ、FRBが注目している基礎的な指標に影響が現れるのはこれからだといえます。
米国の関税政策の発表に対する当初の驚きはすでに過ぎました。状況は落ち着いたように見えます。そして、最近の経済指標は比較的堅調です。これは単純に米国経済の底堅さを示しているというのがひとつのシナリオです。しかし、この関税政策に対する驚きと、それによる経済への最終的な影響には時間差があるというのがもうひとつの解釈です。我々はこの影響が実際に生じることを懸念しており、そのため成長率が低下し、インフレ率が上昇し、FRBによる利下げが市場のコンセンサスよりも後ずれすると予想しています。
クレジットスプレッドが平均を下回っている現在、忍耐が必要でしょう。こうしたスプレッド水準を前提とした予想が、市場の混乱につながる可能性があります。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
米政権が発表した関税政策に対する当初の反応は治まり、現在市場は落ち着きを見せています。今回は、これが逆風に変わる可能性がまだ残っていることをコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ, 現在、市場は落ち着きを見せていますが、これが逆風に変わる可能性がまだ残っていることをコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが解説します。
このエピソードは5月9日 にロンドンにて収録されたものです。
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市場では先の乱高下が落ち着き、現在は4月2日以降の損失をほぼ取り戻した形です。ではこれで終わりなのでしょうか。発表された関税政策に対する反応とポジション調整は終わったようですが、実体経済に影響が出るのはこれからです。気象で例えれば、今は台風の目の中にいるだけかもしれないと弊社は考えています。
関税に対する当初の反応は終わりかけているかもしれませんが、我々は悪天候となる可能性のある具体的な動きに注目しています。
ひとつはFRBです。弊社エコノミストは、関税によってインフレ率が高止まりすると予想し、年内の利下げはないと引き続き見ています。しかし、市場はより多くの対応を期待しています。クレジット市場が成長鈍化とFRBによる支援の欠如の両方に直面する事態は我々が最も懸念するシナリオのひとつです。
2番目は経済指標です。年明け以来これまでのところ、消費者と企業の期待を測る指標は総じて弱く、その一方で経済活動を示す指標は堅調な傾向です。我々は、期待が先行する傾向があるという証左がこれまでにも多数あったと考えており、それゆえに実際の経済活動が弱まり始めることを懸念しています。関税導入後の期間の経済指標が出始めるためです。
このため弊社は出荷やトラック輸送といった指標を注視しています。これらは実際の影響をより正確に映し出す可能性があるためです。経済指標はこれまで持ち応えているとはいえ、我々が懸念する最大の理由はやはり、関税の影響が現れるまでには一般的に時間がかかることです。弊社エコノミストが述べているように、歴史的に見て、関税が実際に物価を押し上げるまでには2、3カ月、成長率が低下するまでには2、3四半期かかります。つまり、関税の影響という嵐はまだ過ぎ去っていない可能性があります。
インフレに対する弊社の見方もこれと同様です。インフレを楽観し、したがってFRBによる利下げを期待する人々は、直近のコアインフレ率は概して良好だと主張しています。しかし、弊社エコノミストは関税による物価への影響はまだ公式なデータに反映されていないだけだと懸念を強めており、理論的に関税の影響を最も大きく受けるはずの財などのコアインフレ率にほとんど変化がみられないことを強調しています。つまり、我々の見るところ、FRBが注目している基礎的な指標に影響が現れるのはこれからだといえます。
米国の関税政策の発表に対する当初の驚きはすでに過ぎました。状況は落ち着いたように見えます。そして、最近の経済指標は比較的堅調です。これは単純に米国経済の底堅さを示しているというのがひとつのシナリオです。しかし、この関税政策に対する驚きと、それによる経済への最終的な影響には時間差があるというのがもうひとつの解釈です。我々はこの影響が実際に生じることを懸念しており、そのため成長率が低下し、インフレ率が上昇し、FRBによる利下げが市場のコンセンサスよりも後ずれすると予想しています。
クレジットスプレッドが平均を下回っている現在、忍耐が必要でしょう。こうしたスプレッド水準を前提とした予想が、市場の混乱につながる可能性があります。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。