澄んだ青を基調とした秋の星空、その下で対比的な鮮やかな黄色い光が印象的なゴッホのカフェテラスを描いた著名な絵がありますよね。その暖かい照明に包まれているテラスにはどうやら数名の客が座っているようです。夜ですからたぶん一日中仕事したり買い物してきた人がひとやすみしています。癒しのひとときです。この曲はそういう雰囲気です。しかし想像してみてください。彼らはこのあとラッシュの電車の中で立って数十分かけて自宅の最寄り駅まで戻らなくてはいけません。さらにそこからマイホームまでたぶん13分くらい歩かなくてはいけません。なので彼らはだんだん帰るのがめんどくさくなってきます。もうしばらくここにいようか。もうここで夕食を食べよう。パスタにしようかサンドイッチにしようか。もう両方食べよう。あとケーキも食べよう。ふう、ごちそうさまでした。食べたら眠くなって来たし、今日はもう漫画喫茶に泊まろう。いや、でも、それもそれで疲れるしな。どうしようやっぱ帰ろうか。おそらくこういう葛藤を当時35歳くらいのゴッホ氏は見事に表現していると思われます。浮世絵を収集するくらいの日本通ですから、漫画喫茶も知っていたかもしれません。