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日本とフランスの政治動向が、国債市場にさらなるボラティリティをもたらしています。グローバル・エコノミストのアルニマ・シンハが、投資家が注視すべきリスクについて解説します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は、グローバル・エコノミストのアルニマ・シンハが、世界各国の国債の見通しや選挙について解説します。
このエピソードは10月15日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
先週、国債と財政の見通しの悪化についてレポートを出しましたが、まさにぴったりのタイミングで現実がシナリオ通りになりました。日本の選挙とフランスの政治的混乱を受け、長期金利が反応し、財政見通しが政治的な議論の一部となりました。市場は現在おおむね安定しましたが、こうしたボラティリティゆえに、債務と財政の見通しというテーマは引き続き注目されるでしょう。
日本では、与党・自由民主党(LDP)が高市早苗氏を新しい党首に選出し、市場にとってはやや意外な結果となりました。高市氏の選出は、1885年に内閣制度が確立されて以来、初の女性首相誕生への道を開くものです。
しかし、そうした結果が確定したわけではありません。最近の報道によると、最終決定は数週間後になる見通しです。日本の戦後政治におけるこの画期的な動きは、いくつかの点で日本の政治経済における変化の波をさらに揺るぎないものにしています。市場は、高市氏が日本のリフレトレードをさらに推進し、名目成長の回復を後押しすると見込んでいます。
東京市場が再開すると、長期金利は14ベーシスポイント上昇し、日本のイールドカーブは急激にスティープ化しました。これは、財政懸念の高まりと選挙前のフラットニング・ポジションの巻き戻しによるものです。具体的には、インフレ救済措置、経済安全保障やサプライチェーンへの投資拡大、食料安全保障へのさらなる取り組みといった、より積極的な財政政策への期待が高まっているようです。
弊社のストラテジストは恩恵を受ける分野として、ハイテク輸出企業や防衛・安全保障関連、インフラ・エネルギー企業などを挙げています。資本がこれらの分野に向かう可能性が高いからです。ただし、明確な立法の成熟度が欠けているため、財政政策の抜本的な転換は難しい可能性があるとエコノミストは警告しています。
一方、金融政策への影響は限定的と見ています。高市早苗氏は日銀の植田総裁の慎重な姿勢に強く反対はしていないため、目先の利上げ期待は低下しているようです。しかし、特に円安が進めば、年内の利上げの可能性は消えていないことに注意が必要です。
経済的には、弊社の基本シナリオは選挙結果によって裏付けられました。近い将来、日銀が利上げを行うとは予想していませんでした。実際、市場は次回会合での利上げ期待を織り込まなくなっています。
フランスでも、弊社が債務持続可能性に関する分析レポートを発行して以降、長期金利が政治情勢の変化に反応しました。ルコルニュ首相は、市場が予想していたよりもはるかに早い時期に辞任し、しかも在任期間はわずか数週間でした。
現在の議会では依然として過半数議席を持つ勢力はなく、膠着状態が続いています。数週間から数ヶ月以内に解散総選挙が行われる可能性も消えていません。拡大する財政赤字という動く標的に対し、財政健全化をどう進めるかについて意見が割れており、これが政治的不確実性の根本的原因となっています。
フランスの財政健全化の遅れは、長年議論されてきたテーマです。ECBは、混乱につながるOATスプレッドの拡大を阻止するためにTPIという暗黙のバックストップを提供していますが、弊社の欧州エコノミストはTPIが発動される可能性は低いと見ています。フランスの財政持続可能性への懸念がスプレッド拡大の主因であり、これはファンダメンタルズを反映していると考えられるからです。
弊社のかなり機械的な債務予測では、市場が最終的に何が持続可能で、何が持続不可能かを決定すると強調しました。ここでお話しした政治的イベントは、注視すべきカタリストです。
今のところリスクは抑えられていますが、油断はいつでも高くつく可能性があるという明確なメッセージを伝えたいと思います。債務と財政のファンダメンタルズが悪化する中で、今後もリスクが増えると考えています。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
