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株式相場はこのところ圧力にさらされているものの、企業業績と人工知能AIの影響は多くの投資家の認識よりも強い――弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンはそう指摘します。
このエピソードを英語で聴く。
トランスクリプト
市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
Today’s episode features Mike Wilson, Morgan Stanley’s CIO and Chief U.S. Equity Strategist最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン. He discusses our bullish mid-year outlook and why stocks have been under pressure more recently.
本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、弊社の強気な中間見通しと、株式相場がこのところ圧力にさらされている理由についてお話しします。
このエピソードは5月19日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
投資家が最新のリスクに注意しすぎるあまり次のチャンスを見逃してしまう瞬間が、どのサイクルにもありますが、今がまさにそれではないか、と私はみています。今年の上半期にはそういうおなじみの雰囲気が感じられます。悪材料が大きく報道されるかなり前から株価が水面下で軟調になる、投資家が新たなリスクを発見するものの、すでにそれは株価に織り込まれている、そして株価の先行きが明るくなりつつあるときに投資家の心理はさらに悪化する、というパターンです。
言い換えれば、これは昔の話の繰り返しです。ただ、重要な「ひねり」がいくつか加わっています。
最も大きなひねりは、今はサイクルのどの段階にあるのかという違いです。 去年 昨年はまだ、ローリング・リセッションの最終段階を脱しつつあるところでした。今ではもうローリング・リカバリーに突入しているのですが、それがまだあまり認識されていません。この点は重要です。今年に入って見られた株価の調整とその後の急激な上昇の解釈が変わってくるからです。
第1四半期にS&P500種株価指数が10%に満たない下落を演じたとき、多くの投資家は市場が油断していると結論付けました。私は、この見方は本当に的外れだとみています。ラッセル3000種株価指数では構成銘柄のおよそ半分が20%以上下落していましたし、S&P500指数の予想PERは予想利益が増加し続けたためにピークから18%も低下したからです。これは油断ではありません。市場は最も得意な仕事、すなわち話が広く行き渡る前にリスクを織り込むという作業をしていたのです。
それに、それらのリスクは決して小さなものではありませんでした。新たに始まった戦争のために原油価格が100%上昇したことに加え、プライベート・クレジットの懸念もありました。AIが労働市場を混乱させるという議論も盛んです。これらのリスクに直接さらされている地域では、市場が40%を超える調整を余儀なくされているところも少なくありません。
そこで、少し意地悪な質問をしてみたいと思います。今この時点からの最大のリスクが強気すぎることではなく、市場がやるべき仕事をやった後なのに慎重すぎることだとしたら、どうしますか。
弊社は先日出版したアウトルック、中間見通しでこうした疑問に取り組んでいます。具体的には、12ヵ月後のS&P500指数の目標を、増益見通しの上方修正だけに基づいて8300に引き上げました。実を言えば、バリュエーションについては一段と低下することを想定しています。S&P500指数の予想EPSについては、 およそ 約5%引き上げました。ローリング・リカバリー、AIの導入、財政政策による下支え、そして拡大を続ける設備投資サイクルなどを背景に営業レバレッジが効くと考えました。
利益動向は非常に重要な点です。石油ショックのせいで景気循環が終了した以前のサイクルでは、ショックに襲われる前の時点で、利益はすでに明らかに伸び悩んだり減少したりしていました。しかし、現在起きていることはその反対です。利益はすでに高水準にあり、増加のペースも加速しています。S&P500指数構成銘柄の、第1四半期利益の中央値ベースの利益サプライズは6%になり、過去4年で最も強い水準でした。また、業績見通しを上方修正する企業の割合も、決算発表シーズン当初はわずか5%でしたが、今では22%にまで戻っています。サイクル後半で石油ショックに見舞われた従来のパターンとは、背景がかなり異なっているのです。
