≪ 内 容 ≫
中国語:kindleキンドル本「新☆短編小説を読んで中国語を学ぼう」6に収録の小説「世界でたった一つの詩」第一章を、朗読します。
音 楽:RALY&SMALL FISH「宇宙の果ての恋」
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世界でたった一つの詩/世界上唯一的诗
―1―
薫は窓の外を見ていた。
夜の中、雨が降りしきっていた。
ここ数日、秋雨前線の影響で雨が続いている。
薫はノートに目を戻した。書きかけの詩をもう一度読み、表現したい言葉を探す。
薫望着窗外。
深晚中,雨淅淅沥沥地下着。
由于受秋雨前锋的影响,连续几日,阴雨连绵。
薫把目光递回到笔记本上,又读了一遍刚刚开始写的诗,琢磨着想要表达的思想。
彼女はいま大学の部室にいる。部屋にはテーブルとソファと本棚がある。本棚には文学書や同人誌が並んでいる。すでに部員は帰り、薫1人である。創作には最適な環境だ。
ドアがノックされた。
誰だろう。部員ならわざわざノックなどしない。
「どうぞ」と薫が言うと、若い男がドアを開けた。
薫坐在大学的社团的办公室里,屋里摆设着桌子,沙发和书架。书架上整齐地排放着文学类和同人志的书籍。其他人都已回家,只剩下薫一人,相反,这正是创作的最佳环境。
有人敲门。
是谁呢? 如果是社团成员,理应不用敲门啊?
薫说一句“请进”,这时一位年轻的男士打开了门。
「突然すいません。私、橋本と言いますが、入部したいんですが」
硬い表情で言う。
「あ、そうですか」
薫はノートを机に置いて、椅子を勧めた。
20代後半の体格のいい男だった。黒いレインコートを着ているが、濡れていなかった。胸元にネクタイの結び目が見えた。椅子に座るとき、きしむ音がした。
“斗胆冒昧,实在不好意思,我叫桥本,想加入文学会。”
桥本用有点生硬的口吻说道。
“啊……”
显然,对于对方的单刀直入,薫有点惊讶。“是这样啊”薫把笔记本放到桌子上,腾出了椅子。
对方是出生在20年代后半期的体格健壮的男人,穿着黑色外套,没有一丝被雨水淋湿的迹象,胸前的领结清晰可见。他坐到椅子上时,发出咯吱咯吱的响声。
薫の心に小気味よい緊張感が入り込んできた。それは恐怖に似ているようで、違った。正体がよくわからず、当惑した。
「私、会社員なんですが、入部できますか」
文学会の規則では、学生のみ入部できることになっている。
薫,心中略感一丝紧张,这种紧张有点貌似恐怖,但与恐怖又有某种差别。这种感觉的本质是什么,薫疑惑着。
“我是公司职员,可以加入文学会吗?”
但文学会有明文规定,只有在校学生才能入会。
男は精悍な顔つきをしていた。愛想笑いはせず、ただ真剣な目をこちらに向けてくる。
「大丈夫だと思います」
薫はそう答えていた。
なぜか、胸が高鳴っていた。
男人长着一副精悍的脸颊,不苟言笑,略显认真的眼神正朝这边过来。
“没有关系” 薫吞吞吐吐地说道。
为什么,今天会如此紧张? 薫显得有点不知所措。
※第一章はここまで。後日、第二章を朗読します。