By Morgan Stanley日本とフランスの政治動向が、国債市場にさらなるボラティリティをもたらしています。グローバル・エコノミストのアルニマ・シンハが、投資家が注視すべきリスクについて解説します。
このエピソードを英語で聴く。
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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は、グローバル・エコノミストのアルニマ・シンハが、世界各国の国債の見通しや選挙について解説します。
このエピソードは10月15日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
先週、国債と財政の見通しの悪化についてレポートを出しましたが、まさにぴったりのタイミングで現実がシナリオ通りになりました。日本の選挙とフランスの政治的混乱を受け、長期金利が反応し、財政見通しが政治的な議論の一部となりました。市場は現在おおむね安定しましたが、こうしたボラティリティゆえに、債務と財政の見通しというテーマは引き続き注目されるでしょう。
日本では、与党・自由民主党(LDP)が高市早苗氏を新しい党首に選出し、市場にとってはやや意外な結果となりました。高市氏の選出は、1885年に内閣制度が確立されて以来、初の女性首相誕生への道を開くものです。
しかし、そうした結果が確定したわけではありません。最近の報道によると、最終決定は数週間後になる見通しです。日本の戦後政治におけるこの画期的な動きは、いくつかの点で日本の政治経済における変化の波をさらに揺るぎないものにしています。市場は、高市氏が日本のリフレトレードをさらに推進し、名目成長の回復を後押しすると見込んでいます。
東京市場が再開すると、長期金利は14ベーシスポイント上昇し、日本のイールドカーブは急激にスティープ化しました。これは、財政懸念の高まりと選挙前のフラットニング・ポジションの巻き戻しによるものです。具体的には、インフレ救済措置、経済安全保障やサプライチェーンへの投資拡大、食料安全保障へのさらなる取り組みといった、より積極的な財政政策への期待が高まっているようです。
弊社のストラテジストは恩恵を受ける分野として、ハイテク輸出企業や防衛・安全保障関連、インフラ・エネルギー企業などを挙げています。資本がこれらの分野に向かう可能性が高いからです。ただし、明確な立法の成熟度が欠けているため、財政政策の抜本的な転換は難しい可能性があるとエコノミストは警告しています。
一方、金融政策への影響は限定的と見ています。高市早苗氏は日銀の植田総裁の慎重な姿勢に強く反対はしていないため、目先の利上げ期待は低下しているようです。しかし、特に円安が進めば、年内の利上げの可能性は消えていないことに注意が必要です。
経済的には、弊社の基本シナリオは選挙結果によって裏付けられました。近い将来、日銀が利上げを行うとは予想していませんでした。実際、市場は次回会合での利上げ期待を織り込まなくなっています。
フランスでも、弊社が債務持続可能性に関する分析レポートを発行して以降、長期金利が政治情勢の変化に反応しました。ルコルニュ首相は、市場が予想していたよりもはるかに早い時期に辞任し、しかも在任期間はわずか数週間でした。
現在の議会では依然として過半数議席を持つ勢力はなく、膠着状態が続いています。数週間から数ヶ月以内に解散総選挙が行われる可能性も消えていません。拡大する財政赤字という動く標的に対し、財政健全化をどう進めるかについて意見が割れており、これが政治的不確実性の根本的原因となっています。
フランスの財政健全化の遅れは、長年議論されてきたテーマです。ECBは、混乱につながるOATスプレッドの拡大を阻止するためにTPIという暗黙のバックストップを提供していますが、弊社の欧州エコノミストはTPIが発動される可能性は低いと見ています。フランスの財政持続可能性への懸念がスプレッド拡大の主因であり、これはファンダメンタルズを反映していると考えられるからです。
弊社のかなり機械的な債務予測では、市場が最終的に何が持続可能で、何が持続不可能かを決定すると強調しました。ここでお話しした政治的イベントは、注視すべきカタリストです。
今のところリスクは抑えられていますが、油断はいつでも高くつく可能性があるという明確なメッセージを伝えたいと思います。債務と財政のファンダメンタルズが悪化する中で、今後もリスクが増えると考えています。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。