AIについても、市場コンセンサスが形成されてきたとみられる分野です。AIが労働市場を混乱させるという言説は、実際の導入のスピードを先行しています。企業業務へのAI実装は初期段階で、今のところAIは、労働市場を破壊する鉄球というよりも利益率を高める追い風であるように思われます。企業は無駄の少ない経営を行い、従業員の採用を減らし、単に解雇するのではなくAIがもたらす真の利益の定量化を始めています。AIという技術の導入は予想よりも緩やかに進むことになりそうですが、過剰雇用が懸念されていることは間違いなく、その懸念が間接的に収益性を高める原動力になっています。
妨げられていないこの強気相場にとっての最大のリスクは、やはり金融政策と流動性です。FRBがハト派色を弱め、流動性のニーズが強まっていることから、金利は上昇基調にあり、株式と債券は再び負の相関関係になっています。米国債10年物利回りで4.5%という水準はバリュエーションにとって重要です。
FRBの利下げがなくても株式市場はうまくいきます。企業の利益の伸びが順調でFRBが金利を据え置いている状況でも、非常に底堅いリターンが得られる場合があるのは歴史の教えるところです。真のリスクは流動性にあります。民間経済が投資と回復のために必要としている資本の額をFRBと米財務省が過小評価しないかどうかがポイントになります。
究極的には、そのような流動性のニーズに対処する手段をFRBも財務省も持っており、今年も積極的に利用しています。ただ、流動性の供給には衰えるときと盛り上がるときがあり、今はちょうど衰えようとしている時期です。そのため、株式市場は短期的に脆弱な状況に置かれています。
もし株価の調整が続くようなら、投資家はそれを好機と考えるべきです。ローリング・リカバリーの恩恵を享受する分野、具体的には資本財・サービス、金融、一般消費財の3分野へのエクスポージャーを高めるチャンスとして利用すべきでしょう。1年前の「解放の日」をもって終了したローリング・リセッションからの回復については言うまでもありませんが、利益・設備投資サイクルのすそ野の広さはまだ過小評価されています。
結論はいたってシンプルです。今年に入って見られた調整は、バリュエーションについて言えば大方の評価よりも重要な出来事であり、業績は改善する一方だということです。道のりはなだらかなものにはならないでしょうから、調整局面があれば、まだ続くと弊社がみている業績改善の広がりに備える手段として利用するべきでしょう。
これだけはぜひ覚えておきましょう。目の前に現れたエビデンスが「当たり前」だと思われるころには、チャンスはもう過ぎ去っているのが普通なのです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
By Morgan Stanley株式相場はこのところ圧力にさらされているものの、企業業績と人工知能AIの影響は多くの投資家の認識よりも強い――弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンはそう指摘します。
このエピソードを英語で聴く。
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市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
Today’s episode features Mike Wilson, Morgan Stanley’s CIO and Chief U.S. Equity Strategist最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン. He discusses our bullish mid-year outlook and why stocks have been under pressure more recently.
本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、弊社の強気な中間見通しと、株式相場がこのところ圧力にさらされている理由についてお話しします。
このエピソードは5月19日 にニューヨークにて収録されたものです。
英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
投資家が最新のリスクに注意しすぎるあまり次のチャンスを見逃してしまう瞬間が、どのサイクルにもありますが、今がまさにそれではないか、と私はみています。今年の上半期にはそういうおなじみの雰囲気が感じられます。悪材料が大きく報道されるかなり前から株価が水面下で軟調になる、投資家が新たなリスクを発見するものの、すでにそれは株価に織り込まれている、そして株価の先行きが明るくなりつつあるときに投資家の心理はさらに悪化する、というパターンです。
言い換えれば、これは昔の話の繰り返しです。ただ、重要な「ひねり」がいくつか加わっています。
最も大きなひねりは、今はサイクルのどの段階にあるのかという違いです。 去年 昨年はまだ、ローリング・リセッションの最終段階を脱しつつあるところでした。今ではもうローリング・リカバリーに突入しているのですが、それがまだあまり認識されていません。この点は重要です。今年に入って見られた株価の調整とその後の急激な上昇の解釈が変わってくるからです。
