作曲者千原英喜氏は、この組曲について、「賢治の世界と対話しながらの創作の日々、書き留められて行くメロディーやハーモニーのひとつひとつに喜びを感じながら、至福の時を過ごした。」と書いておられます。
そして、「告別(1)」「告別(2)」「野の師父」と続く組曲の終曲、「雨ニモマケズ」について千原氏は、「詩の冒頭 “雨ニモマケズ、風ニモマケズ” にヴァイタリティを感じてはならないと人は言うかもしれない。しかし私には雨風の中へ勇猛果敢に飛び出し行く賢治の姿が見えるのだ。東に西に人々を励まし歩く声が聞こえて来るのだ。彼の一生を顧みて、つねに企画し、挫折し、また新たに物事をおこす前向きなエネルギーに心打たれる。私は賢治の魂にエールを送ろう。哀憐の調べではなく、勇気奮い立つ響きで彼を讃えよう。そして賢治とともに私は颯爽と山野をかけめぐるのだ。Alla Marcia―行進曲風に、活き活きと、アッコード(和弦)に力漲らせて。曲は今を生きる皆への応援歌、命の讃歌だ。」と記します。
勇壮なピアノのコードで刻まれる合唱曲です。声のパートは、ソプラノを初音ミク、アルトをMeiko、テノールとバスをKaitoが担当しています。
<歌詞>
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