「ちょうどいい時の来訪者」
作:テグさん ※本人公認頂いております。
昔々、光と影が交わる小さな村に、**「時の調律師」**と呼ばれる不思議な女性が住んでいました。彼女は村人が困ったとき、苦しいとき、そして一番必要なときにだけ、そっと姿を現すと言われていました。彼女は特別な力を持っているわけではなく、ただ話を聞き、優しい言葉を紡ぐことが得意でした。その言葉たちは、村人の心の奥深くに響き、道を照らす光となりました。
ある日、村に病が広がりました。人々は恐れ、どうしたらよいか分からず、誰もが心を閉ざしていきました。そんな中、一人の少女、マイがいました。マイの母親は病に倒れ、家族も心配のあまり言い争いが絶えませんでした。
ある夜、泣きながら森を歩くマイの前に、調律師が現れました。
「こんな夜にどうしたの?」
マイは涙をこらえながら、自分の悩みを語りました。調律師は静かに耳を傾け、やがてこう言いました。
「病気は、あなたたちに大切なことを教えるサインかもしれないね。母さんが弱っているとき、あなたが支えになれる。家族みんなで力を合わせるチャンスかもしれない。そうして、見えなかったことが見えるようになるのよ。」
マイは少し驚きましたが、調律師の言葉が胸に染み込みました。それは、ただ母を救う方法を考えるだけでなく、自分たちの絆を見直すきっかけになるということでした。
その翌日、マイは家に帰り、母の世話をしながら家族に提案しました。みんなで役割を分担して助け合おうと。最初は戸惑った家族も、少しずつ協力し始めました。不思議なことに、母の体調が良くなり始めたのです。病はただ恐れるべきものではなく、家族の在り方を整える「時のメッセージ」だったと気づいたのです。
数日後、再び調律師の姿を見つけたマイは駆け寄りました。
「ありがとう! あなたのおかげで、私たち家族はまた笑い合えるようになった!」
調律師は微笑み、こう答えました。
「すべては絶妙なタイミングで訪れるもの。ただ、心を開いて迎え入れることが大事なんだよ。」
その言葉と共に、調律師はそっと姿を消しました。村人たちはいつからか、病や困難が訪れるたびに調律師の言葉を思い出し、それを「次の一歩のサイン」として受け取るようになりました。
#短編朗読劇
#朗読
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