外回りにいってきます景気良く、元気な声でオフィスを後にする。いってらっしゃいそれに呼応して、あちこちから返ってきた山彦を背に受けて。8月。暑い盛り。スーツを着ている、ただそれだけでおおいに汗をかく。目的地にたどり着く。時間は予定の10分前。丁度いい時間だ。受け付けにたどり着くと開口一番、今日一番の笑顔で告げた。「3時間パックでお願いします」ネットカフェはとても涼しく好環境。全く縁の無かったジャンルの漫画を手に取り、あくせく働いている同僚を他所に、アイスコーヒーを啜る至福のひととき。漫画は序盤のクライマックスを迎えている。王道の使い古された内容ながらも、ツボを丁寧に抑えている良作だ。良いところで横槍が入った。番号は自社の営業部。 「おい、進捗はどうなってる?」「あ、課長。いま確かな手応えを感じている所です」「前もそんなこと言ってて、成約とれなかったじゃねえか」「いえいえ、今回は当たりですね。心が熱くなってくるのがわかります」「最近のお前はろくに数字取れてないからな、近日中に何か結果をだせよ」 電話が一方的に切れた。今日明日くらいに報告できることがなければ大目玉だろう。急いでクライアントのもとに向かわなくては・・・と、思いつつも。ページをめくる手は止まらないのだった。