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2025年4月27日 復活節2主日
説教題:夕があり、朝がある
聖書: 創世記 1:6–19、ローマの信徒への手紙 8:18–30、詩編 148、ヨハネによる福音書 11:38–44
説教者:稲葉基嗣
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創世記1章は古代イスラエルの人々がバビロニアへ強制的に連れて来られた時、彼らがバビロニアの文化に触れたことに大きな影響を受けています。バビロニアで人気の物語の一つに、バビロニアの天地創造の物語がありました。バビロニアの創造物語は、神々の戦いの中で死んだ、神のなきがらを用いて、この世界が造られたと血みどろなイメージを伝えます。バビロニアでこの物語と出会い、耳にした時、古代イスラエルの人たちは一体どのようなことを感じたでしょうか。この世界を造った神を信じる彼らは、バビロニアの創造物語が伝えるこの世界の成り立ちに同意しませんでした。「悪と見なされた神のなきがらで包まれている問題だらけの世界として、この世界が本来造られたわけないじゃないか。私たちの信じる神は、この世界を祝福し、良いものとして創造されたんだ」。創世記の創造物語から、古代イスラエルの人々のそのような声が聞こえてきます。けれどもこの物語は、バビロニア文化に対抗する形で、古代イスラエルの人たちが自分たちの信仰を表明することが第一の目的ではありません。むしろ、故郷から強制的に引き離された人たちや、故郷の町や神殿が破壊され、蹂躙されてしまった人たち、友人や家族を奪われ、失望の中にいる人たちに、希望を与えるための物語でした。私たちは悲しみや苦しみの中にある時、時間が止まり、自分だけが取り残されているような感覚を覚えます。捕囚の時に味わった、過去の辛い経験を何度も思い出し、時間が一向に進まない。そんな彼らに向かって、この物語は、ゆっくりと、時間が流れ出したことを伝えます。「夕があり、朝があった」と、何度も繰り返し、時間が経過していることを伝えます。その時間の流れの中で、この世界を創造した神が働いてくださっています。神は、この世界の混沌の中に働きかけ、暗闇に光をもたらし、命のないところに、命をもたらしてくださっています。神が祝福し、良いと宣言しておられる世界の中に、神の時の中に、ただ身を置き、神の働きを見つめなさい、と創世記の物語はそのはじめに伝えます。その瞬間、瞬間を神が祝福し、混沌としたところに秩序をもたらしてくださいます。私たちが希望を持てず、無感覚になり、良い変化を望めないような場所に、神は共にいてくださり、命への道を開いてくださっています。夕があり、朝がある。その先に訪れるものは、神のもとにある安息です。神のもとで安息する、天の御国に私たちがたどり着く、その日に向かって、すべてのことのうちに神が働き、神の御手のうちに時は流れていきます。
By 小山ナザレン教会2025年4月27日 復活節2主日
説教題:夕があり、朝がある
聖書: 創世記 1:6–19、ローマの信徒への手紙 8:18–30、詩編 148、ヨハネによる福音書 11:38–44
説教者:稲葉基嗣
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創世記1章は古代イスラエルの人々がバビロニアへ強制的に連れて来られた時、彼らがバビロニアの文化に触れたことに大きな影響を受けています。バビロニアで人気の物語の一つに、バビロニアの天地創造の物語がありました。バビロニアの創造物語は、神々の戦いの中で死んだ、神のなきがらを用いて、この世界が造られたと血みどろなイメージを伝えます。バビロニアでこの物語と出会い、耳にした時、古代イスラエルの人たちは一体どのようなことを感じたでしょうか。この世界を造った神を信じる彼らは、バビロニアの創造物語が伝えるこの世界の成り立ちに同意しませんでした。「悪と見なされた神のなきがらで包まれている問題だらけの世界として、この世界が本来造られたわけないじゃないか。私たちの信じる神は、この世界を祝福し、良いものとして創造されたんだ」。創世記の創造物語から、古代イスラエルの人々のそのような声が聞こえてきます。けれどもこの物語は、バビロニア文化に対抗する形で、古代イスラエルの人たちが自分たちの信仰を表明することが第一の目的ではありません。むしろ、故郷から強制的に引き離された人たちや、故郷の町や神殿が破壊され、蹂躙されてしまった人たち、友人や家族を奪われ、失望の中にいる人たちに、希望を与えるための物語でした。私たちは悲しみや苦しみの中にある時、時間が止まり、自分だけが取り残されているような感覚を覚えます。捕囚の時に味わった、過去の辛い経験を何度も思い出し、時間が一向に進まない。そんな彼らに向かって、この物語は、ゆっくりと、時間が流れ出したことを伝えます。「夕があり、朝があった」と、何度も繰り返し、時間が経過していることを伝えます。その時間の流れの中で、この世界を創造した神が働いてくださっています。神は、この世界の混沌の中に働きかけ、暗闇に光をもたらし、命のないところに、命をもたらしてくださっています。神が祝福し、良いと宣言しておられる世界の中に、神の時の中に、ただ身を置き、神の働きを見つめなさい、と創世記の物語はそのはじめに伝えます。その瞬間、瞬間を神が祝福し、混沌としたところに秩序をもたらしてくださいます。私たちが希望を持てず、無感覚になり、良い変化を望めないような場所に、神は共にいてくださり、命への道を開いてくださっています。夕があり、朝がある。その先に訪れるものは、神のもとにある安息です。神のもとで安息する、天の御国に私たちがたどり着く、その日に向かって、すべてのことのうちに神が働き、神の御手のうちに時は流れていきます。