発音が難しいこの言葉。「はかない」「つかのまの」という意味があります。
この言葉は、サン=テグジュペリの『星の王子さま』で出会いました。
王子さまが地理学者の星を訪れる場面。地理学者に自分の星のことを問われ、小さな星で、火山が三つあること、花がひとつあることを伝えます。
すると、地理学者は、花には興味を持ちません。なぜなら、花ははかないものだから。地理学者曰く、いつまでもかわらないことしか、本には書かないのです。
花を愛する王子さまは、そのことに驚き、尋ねます。
「はかないってなんのこと?」と聞く王子さま。
「そりゃ、<そのうち消えてなくなる>っていう意味だよ」答える地理学者。
“But what does that mean―‘ephemeral’?”
“It means, ‘which is in danger of speedy disappearance.’”
はかないこと。In danger of speedy disappearance. ここにある姿は束の間のもの。
秋はどこか物悲しく、はかなさへ思いを馳せることが多くなる気がします。
高い秋の空を見上げると、形を変えながら流れていく雲。うろこ雲、さば雲、いわし雲。
秋の空特有の雲があります。
移ろいゆくといえば、、、。
今は昼夜、団子のようにくっついて過ごしている幼い子供たち。
笑い、怒り、叱り、悩み、でもきっと、こんな時間もephemeral。
あっという間に成長していくであろう姿を、自分は絶対に追いつかないなぁと、後ろから眺めるような気持ちになることがあります。きっと近い将来、手元からするりと抜けて、どこかに走っていくのでしょう。まずは上の子から。
今は両腕に何とか抱きしめることができる、二人の子供。
その柔らかい温もりと、「ねぇ、ママ」と呼ぶ声。
失いがたい、大切なものを思い、同時にそのはかなさを思うとき、‘ephemeral’という言葉が浮かびます。
朝、起きてきて、一番に抱きついてくる子供たち。
それから、親との何気無い会話の時間。
それに、昨日お部屋に飾った切り花の瑞瑞しさだって、そう。
ものごとのはかなさ。年を重ねるたびに、リアリティを持って理解を深めている気がします。
‘Ephemeral’. 発音は難しいですが、綺麗な言葉ですよね。
ちょっと話は逸れますが、‘ephemeral’… sounds a bit like ‘emerald’.「エメラルド」にも音が似ていますよね。
この言葉に色をつけるとしたら、エメラルドグリーンでしょうか。