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「心と脳の帳尻」第五回<主観的評価> デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より


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あなたの性格を占います。あなたは他者から好かれたい、称賛されたいと思っていますが、自分自身に対しては批判的になりがちですね。性格的な弱点がありますが、たいていはそれをうまく補っているようです。また、充分に活用されていない大きな能力を眠らせていますね。ときに自分が正しい決断を下したか悩むことがあるようです。ある程度の変化や彩りは好ましいと考え、規則や制限に囲まれていると不安に感じることもあります。自分の頭で考え、充分な証拠が無ければ人の話を鵜吞みにしませんが、自分をさらけ出すのは賢明でないと気づいていますね。外交的で愛想よく社交的に振る舞うこともできる一方、内向的で心配性で引っ込み思案になる時もあるようです。
さて、当たっていたでしょうか。これは、1948年にバートラム・R・フォアラーが実験に使った文章です。学生たちに自分の性格診断としてこれを読ませ点数をつけさせたところ、平均して85点という好成績を得ました。フォアラーが実験用に星占いの言葉を集めて適当に作ったこの文章は、どんな人が読んでも自分の性格として読めてしまったわけです。星占いや血液型、姓名判断、数秘術、タロットカードの予言は、なぜあんなに当たるのか。その理由を心理学では、上記の実験にちなんで呼ばれるフォアラー効果で説明します。つまり、ほぼ誰にでも当てはまりそうなあいまいなことを、この自分だけに該当することとして説明されると、人は信じてしまうということです。
誰しも自分には特有の何かがあると思いこみたい気持ちを抱えていますが、同時に自分で思う以上に人は似ています。同じ種の遺伝子で脳が作られ、その脳が心を生み、その心でものを考えます。文化的な違いはあるし、環境が人格を形成するにしても、深いところではクローンのように同じなのです。あいまいな内容でも、それが自分だけに向けられていると思うと、その内容と自分の知る自分についての情報を一致させるよう努めるわけです。これを心理学では主観的評価と呼びます。
心理学者レイ・ハイマンは若い頃、手相の占い師をしていました。彼の占いはよく当たると評判でした。相手を見て手がかりを探し、焦点を絞ってその人の魂を見抜く強力な洞察に至るのが彼のやり方でした。ところがある時、手相に表れたことと全く反対のことを、いつもの説得力ある口ぶりで話したところ、人々はいつもと同じように彼の能力に驚嘆したのでした。内容がどんなものであっても、自分と一致させることができてしまったようです。
この後、ハイマンは占いや霊能力を疑う懐疑論の著名な心理学者になりました。
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考える塾 in TAIPEIBy Takashi Jome


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