第1四半期にS&P500種株価指数が10%に満たない下落を演じたとき、多くの投資家は市場が油断していると結論付けました。私は、この見方は本当に的外れだとみています。ラッセル3000種株価指数では構成銘柄のおよそ半分が20%以上下落していましたし、S&P500指数の予想PERは予想利益が増加し続けたためにピークから18%も低下したからです。これは油断ではありません。市場は最も得意な仕事、すなわち話が広く行き渡る前にリスクを織り込むという作業をしていたのです。
それに、それらのリスクは決して小さなものではありませんでした。新たに始まった戦争のために原油価格が100%上昇したことに加え、プライベート・クレジットの懸念もありました。AIが労働市場を混乱させるという議論も盛んです。これらのリスクに直接さらされている地域では、市場が40%を超える調整を余儀なくされているところも少なくありません。
そこで、少し意地悪な質問をしてみたいと思います。今この時点からの最大のリスクが強気すぎることではなく、市場がやるべき仕事をやった後なのに慎重すぎることだとしたら、どうしますか。
弊社は先日出版したアウトルック、中間見通しでこうした疑問に取り組んでいます。具体的には、12ヵ月後のS&P500指数の目標を、増益見通しの上方修正だけに基づいて8300に引き上げました。実を言えば、バリュエーションについては一段と低下することを想定しています。S&P500指数の予想EPSについては、 およそ 約5%引き上げました。ローリング・リカバリー、AIの導入、財政政策による下支え、そして拡大を続ける設備投資サイクルなどを背景に営業レバレッジが効くと考えました。
利益動向は非常に重要な点です。石油ショックのせいで景気循環が終了した以前のサイクルでは、ショックに襲われる前の時点で、利益はすでに明らかに伸び悩んだり減少したりしていました。しかし、現在起きていることはその反対です。利益はすでに高水準にあり、増加のペースも加速しています。S&P500指数構成銘柄の、第1四半期利益の中央値ベースの利益サプライズは6%になり、過去4年で最も強い水準でした。また、業績見通しを上方修正する企業の割合も、決算発表シーズン当初はわずか5%でしたが、今では22%にまで戻っています。サイクル後半で石油ショックに見舞われた従来のパターンとは、背景がかなり異なっているのです。
AIについても、市場コンセンサスが形成されてきたとみられる分野です。AIが労働市場を混乱させるという言説は、実際の導入のスピードを先行しています。企業業務へのAI実装は初期段階で、今のところAIは、労働市場を破壊する鉄球というよりも利益率を高める追い風であるように思われます。企業は無駄の少ない経営を行い、従業員の採用を減らし、単に解雇するのではなくAIがもたらす真の利益の定量化を始めています。AIという技術の導入は予想よりも緩やかに進むことになりそうですが、過剰雇用が懸念されていることは間違いなく、その懸念が間接的に収益性を高める原動力になっています。
妨げられていないこの強気相場にとっての最大のリスクは、やはり金融政策と流動性です。FRBがハト派色を弱め、流動性のニーズが強まっていることから、金利は上昇基調にあり、株式と債券は再び負の相関関係になっています。米国債10年物利回りで4.5%という水準はバリュエーションにとって重要です。
FRBの利下げがなくても株式市場はうまくいきます。企業の利益の伸びが順調でFRBが金利を据え置いている状況でも、非常に底堅いリターンが得られる場合があるのは歴史の教えるところです。真のリスクは流動性にあります。民間経済が投資と回復のために必要としている資本の額をFRBと米財務省が過小評価しないかどうかがポイントになります。
究極的には、そのような流動性のニーズに対処する手段をFRBも財務省も持っており、今年も積極的に利用しています。ただ、流動性の供給には衰えるときと盛り上がるときがあり、今はちょうど衰えようとしている時期です。そのため、株式市場は短期的に脆弱な状況に置かれています。
もし株価の調整が続くようなら、投資家はそれを好機と考えるべきです。ローリング・リカバリーの恩恵を享受する分野、具体的には資本財・サービス、金融、一般消費財の3分野へのエクスポージャーを高めるチャンスとして利用すべきでしょう。1年前の「解放の日」をもって終了したローリング・リセッションからの回復については言うまでもありませんが、利益・設備投資サイクルのすそ野の広さはまだ過小評価されています。
結論はいたってシンプルです。今年に入って見られた調整は、バリュエーションについて言えば大方の評価よりも重要な出来事であり、業績は改善する一方だということです。道のりはなだらかなものにはならないでしょうから、調整局面があれば、まだ続くと弊社がみている業績改善の広がりに備える手段として利用するべきでしょう。
これだけはぜひ覚えておきましょう。目の前に現れたエビデンスが「当たり前」だと思われるころには、チャンスはもう過ぎ去っているのが普通なのです。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。