営業成績が伸びないとき、多くの人は商品力、価格、景気、競合、担当エリア、見込み客の質などに原因を探します。もちろん、それらが影響することはあります。
しかし、長期的に成果を出し続ける営業担当者には、共通する行動習慣があります。営業研修のグローバルリーダーであるデール・カーネギーの原則に照らしても、優れた営業とは、単に話が上手い人ではありません。学び、行動し、失敗から回復し、顧客に深い関心を持てる人です。
特に日本企業や東京の法人営業では、決裁プロセスが複雑で、関係者も多く、受注までに時間がかかることがあります。その中で継続的に成果を出すには、目先のテクニックだけでは足りません。
成果を出す営業担当者に共通する4つのポイントは、次の4つです。
1つ目は、指導や助言を素直に受け入れ、行動を変えられること。 2つ目は、行動のスピード感と時間管理。 3つ目は、失敗や断りから立ち直る力。 4つ目は、顧客に対する好奇心です。
1. なぜ成果を出す営業担当者は、素直に学び、行動を変えられるのか?
営業研修の会場では、すでに高い成果を出している営業担当者ほど前の席に座っていることがあります。これは偶然ではありません。彼らは「自分はまだ改善できる」と考え、より良い方法を吸収しようとしているからです。
一方で、成績が伸び悩んでいるにもかかわらず、これまでのやり方を変えたくない人もいます。「自分なりにやっています」「うちの業界では無理です」「以前試しました」といった言葉で、新しい行動を避けてしまうのです。
しかし、成果が出ていないなら、何かを変える必要があります。営業において重要なのは、助言を聞くだけではありません。聞いた内容を実際の行動に移し、結果を確認し、さらに改善することです。
デール・カーネギーの人間関係原則にも、「相手の立場から考える」ことや、「批判ではなく改善につながる働きかけを行う」ことの重要性があります。上司、営業マネージャー、同僚、トレーナーからの助言を、防御的に受け止めるのではなく、自分の成長の材料として活用する姿勢が大切です。
営業の現場では、誰かがすべてを教えてくれるわけではありません。特に人材不足が進む日本では、今いる営業人材を育て、成果につなげることが企業にとって重要な経営課題になっています。そのためにも、本人が学びを受け入れ、行動を変える力は欠かせません。
【ミニサマリー】 優秀な営業担当者は、助言を「評価」ではなく「成長の機会」として受け取ります。学ぶ意欲だけでなく、実際に行動を変えることが成果の分かれ目です。
2. 営業でいう「行動のスピード感」とは何か?
営業は、非常に多くの仕事を抱える職種です。既存顧客へのフォロー、見込み客の開拓、提案書の作成、社内調整、商談準備、CRMへの入力、契約手続き、問い合わせ対応など、やるべきことは尽きません。
案件を受注していれば忙しくなります。受注できていなければ、新規開拓で忙しくなります。つまり、営業は常に忙しい仕事です。
この忙しさに流されると、重要な仕事が後回しになります。特に、「重要だが緊急ではない仕事」が後回しになりがちです。たとえば、顧客業界の研究、キーパーソンの分析、提案の質を高める準備、見込み客リストの整備、ロールプレイ、営業プロセスの見直しなどです。
成果を出す営業担当者は、まず計画します。そして、計画に沿って行動します。緊急な仕事だけに追われるのではなく、将来の成果につながる重要な仕事に時間を確保しています。
日本の法人営業では、顧客の社内調整や稟議、決裁者との関係構築に時間がかかることもあります。だからこそ、商談の直前だけ頑張るのではなく、早い段階で仮説を立て、関係者を整理し、次の一手を準備しておく必要があります。
行動のスピード感とは、単に急いで動くことではありません。優先順位を明確にし、必要な行動を先送りせず、適切なタイミングで実行することです。
【ミニサマリー】 営業の生産性は、忙しさでは決まりません。成果に直結する重要な行動を計画し、迅速に実行できるかどうかで決まります。
3. 断られても前に進める営業担当者は、何が違うのか?
営業では、断られることが普通です。顧客が今は必要としていない、予算がない、優先順位が違う、競合に決まった、社内承認が通らなかった。理由はさまざまです。
ここで重要なのは、「断られたこと」と「自分自身が否定されたこと」を混同しないことです。
顧客が断ったのは、あなたという人間を否定したからではないかもしれません。その時期、その予算、その条件、その提案内容、その優先順位の中で、契約に至らなかったということです。
営業担当者が失敗や拒絶を過度に個人的な問題として受け止めると、行動量が落ちます。電話ができなくなる。新規開拓を避ける。商談で自信がなくなる。結果として、さらに成果が出にくくなるという悪循環が生まれます。
優れた営業担当者は、失敗を無視するのではなく、冷静に振り返ります。提案相手は適切だったか。顧客課題を十分に理解できていたか。決裁プロセスを把握していたか。競合との差別化は明確だったか。提案するタイミングは適切だったか。
改善点を見つけたら、次の行動に移します。業界研究を深める。商品知識を高める。ロールプレイを増やす。見込み客を増やす。電話やアポイントの件数を増やす。営業スキルは、失敗を分析し、改善を重ねることで磨かれます。
【ミニサマリー】 断りは営業活動の終わりではなく、改善のための情報です。自分を責めすぎず、学びに変え、次の行動を続ける力が営業成果を支えます。
4. なぜ「好奇心」が営業の信頼関係をつくるのか?
