序)繊細な扱いが必要な箇所

・「生まれて来なければよかった」...現代文化では存在の否定ととられる言葉であるが、そういう意味ではない。

・「その人はわざわい」→「その人は哀れ」...害悪は「その人」に及ぶ。

・「そういう人は...」→「その人は」とすべき。エケイノスは対象を絞る言葉。

・「裏切る」→「引き渡す」...同時代に生きる特定の人にしかできない。

1)「その人は生まれてこなければよかった」の真意

・神様がこの世界に生み出した人でありながら、生まれてこなければよかった人がいるということなのか？

→この文は英語で言う「仮定法過去」(=強い感情表現)である。訳されていない「もし」が使われている。断言・裁きではなく嘆きの言葉。

→「引き渡し」がまだ起こっていない時点だから、強い警告である。

・イエス様の心をストレートに語るなら「ユダよ、今ならまだ、あなたは自分の運命を変えられる!負けるな!」という具合であっただろう。

・イエス様はユダを最後まで信じ、ほとばしる愛をもって抵抗し続けた。

2)食事の段取りから始まっていた抵抗

・過越しの食事を取るためにイエス様はあらかじめエルサレム城内に住む弟子と約束をしていたことは間違いない。しかし、十二弟子にさえ秘密にし、手の込んだ方法で準備をさせるのはなぜか?

→イスカリオテ・ユダに場所を知られてしまうと、祭司長たちに密告され、ユダに「引き渡し」を実行させてしまう。

・「過越の祭り」はエジプトでの奴隷生活から神の介入によって解放されたことを祝う祭りであり、ローマの支配下にあって人々は、この状況から新しく解放されることを待ち望んでいた。しかし、イエス様のビジョンはもっと大きく、これを成就するタイミングは他にあり得なかった。

・しかし、キリストがその使命を達成するのに、ユダの引き渡しは必要なものではなかった。ユダは神の計画の立役者ではない。だから、イエス様は全力で止めようとしたのである。

結)最後まで抵抗するイエス様

・弟子に何度落胆しても、信じることを止めないイエスの愛が、私たちを罪から解放する。