余録 2021.12.9(木)
マグロは縄文人も食べていたという。万葉集にはその古名「しび」の漁に材をとった歌がある。そんな古くからの食材だが、江戸時代前期には「下魚なり。賞(しょう)翫(がん)(味わうこと)に用いず」とさげすまれた。
一つには古名が「死日」に通じて不吉なのが武家に嫌われたらしい。だが江戸時代も後期の本ではこうなっている。「昔は食べたのを人に語るのも耳のそばでひそかに話したが、今は身分の高い家の料理にまで出るのがおもしろい」。
マグロ人気盛り上がりの大きなきっかけは文化年間の関東で連日1万匹が水揚げされた大漁という。今一つは関東風のしょうゆの普及とすしの人気があった(世界大博物図鑑)。今日にいたるマグロ食文化が作られたこの時期である。
近海をふくむ太平洋のクロマグロは今や人気の高級すしねただが、その漁獲枠(大型魚)が来年は15%増えるという。資源管理のための国際的な漁獲枠導入以来初めての増枠で、国内のクロマグロの値下がりにつながる可能性がある。
問題の資源量は一時1・1万トンまで落ち込んだのが3年前には2・8万トンに回復し、増加傾向が続いている。話題を呼んだ絶滅危惧種指定も今年9月には準絶滅危惧へと引き下げられ、資源管理の努力がひとまず実を結んだかたちだ。
大西洋の漁獲枠増もあり、クロマグロを「賞翫」できる機会は少しは増えるのだろうか。ただし安心も...