営業で最も大切なことの一つは、顧客を深く理解しようとする姿勢です。
自社の商品やサービスの説明ばかりしている営業担当者は、顧客の本当の課題を見落としがちです。機能、価格、実績、導入事例を一方的に伝えても、顧客が「それは自分たちに必要だ」と感じなければ、商談は前に進みません。
優れた営業担当者は、好奇心を持って質問します。
顧客は今、何に困っているのか。 なぜその問題が起きているのか。 放置すると、どのような影響があるのか。 誰が意思決定に関わるのか。 顧客自身は、どのような理想の状態を求めているのか。
こうした質問を通じて、顧客のビジネス、組織、業界、意思決定の背景を理解しようとします。
デール・カーネギーの営業原則では、顧客との関係は「売り込むこと」ではなく、「相手にとって重要なことを理解すること」から始まります。顧客に本気で関心を持つことで、表面的なニーズではなく、本質的な課題が見えてきます。
その結果、自社の提案が本当に役立つ場合には、より価値の高い提案ができます。一方で、自社のサービスが適していない場合には、無理に売り込まない判断もできます。この誠実さが、長期的な信頼につながります。
目指すべきは、一度きりの受注ではありません。「この人なら、自社のことを理解してくれる」「次も相談したい」と思ってもらえる営業担当者になることです。
【ミニサマリー】 好奇心のある営業担当者は、商品を売る前に顧客を理解します。深い質問と誠実な関心が、信頼と継続的な営業成果を生み出します。
まとめ:営業で成果を出す人は、4つの基本を実践し続けている
営業で成果を出す人に特別な才能があるように見えることがあります。しかし実際には、基本的な行動を、誰よりも真剣に、継続していることが多いのです。
学びを受け入れ、行動を変える。 重要なことを計画し、スピーディーに実行する。 断られても立ち直り、改善を続ける。 顧客に深い好奇心を持ち、課題を理解する。
この4つは、すべて今日から取り組めます。大きな制度変更も、特別な準備も必要ありません。次の商談、次の電話、次の営業会議から変えられます。
トップ営業ほど、「もっと良くできることはないか」と考え続けています。営業で成果を出したいなら、まずは自分自身に問いかけてみてください。
私は、助言を受け入れて行動を変えているだろうか。 私は、重要な仕事に時間を使えているだろうか。 私は、失敗から学び、次の行動に移れているだろうか。 私は、顧客に本気で好奇心を持てているだろうか。
この4つの問いへの答えが、あなたの営業成果を変える出発点になります。
Key Takeaways
・営業成果を高める第一歩は、助言を受け入れ、実際の行動を変えることです。 ・忙しい営業ほど、重要な仕事を計画し、先送りせずに実行する時間管理が必要です。 ・断りを個人的な否定と捉えず、顧客理解と改善につなげることで、営業力は着実に伸びます。
著者について
グレッグ・ストーリー博士は、日本における意思決定を専門とする博士号を持ち、デール・カーネギー東京トレーニングの社長およびグリフィス大学の非常勤教授を務めています。
デール・カーネギーの「One Carnegie Award」を2018年と2021年に2度受賞し、2012年にはグリフィス大学ビジネススクールのOutstanding Alumnus Awardも受賞しています。
デール・カーネギー・マスタートレーナーとして、リーダーシップ、コミュニケーション、セールス、プレゼンテーション、Leadership Training for Resultsを含む各種プログラムを世界で提供する認定資格を持っています。
著書には、ベストセラーとなった『Japan Business Mastery』『Japan Sales Mastery』『Japan Presentations Mastery』のほか、『Japan Leadership Mastery』『How to Stop Wasting Money on Training』があります。日本語版としては、『ザ営業』『プレゼンの達人』『トレーニングでお金を無駄にするのはやめましょう』『現代版「人を動かす」リーダー』などが出版されています。
デール・カーネギー・トレーニングは、1912年に米国で創設され、100年以上にわたり世界各国でリーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、コミュニケーション、エグゼクティブ・コーチング、そしてDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の分野で個人および企業向けの研修を提供してきました。
東京オフィスは1963年に設立され、日本企業および外資系企業、さらには個人の方々の成長もサポートし続けています。単なるスキルトレーニングではなく、組織文化の変革やリーダーとしての成長を後押しすることで、ビジネスの成果につなげます。
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